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その186、黒い戦乙女


 ワープ魔法陣を潜ると、もうもうと噴き上がる煙が目に入った。


 厳重にも守られているはずのゲート施設は半壊して、人が逃げまどっている。



 やはり、手遅れだったか……。


 とにかくゲート本体のほうを見てみなければ。



 私が急いで内部に向かおうとした時である。


 半壊した施設から、鳥のようなものが飛び出してきた。



 まさか、鳥系の他種族か……!?



 その姿を拡大してみると、黒い鎧姿の女が飛んでいる。



 背中に黒い翼。黒をベースにした鎧に入る美しい銀のライン。


 羽根兜のようなマスクは、口元だけが露わになっているデザイン。


 黒だが、戦乙女ヴァルキリーとでも言いたくなるようなものだった。



「そこの君――!」



 私は高速で接近して、声をかけようとする。


 すると、女は気づいたのか弓でも構えるような仕草をした。


 いや……その手には魔力で編まれた大弓がある。



 まずい!



 放たれる魔力の矢を、私は薙ぎ払った。


 手に、衝撃と痺れが残る……。


 これは、かなり高レベルの魔力だ。エルフやサキュバスに匹敵するかもしれない。



「去れ」



 きれいな声だが、突き放すような冷たい口調で女は言った。



「この有様は君の仕業か?」


「――」



 女は答えない。


 代わりに、次なる矢を私に放ってきた。



 避けながら、私は魔力で腕の装甲を強化する。


 だが、肉薄して殴りつけようとした瞬間、女は横にいた。



 速い……!!


 だが、追いきれない速度でもないぞ……!



 私は身を回転させながら、キックを女の胴にぶち当てた。



「!?」



 女はひるんで吹き飛びながらも、急ブレーキをかけて体勢を立て直す。


 そして、今度は魔力で長い槍のような武器を編んだ。


 巨大なやじり型の刃を持つ、物騒な気配を放つ武器である。



 これは……。


 手加減して、捕まえられるようなぬるい相手ではなさそうだ。



 私は両手から刃を出し、隙の少ない構えを取った。


 そして、予備動作もなく女は突っ込んでくる。



 私は敵の槍をかわし、防ぎ、隙を見て頭部から魔力弾を連射した。


 だが、女も羽根兜から小さな魔力の刃を放ってくる。



 互いの攻撃が相殺され、すぐに距離が離れた。



 手強い……。


 ナラカの特訓で強くなったつもりだが、思わぬ強敵に会ってしまった。



 もしかしたら、人間ではないのかもしれない。


 ハーピーではなさそうだが……。


 しかし、姿を人間風に変える魔法が使えるのかもしれないしな。



 そう思っていると、またも槍が迫ってきた。


 まったく、考え事をしている暇さえないか。


 余力を考えて対処するのは難しいようだ。なら……。



 私は魔力を燃焼させて、一気に加速した。


 消費や負担も大きいけれど、おかげで敵の動きも捉えやすくなる……!!








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