その193、ゲートを襲う黒い翼
「ふむ……」
私はヤタガラスのスーツを試着して、軽く体を動かしてみた。
やはり、自前のヤツに比べるとまるで馴染まないが、贅沢も言ってられない。
職員にお礼を言ってから、とりあえず近場へ応援に行こうかとワンドを振るって――
待てよ。
私は少し考えてから、異世界ゲートの施設を調べてみた。
破壊された北海道を除けば、まだ複数日本に存在する。
<ちょっと頼みたいことがあるんだけど――>
私は松上少年に連絡を入れる。
彼も彼でとても忙しいのだろうが、どうしても気になるのだ。
<日本にある全部のゲート施設の状況を同時に知りたいんだけど。あ、何かあればすぐ教えてくれるだけでいいから>
<またえらく面倒な注文ですねえ……。しかし、確かにまたゲートが襲われる可能性は>
言いかけて、松上少年は黙り込んだ。
<……まさにドンピシャリですよ。たった今関東にあるゲートが襲撃されました>
<場所は!? 正確な場所!>
<……いや、待ってくださいよ。みんなモンスターの対処に追われてるんです>
<ほっとくわけにはいかないでしょ?>
<そうですが、ベルタエルフもサキュバスも総動員してるんですよ。何しろ全国規模のテロになってますから……>
<つまり、最初からそういう計算だってこと?>
<なるほど……。ベルタエルフもサキュバスも確かに男性の保護を優先するか……>
<やられたってわけか。とにかく、行ってくる!>
<あ、無茶はしないでくださいよ!?>
<できるんなら、そうするよ>
そして、私は関東圏のゲート施設にワープした。
ちょうど、空中で誰かが弓を引いている最中……。
って、施設を狙っとるやないか!?
私はとっさに魔力弾をそいつに向かって放った。
テロリストはすばやくこちらに弓を構え、魔力弾を魔力の矢で相殺する。
あいつは……。
空中にいるのは、北海道を襲ったあの黒い戦乙女だった。
ベルタエルフたちが留守では、あれに対抗できる人材は少ないだろう。
その少ない人材も、モンスターテロでてんてこ舞いだ。
しかし……動いてみるとやはりこのスーツはいかん……。
魔力を使うたびに窮屈な感じがして、どうにもダメだ。
かといって、ちまちましていても、敵に有効打は与えられない。
私の魔力弾は、全て跳ね返されたり、かわされている。
かと思うと、いきなり敵が急降下してきた!?
魔力の槍が、こっちに振り下ろされてくる。
この……!!
私は何とかかわし、爆裂弾を相手に放った。
爆風が相手の気をそらしたので、すばやく死角に跳んで蹴りを放つ。
だが、重い。鈍い。
相手を蹴った瞬間、背中や二の腕のスーツが弾けた。
もう壊れたんかい……!?
と、思っていると、槍が横薙ぎに払われてくる。
かわそうとした途端に動きが抑制され、そこに相手の掌底が飛んできた。
私は顔面を打たれ、真っ逆さまに落下してしまう。
スーツがなければ顔面がえらいことになっているか……。
しかし、こうなるともはや着ないほうがマシかも――
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