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その221、シルバの『母』



 まあ、それから。



 天宮シルバは少しずつだが、自分のことを語るようになった。


 あまり具体的なものはなかったが、いずれも虚言ではなさそうだ。



 物心ついた時から母親と二人で暮らし、魔法や勉強を教わってきたという。


 学校は、知識では知っていたが、通うのはうちの学校が初めてだとか。


 その時も事前に不自然にならないよう知識を学んだと語る。



 まあ、不自然もクソもあんまりみんなと関わってなかったし。


 すぐに私たちに捕まることになったし。



 で、話を聞いたり尋ねた結果、やっぱりシルバはまともな環境で育ってない。



 ただ魔法を教えられ、課題を黙々とこなすだけ。


 友達も娯楽もほとんどない。


 でも、外の世界は男社会に害され、洗脳された悪徳の場所だと教えられたという。



 学校に通う時も、決して他人に心を許すなときつく言われていた。


 だ……そうだが、じゃあ、何で私に色々ホイホイしゃべるのだろうか。



 まあ、母親のことは全くと言っていいほど語らないけどな。


 しゃべる内容は選んでいるというわけだろうか。



 で、ある程度慣れてきても、やはり人間の男性は近寄らせない。


 『英才教育』の結果というやつか……。



 戸籍も捏造だし、天宮という姓もどうやら偽名のようだ。


 もしかすると、外国から来たのかもしれない。名前も外国のそれっぽいのだし。



 ともかく、素性がもうちょっとハッキリしてほしいんだが……。



 そんな折である。



 研究所に、一人の珍客があった。



「お久しぶりですね」


「ああ、これは……」



 やってきたのは、ベルタエルフのコマサさんだった。



「かねてからの頼まれごとについて、お知らせに来た次第です」



 コマサはそう松上少年に言った。



「一体何を頼んだの?」


「天宮シルバの遺伝子解析。そこから何かわかるかもしれないと分析を頼みました。ある種の占いの似たものですけどね。もっと正確なもの、探知と解析を合わせた特殊魔法をば」


「遺伝子ね……」


「片方までは僕でもわかったんですよ。アメリカの大手卵子バンクにアクセスしてね」



 卵子同士で子供ができる今、そういう商売も成り立つわけである。



「で、結果は?」


「アメリカのAランク魔法使いのものでした。人類種ではトップクラス。しかし、もう片方がわからない。受精卵の段階でだいぶ弄られてますしね」


「だけど、わかったんでしょ」


「ええ。こちらに」



 と、コマサさんは一枚の大型封筒を松上少年に渡す。



 松上少年は丁寧に受け取ると、ゆっくりと中身を取り出す。


 何やらびっしりと書き込まれた資料の中、カラー写真が見える。


 黒い髪をした美しい女性のものだった。



 ……なるほど。どことなくシルバに似ているかな……?



「ふむ……。色無いろなしトオル……。いわゆる第一世代の魔法使いですな」



 と、松上少年は資料を睨む。



 第一世代。地球とダイノヘイムがつながったごく初期に魔法使いとなった世代。



「なるほどA相当の魔法使い。いや、魔法少女だったわけか。しかし10年以上も足跡が不明となっているようですね。あるいは陰にいたのか……」



 松上少年は首をひねり、資料を机上に置いた。


 しかし、一体全体何者なのだ、この女は――









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