その101、松上少年の説得
重めの話のせいか、書き進めるのもちょっと手間取りました。
一様に街を見渡せる見晴らしの良い丘。
以前はゴミ処理場が建っていたここは、現在公園となっている。
周辺の人口が減っているので、訪れる人はほとんどいない。
平日の午前中ともなれば、完全にゼロだった。
でも。
そんな場所に、ひっそりと現れた人影がある。
灰色のバスケットハット。安物っぽいコート。
無精ひげを生やした、暗い眼をした男だった。
男は、街を一望できる場所に立ち、しばらく動かない。
やがて、コートの中からごついマシンガンを取り出す。
「そこまでだよ」
私が声をかけると、男は暗い瞳のままこっちを振り向いた。
すでに変身済みの私と、隣にはこれまた変身して蟹仮面の松上少年。
「佐藤さん、これ以上はやめてください」
静かな声で松上少年が言った。
名を呼ばれ、男はピクリと反応する。
「あなたのことを少し調べさせてもらいました」
男――佐藤は動かない。私も松上少年も動かない。
「10数年前。あなたは人型ゴーレムを妻としていた。だが、法律で所有は禁止された。当時あなたは国外……いえ、異世界まで脱出を試みたが失敗……。ゴーレムは強制的に回収され、ここにあった処理場で」
「黙れ!!!」
松上少年に、佐藤は鬼の形相で叫んだ。
しかし、松上少年はひるまずに話し続ける。
「あの当時、ゴーレムの回収は警察、政府だけではなく、民間の協力者によっても行われた。そして、先頭になって協力し、時には暴力や魔法を使ってまで回収していたのがFAの選手や関係者だった。彼女らに重傷を負わされた人間も少なくない」
「黙れと言っている!!」
「さらに、最初に声を上げて、政府まで動かした反対運動の団体……それらは後に魔女党の核となった。人型ゴーレムの禁止のみならず、様々なメディア・ジャンルで表現規制を行い、今に至る。佐藤さん、あなたは当時新人の漫画家でしたね? 反対運動が燃え上がった時にはちょうど漫画の連載を始めたばかりだった。それも槍玉にあげられ、連載は打ち切られ、業界からはほぼ追放された。そればかりでなく、人型ゴーレムの所有者としてマスコミからも追い回され、バッシングされた……」
「……」
佐藤は、もう何も言わなかった。
「仕事も妻も奪われ、世間やマスコミからは異常者と扱われた。漫画以外の仕事につくこともできなくなった。そしてホームレスとなり……今までどうしていたのか。そこまでは調べられなかったですがね」
そして、松上少年は一歩進み出る。
「あなたはどうやったのかわからないが、魔法と魔力を手に入れ、地球で発生している魔物を……魔女狩りを利用してテロ行為を行った。姿を消す魔女狩りを操って、FA選手を襲わせた犯人はあなたですね?」
「そうだと言ったら、どうする」
「確かにかつてあなたを迫害したのはFA関係者です。しかし、今の若い選手に牙を向けるというのは、ちょっと間尺に合わないじゃありませんか? するのなら、せめてかつて実行者であった人間にするべきでしょう」
「……正義の味方みたいなことを言うんだな」
「はっはっは。そう聞こえますか。それは、あなたの良心が咎めている証拠かもしれません。だったら、もうそろそろやめ時じゃないかと思いますがね?」
どうです、と松上少年は手を広げて語りかけた。
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