その121、異形のもの
おかげさまで120回を越えました!
<渡さんの体調が急変しました! 至急おいでください!!>
「まさか……?!」
「変化が近いとは思っていたがね!」
男どもはうなずき合うと、ダッシュで部屋を出ていった。
えらい熱心さだが、何というか興味本位な部分が多そうだな……。
私も遅れながら、八郎くんのいる特別病棟に向かう。
特殊ガラス越しの病室では、八郎君の肥満体がふわふわ浮かんでいた。
「なにごと……?」
「近隣の大気魔力が急速に減っています。どうやら最後の吸収に入ったようですね」
空中のデータグラフを睨みながら、松上少年はうなずいている。
見れば八郎くんの体は……というか皮膚は完全に変異していた。
もはや、蛹そのものである。
丸っこい物体に辛うじて衣服が張り付いているという感じだ。
「まさか、昆虫になるんじゃないでしょうね」
「さて……魔力の数値が不安定で中身もよくわかりませんよ」
「集めた魔力が一か所に濃縮されているのか……。まるでダークエルフ並だな……」
「この状態、ほっといていいんですか……?」
「一応周辺は結界で覆っているし、あの部屋は特殊魔法陣が仕掛けてありますよ」
「爆発したり燃え上がる様子はないから、大丈夫だと思うけど」
「思うというのが不安なんですけど……」
私は念のためにワンドを取り出して変身できるようにしておく。
安いホラー映画みたいに怪物になるなんて落ちじゃなければいいけど……。
やがて。
浮き上がっていた蛹はゆっくりと特設ベッドに降りた。
そのまま、何事もなく時間が過ぎる。
1分が1時間にも感じる、嫌な時間が過ぎていく中で――
不意に蛹がピシリと音をたてた。
かと思うや、蛹から青い稲妻状の魔力が放たれる。
そして。醜悪な蛹の外郭が弾け飛んだ。
青い稲妻を放ちながら、『中身』が微動にせずうずくまっている。
「ヅカテさん……」
「余剰魔力が出ているが、危険はない。むしろ安定しているな」
「しかし、こんな魔力の質は見たことないですね。男性とも女性とも異なる……」
松上少年は表示されていくデータと、変わってしまった八郎くんを見比べていた。
「安定している……。入っても平気なんですね?」
「うん。それは大丈夫だろう」
ヅカテ氏に確認してから、私は重い電子扉を開けて中に入った。
「八郎くん?」
声をかけてみるが、八郎くんは答えない。
やがて稲妻が収まっていき、発光も緩やかになって、やがて消えた。
「ええ!?」
そこにいる者を見て、私は思わず叫ぶ。
怪物でもなければ、肥満体の少年でもない。
ほっそりとした体ながら、明らかに膨らんだバストのある裸体。
まさか、女になってしまったわけ???
だが、その美しい裸体には何となく違和感みたいなものがある。何だろう。
「くろは……さん?」
八郎くんはつぶやきながら、ぼんやりとした目でこちらを見返す。
ううーむ…………。
水色の髪に、赤い瞳。陶磁のような白い肌をした美しい少女だった。
もはや過去の面影はゼロである……。
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