11.
藤木の父親が藤木の頭や体を何度も殴る。
藤木の両親は高校を退学させられた藤木の事を責めては何度も暴力を振るっており、藤木は殴られた痛みでまともに動けずにいる。
「何のために高校に行かせてやったと思うんだ!高校さえ出ればそれなりに就職の枠が増えるから、少しでも良いところに就職して俺たちの面倒を見て貰おうと思ったのに、それを台無しにしやがって!気に入らない女子生徒の髪をボロボロにしたんだってな!」
父親が怒りで何度も藤木の身体を痛めつける。
そして、一旦暴力の手が止まったかと思うと、バリカンを手に持ち、怒りで顔を歪めるように不気味な笑みをする。
「あ……あ……」
父親が何をしようとしているのかを察した藤木が声にならない声を発する。
そして……。
――――バリバリバリ……バリバリバリ……!!!
痛みで動けない藤木の髪を乱暴に掴み、バリカンで刈っていく。
「やぁぁぁぁ!!!やめてぇぇぇぇ!!!やめてぇぇぇぇ!!!」
藤木がそう叫ぶが、父親は手を止めない。
――――バリバリバリ……バリバリバリ……!!!
藤木の自慢のロングパーマがどんどん刈られていく。
「やぁぁぁぁぁ!!!やぁぁぁぁぁ!!!」
――――バリバリバリ……バリバリバリ……バリ……。
ようやく父親の手が止まる。
「あ……あ……あ……」
藤木が床に散らばっている髪を見て、呆然としながら自分の掌を頭に当てる。
その感触は、自慢のパーマの跡かたは全くなく、坊主にされた頭が嫌でも分かるような感触しかなかった。
「あ……あ……うあぁぁぁぁぁぁ………………!!!」
藤木は泣き叫びながらその場に崩れ落ちてしまったのだった……。
***
暗がりの部屋で、揚羽は虚ろな表情のままパソコンに向かって何かをブツブツと呟きながら、何かをキーボードで打っている。
『死にたい……死にたい……死にたい……
苦しい……苦しい……苦しい……
誰か……誰か……助けて…… 』
そんな文章を無意識の中で打って、そのまま適当なアドレスを書き込むと、送信ボタンを押す。
「……何やっているんだろ」
不意に我に返って、小さな声でそう呟く。
こんな事をしても何の意味も無いことは分かっていた。
でも、何もせずにもいられない……。
日が過ぎていっても、苦しみは軽くなるどころか、どんどん増していき、もうどうしたらその苦しみから解放されるかが分からなくなっていた。
そして、ベッドに戻るためにパソコンから離れようとした時だった。
――――ピコンッ!
パソコンからメールを受信した音が鳴る。
「……え?」




