その155、異世界ナラカの管理人
「何よ、ここは……?」
「ナラカだよ」
「!?」
不意にかけられた声に、私はビクリとして振り返った。
そこには、人間で言うと12歳くらいに見えるダークエルフの少年が立っている。
気配も音も、さっきまで全く感じなかったのに……。
……ま。少年と言っても、私よりずっと年上なんだろうけど。
「あなたは……?」
「俺はこのナラカで管理人をしてるもんだよ。名前はまあ、好きに呼んで」
ダークエルフは気だるげな態度で、面倒くさそうに髪を掻いている。
「……で、管理人さん? ここは一体どういう場所なのかしら?」
「んー。ま、君たちでいう異世界にあたるけど……時間の流れが違う。階層ごとに違うんだが……。この第1階層では、地球の一日がここの……まあ、けっこうな時間になる」
「つまり、ここで何年も過ごしたところで、地球では一日にもならない、と」
「そういうこと。あんたは、何かの訓練でもするために来たんだろ?」
「……まあ」
確かに、そういう理屈ならたっぷり訓練ができることだろう……。
「私は年を取るけどね……」
「ああ、そっちの心配? 大丈夫、大丈夫。年の取り方も違うから」
「は?」
「例えば、生まれたばかりの赤ん坊をここに連れてきても、老衰で死ぬまで1兆6653億と1250万年かかる。そんなに長くは訓練せんだろ?」
「はああああああああああ……!!?」
あまりのでたらめさに、私はへたりこみそうになった。
「む、無茶苦茶だわ……」
「ちなみに、さらに下の第2階層では、13兆3225億年かかるけど」
「も、もういい……!!」
想像しただけで吐きそうになった。というか、ホントに胃の中身がこみあげてくる。
「一番下の第8階層は、682京1120兆年」
「もうええちゅうんじゃ!!!」
一瞬だが、私は目の前のダークエルフを本気で殴りたくなった。
「……とにかく、さっさと終わらせて帰りたいわね」
「焦ることないのに」
「焦るわよ……!」
いくら年を取らないといっても、こんなところに5年も10年もいたくない。
「まあ、いいか。君の宿舎はあそこだから」
管理人の指し示す方向には、ドーム型の白い建築物が見える。
行ってみると、それはかなり大きな建物だった。
飾り気も何もないが、一応窓らしきものがあるようだ。
玄関のドアを握ってみると……開いている。
中に入ると、やはり飾り気ゼロのほとんど何もない。
一応バストイレ、キッチンもついている。冷蔵庫まであった。
冷蔵庫の中には、ゼリー飲料やスポーツドリンクばかりが詰まっている。
「食料は必要な分だけ補充するから」
と、いつの間にか後ろにいた管理人が言う。
「……あのさ」
「なに?」
「あなたって、私の世話もするように言われたの?」
「まあ、そうだけど」
「……それって、誰によ?」
私は低いながらも力を込めて、相手の赤い瞳を見ながらハッキリと尋ねた……。
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