13.
キラキラとした表情で話している学を見ながら、愛菜が心の中でそう呟く。
「愛菜ちゃん?なんだか顔色が良くないけど大丈夫?」
愛菜が思っている事が表情に出ていたのか、学が愛菜の表情に気付いて心配そうに声を掛ける。
「……なんでもない」
学の言葉に愛菜がそう小さく声を出す。
どことなく苦しんでいるような表情の愛菜を見て、学の中で「守りたい」という気持ちが膨らんでくる。
愛菜の表情は今までの無表情に戻っていた。そして、リビングに掛けてある時計を見て、愛菜がふいに声を発する。
「……もう、時間だから行くね」
愛菜がそう言ってソファーから立ち上がる。
その時、学が愛菜の腕を優しく掴んで、微笑みながら言葉を綴る。
「良かったらまた遊びにおいでよ。愛菜ちゃんが遊びに来るのを待っているからね」
学のその優しさに愛菜はどう返事をするべきかが分からない。ただ、顔を頷くような動きをすることが精いっぱいだった。
「お邪魔しました……」
愛菜が家を出る時に、玄関までお見送りをしてくれた学にそう声を掛ける。
そして、愛菜は学の家を後にする。
学は愛菜の様子を心配そうに見つめていた。そこへ、ホワイトが鳴き声を上げながら、学の足元に擦り寄ってくる。
「ニャー……ニャー……」
ホワイトのその鳴き声は「大丈夫?」って言っているようにも聞こえる。
学がホワイトを抱きかかえて、ホワイトにそっと話しかける。
「なんだか放っておけないんだ……。分かるだろう?ホワイト……」
学がどこか悲痛そうな顔をしながらホワイトにそう言葉を紡ぐ。
そして、学はホワイトを抱き締めたまま、部屋に戻っていった。
***
「……大丈夫?何かあったの?」
病院に戻ってきた愛菜の表情がどことなく辛そうに見えたので、看護師が心配して声を掛ける。
「別に……」
愛菜はそれだけを発すると、さっさと病室に向かう。
そして、ベッドに横になりながら、愛菜はなんだかもやもやするような感情に苛立ち始める。
『学は綺麗な心の人。愛菜は醜い心の人』
愛菜の中で、そんな根拠もない想いが膨れ上がっていく。
(学さんの小説は読んでみたい……。でも……)
愛菜が心の中でそう呟く。
学の家から帰る時に、あんな態度を取ってしまったので学に嫌われたかもしれないという想いが頭の中によぎる。
グルグルと愛菜の心の中でそんな思いが膨れ上がる。
(嫌われていたら、その場で帰れば良いよね……)
愛菜が心でそう整理して、明日また学の家に行くことを考えた。
***
「……あら、今日も出掛けるの?」




