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155/301

その155、異世界ナラカの管理人



「何よ、ここは……?」


「ナラカだよ」


「!?」



 不意にかけられた声に、私はビクリとして振り返った。



 そこには、人間で言うと12歳くらいに見えるダークエルフの少年が立っている。


 気配も音も、さっきまで全く感じなかったのに……。



 ……ま。少年と言っても、私よりずっと年上なんだろうけど。



「あなたは……?」


「俺はこのナラカで管理人をしてるもんだよ。名前はまあ、好きに呼んで」



 ダークエルフは気だるげな態度で、面倒くさそうに髪を掻いている。



「……で、管理人さん? ここは一体どういう場所なのかしら?」


「んー。ま、君たちでいう異世界にあたるけど……時間の流れが違う。階層ごとに違うんだが……。この第1階層では、地球の一日がここの……まあ、けっこうな時間になる」



「つまり、ここで何年も過ごしたところで、地球では一日にもならない、と」


「そういうこと。あんたは、何かの訓練でもするために来たんだろ?」


「……まあ」



 確かに、そういう理屈ならたっぷり訓練ができることだろう……。



「私は年を取るけどね……」


「ああ、そっちの心配? 大丈夫、大丈夫。年の取り方も違うから」


「は?」


「例えば、生まれたばかりの赤ん坊をここに連れてきても、老衰で死ぬまで1兆6653億と1250万年かかる。そんなに長くは訓練せんだろ?」


「はああああああああああ……!!?」



 あまりのでたらめさに、私はへたりこみそうになった。



「む、無茶苦茶だわ……」


「ちなみに、さらに下の第2階層では、13兆3225億年かかるけど」


「も、もういい……!!」



 想像しただけで吐きそうになった。というか、ホントに胃の中身がこみあげてくる。



「一番下の第8階層は、682京1120兆年」


「もうええちゅうんじゃ!!!」



 一瞬だが、私は目の前のダークエルフを本気で殴りたくなった。



「……とにかく、さっさと終わらせて帰りたいわね」


「焦ることないのに」


「焦るわよ……!」



 いくら年を取らないといっても、こんなところに5年も10年もいたくない。



「まあ、いいか。君の宿舎はあそこだから」



 管理人の指し示す方向には、ドーム型の白い建築物が見える。



 行ってみると、それはかなり大きな建物だった。


 飾り気も何もないが、一応窓らしきものがあるようだ。



 玄関のドアを握ってみると……開いている。



 中に入ると、やはり飾り気ゼロのほとんど何もない。


 一応バストイレ、キッチンもついている。冷蔵庫まであった。


 冷蔵庫の中には、ゼリー飲料やスポーツドリンクばかりが詰まっている。



「食料は必要な分だけ補充するから」



 と、いつの間にか後ろにいた管理人が言う。



「……あのさ」


「なに?」


「あなたって、私の世話もするように言われたの?」


「まあ、そうだけど」


「……それって、誰によ?」



 私は低いながらも力を込めて、相手の赤い瞳を見ながらハッキリと尋ねた……。








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