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112/301

その112、エルフのお客様




 おっと。私が松上邸にお邪魔しているのはテレビを見るためではない。



 そう思った矢先、ピンポンと携帯の着信音みたいな音。


 松上少年が指を振ると、四角いウィンドウが空中に開く。



<ヅカテ様がご到着になられました――>



 『音声のみ』と表示された窓から、男性の声。



「わかりました。すぐにお迎えに行きます」



 答えて、松上少年はソファーから立ち上がる。



「時間通りですね」


「本当なら、私と一緒のほうが良かったのかしら?」



 来客は、私と……正確にはうちの企業と前から関係のあった人物だ。


 我が家の紹介で、松上少年とつなげた相手。



「まあ、ご本人が自分で来るとおっしゃられてたんですし。あ、黒羽さんはここでお待ちを。あなたもお客様ですから」



 言って、松上少年は部屋を出る。



 少し待っていると、松上少年が一人の男性を連れて戻ってきた。


 緑がかった金髪に、緑の瞳。


 一見すると二十歳前後の青年みたいだけど、雰囲気はずっと重みがあった。


 しかし、それほど背が高いわけではなく、親しみやすい明るい顔。



「やあ、黒羽さん。お久しぶり」



 その人物は手を振りながら部屋に入ってきた。



 彼はエルフ族のヅカテ。


 前から魔法技術関連でうちと協力関係のあった人物だ。


 というか、私にとっては幼児の頃からの知り合いである。



「こちらこそ、ご無沙汰してました」


「元気そうで何より。しばらくの間におっきくなったなあ」



 ヅカテ氏は私と握手すると、柔和に笑った。


 下品ではないが、気取った感じでもない。好感の持てる仕草。



「ブレードの新作装備、見せてもらったよ。いやあ、よくできてるわ」


「エルフのかたにそう言われるとは嬉しいですね。さ、どうぞ」



 松上少年はヅカテ氏に席を進める。



「人間用としてあれだけの完成度だと、色々拡張や環境適応とか考えたくなるね」



 座ったヅカテ氏はウキウキした表情でヤタガラスについて語り出す。


 魔法使いであるだけに、この手の話題はなかなか終わらないようだ。



 ……というか、ちょっとオタ臭くもあるかな?



「――それで、人間の……というか、男性の魔法使いについてですが」


「ああ、学校ね」



 お茶を飲みながら、ヅカテ氏はうなずいた。



「人間相手に教えるのは前にも経験あるし、小規模でいいならすぐにもできるよ」


「それは心強い。入れ物……学校のほうはできるだけ急ぎますよ」



 松上少年がヅカテ氏とコネを結びたがった理由。


 それは、男性の魔法使いを育成する学校のためだ。



 男性魔法使いは、できるかぎり早急に欲しい人材である。


 でも、それを教えられる人材も機関もない。



 松上少年は、ほぼ独学でやってこれた。


 でも、才能だの、前世知識だののチートがない少年はそうはいかない。



 松上少年も天才ゆえに、集団を教えられるかどうかは、怪しいもの。


 従来の女性教師は色々問題が山積み……。



 では、どうするか。



 教えられる人物を異世界から招くしかない。


 それが松上少年が早々に出した結論であった。



 で、今回のような運びとなったわけである。





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