その189、サイズが合わなくなってしまったスーツ
矢の雨が途絶えた後、施設は建物含めあちこち穴だらけだった。
「さっきの人は……!」
ゆみかが辺りを見回しているが、もう反応はない。
不利と悟って、撤退したのだろう……。
鮮やかな手腕だと褒めるべきだろうか、それとも悔しがるべきだろうか?
「とにかく、救助に……先行きますね!」
敵が逃げたとわかるや、ゆみかはゲート施設に飛んでいった。
やれやれ、元気なことだ。
<――松上くん、逃げられちゃったよ>
<ご無事のようですね>
私が通信を送ると、松上少年のホッとした声が返ってくる。
<まあ、私自身は無事なんだけど……>
<何か被害でも>
<……実がこれこれしかじか>
<…………なるほど。やはりそうでしたか?>
<やはり?>
<ええ。あなたのレベルアップから、もしかしてそうなるかなとも思ったりしてたので>
<……できれば、事前に教えてほしかったわね>
<すみません。迂闊でした。黒羽さんのスーツ、その完成度が裏目に出たようです>
<それって……>
<あなたを補佐し、補強するためのスーツは、持ち主のパワーが設定の限度を超えてしまい、ついにオーバーヒートしてしまったのでしょう>
<何か、良い手はないかしら?>
<それが……。何しろ、そのスーツ自体が未知の技術を多様に使われてまして。まだまだ十分解析できていないのですよ。複製を造ればどれだけのお金と時間がかかるかわからない>
<……しかも、複製じゃあ困るわけよね。今の私に適合したものじゃないと……>
<ええ。またオーバーヒート、同じことの繰り返しになってしまう……>
そこで、少し会話は途切れた。
<とにかく、救助の手伝いでもしてくるわ……。グダグダしててもしょうがないし>
<わかりました。では、後でゆみかさんも一緒に来てください>
<坂本さんも……?>
<ええ、彼女の装備でも少々話があるのです。悪い内容じゃないですよ>
<そっか。わかった、伝えておく>
私は通信をいったん切り、壊されたゲート施設へと向かった。
施設内部では逃げ遅れたり、巻き添えでケガをした人間がけっこういた。
幸い極度な重傷者や死者はいないようだが。
それでも、手間暇かけてつくったこの公共施設。
破壊された経済的損失はかーなーり大きいだろうなあ……。
私はケガ人に応急手当の回復魔法をかけたり、救急車まで運んだりした。
ゆみかも同じようにクルクルと忙しく飛び回っている。
その後で、警察にも話を聞かれることとなった。
私はヘルメットの記録映像を渡して、手早く解放してもらう。
ゆみかのほうもすぐに解放されたようだ。
「まだまだ、こんなことがあるんですね……」
帰り……松上邸を目指す道すがら、ゆみかは言った。
「まあ、魔女党のテロリストが解散したわけでもないしね……」
「こんなことして、何になるんだろ」
納得いかないという顔で、ゆみかはつぶやく。
「さあね。やるほうが気が晴れる、かどうかは知らないけど」
私はうまい回答ができず、誤魔化すように言うしかなかった。
やれやれ……。まっすぐなヒロインにはきついことばっかりだな。
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