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189/301

その189、サイズが合わなくなってしまったスーツ


 矢の雨が途絶えた後、施設は建物含めあちこち穴だらけだった。



「さっきの人は……!」



 ゆみかが辺りを見回しているが、もう反応はない。



 不利と悟って、撤退したのだろう……。


 鮮やかな手腕だと褒めるべきだろうか、それとも悔しがるべきだろうか?



「とにかく、救助に……先行きますね!」



 敵が逃げたとわかるや、ゆみかはゲート施設に飛んでいった。


 やれやれ、元気なことだ。



<――松上くん、逃げられちゃったよ>


<ご無事のようですね>



 私が通信を送ると、松上少年のホッとした声が返ってくる。



<まあ、私自身は無事なんだけど……>


<何か被害でも>


<……実がこれこれしかじか>


<…………なるほど。やはりそうでしたか?>


<やはり?>


<ええ。あなたのレベルアップから、もしかしてそうなるかなとも思ったりしてたので>


<……できれば、事前に教えてほしかったわね>


<すみません。迂闊でした。黒羽さんのスーツ、その完成度が裏目に出たようです>


<それって……>


<あなたを補佐し、補強するためのスーツは、持ち主のパワーが設定の限度を超えてしまい、ついにオーバーヒートしてしまったのでしょう>


<何か、良い手はないかしら?>


<それが……。何しろ、そのスーツ自体が未知の技術を多様に使われてまして。まだまだ十分解析できていないのですよ。複製を造ればどれだけのお金と時間がかかるかわからない>


<……しかも、複製じゃあ困るわけよね。今の私に適合したものじゃないと……>


<ええ。またオーバーヒート、同じことの繰り返しになってしまう……>



 そこで、少し会話は途切れた。



<とにかく、救助の手伝いでもしてくるわ……。グダグダしててもしょうがないし>


<わかりました。では、後でゆみかさんも一緒に来てください>


<坂本さんも……?>


<ええ、彼女の装備でも少々話があるのです。悪い内容じゃないですよ>


<そっか。わかった、伝えておく>



 私は通信をいったん切り、壊されたゲート施設へと向かった。



 施設内部では逃げ遅れたり、巻き添えでケガをした人間がけっこういた。


 幸い極度な重傷者や死者はいないようだが。



 それでも、手間暇かけてつくったこの公共施設。


 破壊された経済的損失はかーなーり大きいだろうなあ……。



 私はケガ人に応急手当の回復魔法をかけたり、救急車まで運んだりした。


 ゆみかも同じようにクルクルと忙しく飛び回っている。



 その後で、警察にも話を聞かれることとなった。


 私はヘルメットの記録映像を渡して、手早く解放してもらう。


 ゆみかのほうもすぐに解放されたようだ。



「まだまだ、こんなことがあるんですね……」



 帰り……松上邸を目指す道すがら、ゆみかは言った。



「まあ、魔女党のテロリストが解散したわけでもないしね……」


「こんなことして、何になるんだろ」



 納得いかないという顔で、ゆみかはつぶやく。



「さあね。やるほうが気が晴れる、かどうかは知らないけど」



 私はうまい回答ができず、誤魔化すように言うしかなかった。


 やれやれ……。まっすぐなヒロインにはきついことばっかりだな。








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