16.
藤木が愛理を見ながらワナワナと身体を震わせる。
「藤木さん?」
揚羽が藤木の様子に疑問を持ち、そう声を掛ける。
その時だった。
「あれ?寺川に……藤木??」
そこに、山中が現れる。
「山中君?!」
揚羽が山中の登場に驚きの顔をする。
「あれ?その人、あの時に藤木たちといた人……か??」
山中が愛理を見ながらそう言葉を綴るが、愛理は何のことか分からなくて頭にはてなマークを浮かべている。
「あ……あんた……あの時……」
藤木が愛里を睨みつけながら唸るような声でそう声を発する。
藤木が更に言葉を綴る。
「あの時……あの日の夜に、この公園で言ったよな?寺川の髪を切ったらボロボロに泣くだろうって……」
「……は?」
藤木の言葉がよく分からなくて、愛理がきょとんとした顔をする。
揚羽も藤木の言葉の意味が分からなくて、頭の思考回路が付いて行かない。
「い……一体何の話よ!!私がそんな酷い事を言う訳ないじゃない!変な言いがかりを付けるのはやめてくれる?!」
藤木の言葉に徐々に怒りを感じた愛里が、鬼のような顔をしながら藤木にそう言葉を投げつける。
「あの顔を忘れるわけないだろ!あの時そう言ったのは確かにお前だった!!」
「はぁ?!そんなの知らないわよ!!」
藤木と愛理が剣幕状態になって、二人の言い合いが続く。
「と……とりあえず、二人とも落ち着いてよ~!」
揚羽がその状況を止めようとしてそう口を開くが、二人の言い争いはなかなか止まらない。
「あのさ……」
そこへ、山中が口を開く。
「俺はその時近くに居たわけじゃないから、何の会話までしていたのは知らないけど、夜に藤木とその人が話しているのは見たよ。ただ、その時と今とでは、この人の雰囲気はかなり違う感じがするけど……」
「え……」
山中の言葉に愛理がそう声を発する。
山中が更に言葉を続ける。
「その夜の時は、暗い闇を抱えているような、そんな雰囲気だったような気がする……」
「ま……まさか……」
山中の言葉に愛理の表情から血の気が引いて行く。
その時だった。
「それは、私よ……」




