12.
揚羽が「なんだろう?」と感じて、小さく声がでる。
そして、メールの受信ボックスを開くと、そこには一つのメールが来ていた。
そのメールをクリックする。
『大丈夫ですか?』
そのメールにはタイトルの所にそう書かれている。
揚羽は頭にはてなマークを浮かべながらそのメールを開き、本文を確認する。
『私があなたの心の声を聞きます。蝶々(ちょうちょ)』
そのメールは蝶々と名乗る人からのメールだった。
――――ピコンッ!
そこへ、また新たなメールが届く。
差出人の所には「蝶々」と書かれている。
揚羽がそのメールを開くと、メールにはこう書かれてあった。
『恐らく、あなたは今、気持ちが一杯一杯なのだと思います。偶然、こちらにあなたからのメールが届いて、その内容からとても苦しんでいるのかもしれないと思い、お返事をしました。
もし良ければ、私があなたの心の声を聞いて支えになりたいと思っています。ですから、あなたの心の声を聞かせてくださいませんか?
お返事、お待ちしています。 蝶々より』
揚羽がそのメールを読んでポロポロと涙を流す。
もうどうなってもいいという反面、誰かに助けて欲しいと願っていた気持ちが涙となって溢れ出してくる。
【初めまして、蝶々さん。揚羽と言います。
大切にしていた髪をボロボロにされて、苦しいです……。
なんで、こんな目に遭ったのかなって考えてしまいます……。
私が何かをしたのかなって考えても、何をしたかが分からなくて……。
もし、何も悪い事をしていないのだとしたら、なんでこんな目に遭ったのかな……。
なんで?って思ってしまいます……。】
涙を流しながら揚羽はそう言葉をメールに綴っていく。
そして、送信ボタンを押して、蝶々からの返事を待つ。
――――ピコンッ!
早々に、蝶々からの返信が届く。
『多分、あなたはとても優しい子なのでしょうね。周りからも好かれているのではないのでしょうか?親にも愛されて大切にされて育ったのでしょう。
でも、世の中にはあなたのような人を憎く感じる人もいます。親からも愛されて、沢山の友達に囲まれているような人を、羨ましく思う反面、そのような人を憎むケースは沢山あります。
きっと、あなたの髪を切った人も、そんなあなたが憎くて仕方なかったのかもしれませんね。
でも、あなたは髪を切った人たちを憎んでいるかと言えば、少し違うような気がします。
あなたは、「大切にしていた髪が無くなった」というショックで心を閉ざしてしまったのではないのでしょうか?』
蝶々からのメールを読んで、揚羽がポロポロと涙を流す。
蝶々のメールに書かれていたことは揚羽の気持ちそのものだったからだ。
揚羽が心を閉ざして、暗闇に閉じ籠ってしまったのは、大好きで大切にしている髪をボロボロにされてしまったからで、藤木たちを恨んでいるわけではない……。
「ぅ……ぅ……」
自分の本当の気持ちを汲み取ってくれた蝶々に揚羽が嬉しくて嗚咽を漏らしながら静かに涙を流す。
【蝶々さん、私の気持ちを分かってくれてありがとうございます。
その通りです。
私は恨んでいるわけではありません。
とても大切にしていた髪が無くなってしまったことが辛いのです……。
私の気持ちを分かってくれて、ありがとうございます。
本当に嬉しいです。】
揚羽がそうメールを打つと、送信ボタンを押す。
「ありがとう……」
揚羽が小さな声でそう呟く。
揚羽は自分自身の本当に辛いことを分かってくれる人に会えた気がして、嬉しさと安堵感に包まれた。
その安堵感で涙が溢れてくる……。
そして、いつの間にか深い眠りに入っていった。
***
それから数日は蝶々とメールのやり取りが続く。蝶々はいつも揚羽の気持ちを汲み取ってくれて、揚羽にとって一番の理解者であるような感じがした。
そんなある日のこと、蝶々からのメールにある内容が入ってきた。




