7.
学が笑顔で愛菜にそう話しかける。
あれから、愛菜と学はよく会うようになった。
ただ、約束をして会っているのではなく、愛菜の散歩中にホワイトが何処からともなくやって来て、ホワイトの後を追いかけるように学がやって来る。
そして、学が話す話を愛菜はじっと聞いている。
愛菜にとって不思議な時間が流れていく。
学と会って学が話す話を聞いているだけだが、愛菜はその時間が嫌いではないのか、愛菜の方から喋りはしないが、学の話が終わるまではその場に留まり、じっと耳を傾けていた。
そんな日々が続き、ある日のこと、愛菜がいつものように川沿いを散歩していると、遠くからホワイトが歩いてきて、愛菜を見つけると、傍に駆け寄ってくる。
「おいで、ホワイト」
愛菜がそう言ってホワイトに手を差し出す。
「ニャー……」
いつもなら愛菜の腕に抱かれるホワイトが一言だけ鳴き声を発すると、そのままクルッと体を翻す。
「ホワイト?」
いつもと違うホワイトの動きに、愛菜が少し戸惑ったように声を出す。
ホワイトは顔だけ愛菜の方に向けると、もう一度鳴き声を上げる。
その様子はまるで「付いてきて」という合図にも聞こえるような鳴き声……。
愛菜が付いて行くべきかどうかを悩む。
「ニャー……ニャー……」
ホワイトが愛菜を急かすようにそう鳴き声を上げる。
その仕草に愛菜はホワイトに付いて行くことにした。
どれくらい歩いただろうか……。
急に愛菜の目の前を歩くホワイトが立ち止まる。
「ニャー……」
そして、愛菜に振り返り、片方の前足で「ここだよ」というような仕草をする。
ホワイトに連れられてきたのは、レンガ色の大きな家だった。
「ここって……」
愛菜が家を見て、呆然と声を出す。
その家は、いつだったか学が指を差して教えてくれた学が住む家だった。
(ど……どうしよう……)
突然、学の家に連れてこられた愛菜はどうしたらいいか分からずにその場でおろおろしてしまう。ホワイトはそのまま門をくぐり、家の中に入っていく。
愛菜がその場でどうしたらいいか分からなくて慌てふためいていると、家の中から石川が顔を出す。
そして、門の近くでうろうろしている愛菜に声を掛けた。
「こんにちは。もしかして、あなたが愛菜ちゃん?」
石川が優しい声で愛菜にそう声を掛ける。
「えっと……その……」
愛菜がどう答えていいか分からなくて、言葉が上手く紡げない。
「良かったら上がってくださいね」
石川がそう言葉を綴りながら門を開けて、愛菜を招き入れる。
愛菜は戸惑ったが、石川にお辞儀をして家に上がる事にした。
「あ……」




