2.
愛理との電話を終えた愛菜が浩二に恐る恐る声を掛ける。
「あぁ?なんだぁ?」
浩二はアルコールで酔っぱらっており、上手く呂律が回っていないようにも聞こえる。
「その……お母さんが再婚するって……」
愛菜が先程愛里に聞いたことを浩二に伝える。
「なん……だと……?」
その言葉に、浩二の顔がみるみると怒りに打ち震えていくのが分かる。
「再婚……だと……?」
怒りを露わにしながら浩二の顔が鬼の形相になっていく。
そして……
「ふ……ふ……ふざけるなぁぁぁぁ!!!」
と、大声を上げて愛菜の髪を掴みにかかる。
「きゃあっ!!!」
愛菜が髪を掴まれた痛みに声を上げる。
「お前が……お前が居なかったら俺だって再婚できたかもしれないのに……!!お前がいるから!貴様のせいで!!」
浩二が興奮状態になりながら、愛菜の髪を掴んだまま、愛菜の顔を床に何度も叩きつける。
「やめっ……やめっ……やぁっ……!!!」
愛菜は泣きながら浩二に止めるように懇願するが、浩二はその行為を止めない。
「お願い……やめ……やめて!!!」
――――ドンッ!!!
愛菜が浩二を力いっぱい押す。
浩二はその衝撃で尻餅を付く。そして、愛菜にされたことに怒りがどんどん増していく。
「て……てめぇ……」
浩二が体を震わせながら愛菜を睨みつける。
そして、傍に転がっているナイフを見つけて、それを手に取る。
「俺にこんな事しやがって……許さねぇ……」
浩二が怒りに目をぎらつかせながら、愛菜にナイフを向ける。
「あ……あ……」
恐怖で身体が強張り、愛菜は言葉が上手く出てこない。
浩二が高々とナイフを掲げ、愛菜にジリジリと近寄ってくる。
「死ねぇェェェェーーーー!!!」
「きゃぁぁァァァァァァーーー!!!」
愛菜があまりの恐怖に大きな叫び声を上げる。
その時だった。
――――ガシャーン……!!!
「そこまでだ!!!」
部屋に数人の警察官が入って来て、浩二が取り押さえられる。
どうやら、近所の人が大きな音に気付いて警察に通報をしてくれたらしく、警察官がやって来たという事だった。
【回想終わり】
その場で浩二は殺人未遂の現行犯として逮捕され、愛菜は警察に保護されたのち、児童福祉施設に一時的に預けられた。
そして、母親に電話が入り、「愛菜を引き取りに来て欲しい」と、施設の人が話したのだが、母親の再婚相手が「子供を二人も引き取るなんてできないよ」と言ったので、母親は無責任にも愛菜の引き取りを拒否したのだった。
愛理はその母親の態度に反発したが、母親に「じゃあ、あんたも出て行く?」と、言われて何も言い返せなかったのだった。
そして、愛菜はそのまま施設で暮らすことになり、愛菜が「家に一度戻って荷物を取ってくる」と言ったので、施設の人は「分かった」と言って、愛菜に荷物を取りに行って良い許可を出した。
だが、それが大変な出来事になってしまう……。




