その148、助っ人はカブトムシ
「どっせい!!」
突如太い声がして、私の前から鋏の敵が消えた。
いや、真横に蹴り飛ばされたのだ。
前には、黒い装甲スーツの男が肩を上下させながら立っている。
ヘルメット前面には、金のカブトムシマーク。
<田中くん!?>
<間一髪でしたか?>
田中くんは私に通信を送ると、蹴飛ばした鋏怪人のほうへ向き直る。
「仲間か……」
鋏は田中くんを見て、面白そうにニタリと笑う。
「ふん」
田中くんはメットの下で鼻を鳴らし、ゆっくりと構える。
「しゃ!!」
「なんの!!」
二人は同時に動き、一瞬で間合いを詰めた。
黒い拳とダークグリーンの鋏がぶつかり合い、魔力を伴った火花を散らす。
鋏の重たい攻撃にも、田中くんは負けていない。真正面から殴り合っていた。
殴り合いが続くが、どうやらテクニックでは鋏に、頑丈さは田中くんの様子。
「ち!!」
いくらやりあっても埒が明かず、鋏は忌々しそうに叫んで飛び上がった。
ガン……! と、つま先が鋭く田中くんの顔面を蹴り飛ばす。
いけない。
私は思わず飛び出しそうになったが、寸前で止まる。
蹴った鋏の足を、田中くんがしっかりつかんでいたからだ。
「ふんぬ!!」
田中くんは鼻息荒く叫んで、足ごとを鋏怪人を振り回した。
のみならず、そのまま何度も地面に叩きつけていく。
「ぐが……! ぎゃ! げげ……!!」
叩きつけられる度に、鋏は異様な叫びをあげた。
しかし、田中くんの手は止まらない。
相手が結構美人なのに、まったく手加減しないようだ。
そういうことすら、頭から外れてしまっているのかもしれない……。
何度か叩きつけて相手が動かなくなったのを確認してから、ようやく止まった。
その時には、鋏怪人はもうズタボロになっていた。
よほど強い力で振り回され、叩きつけられたらしい。
見れば地面もすっかり様子を変えてしまっている。
「すごいな……」
私はそうつぶやくしかなった。
とにかく、死んでいるのかいないのか知らないが、まずは拘束を――
私が近づこうとすると、
「……かあ!!」
鋏怪人はいきなり跳ね起きて、田中くんに何かを吐きかけた。
ブクブクと泡立つ、赤黒いもの……。
「うわ!?」
不意打ちを喰らった田中くんは驚いて顔を振る。
その隙に、鋏は空高く飛び上がっていた。
「あ、待て!」
私はあわてて魔弾を撃つが、相手はあっという間に高高度に行ってしまった。
ある意味、ほれぼれするような撤退ぶりである。
確認すると、あの怪物ガニも姿を消していた。
残っているのは、あちこちへこんで要修理の蟹型ツール……。
よろしければ、感想や評価ポイント、ブクマをお願いします!
感想は一言でも歓迎!
あなたの応援が励みになります!




