19.
朝になり、揚羽は学校の制服に身を包むと、髪を綺麗に梳いて部屋を出た。
「じゃあ、行ってくるね!」
キッチンにいる母親に声を掛けて、揚羽は元気よく家を出る。
あの後、学校に戻る決意をした揚羽は、そのことを親や友達、そして学校にも伝えた。親はその言葉に安堵しており、友だちは「学校で待っているからね!」というメールが入っていた。
愛理はあれから再度家に来て、愛菜がしたことを何度も謝っていたが、揚羽が「もう気にしないで」と言って、愛理に「これからもよろしくね!」と、笑顔で伝えた。その言葉に愛理は安心したのか、「ずっと仲良くしてね!」と言って、揚羽と抱き締め合った。
***
「……おはよう!」
揚羽が学校に着いて、下駄箱で待っていた友達たちに声を掛ける。
「久しぶり!揚羽ちゃん!」
「良かった~。戻って来てくれた~」
「心配したんだよ!でも、元気になって良かったよ!」
仲の良い友達たちが揚羽を抱き締めながら口々にそう言葉を発する。
「ありがとう。もう、大丈夫だよ!」
揚羽が感謝の気持ちを織り交ぜながら、笑顔でそう返事をする。
そして、揚羽は教室に行く前に職員室に寄って、担任の先生に何日も休んだことを謝りに行く。
先生は揚羽の顔を見てホッとした顔をすると、笑顔を作りながら言葉を綴った。
「無事に戻って来てくれてよかったよ。そうそう、養護教室の子たちが寺川の事を待っているから、また手伝いの方をよろしく頼むよ!」
「はい!」
担任の言葉に揚羽が笑顔で返事をする。
「後……」
揚羽がそう口を開く。
「どうした?」
担任が頭にはてなマークを浮かべながら、揚羽の言葉を待つ。
揚羽が意を決して口を開く。
「先生、私、将来は福祉系の仕事に就きたいので、大学は福祉課の大学に行きたいです。心に傷を負っている子たちの話を聞いて、前に進むためのお手伝いが出来るような……そんな仕事がしたいです!」
揚羽が真剣な表情でそう言葉を綴る。
その言葉に最初は驚いた顔をした担任だったが、柔和な表情を浮かべて言葉を綴った。
「あぁ。寺川ならぴったりの仕事だな。よし!その目標に向かって一緒に頑張っていこう!まずは、休んでいた分の授業の取り戻しだな!ビシビシ行くから覚悟しとけよ!」
「はい!よろしくお願いします!」
担任の言葉に揚羽が笑顔でそう答えた。
***
「……じゃあ、そろそろ追い込みよ!」




