10.
ベッドに蹲りながら、揚羽がそうポツリと呟く。
死にたい……。
消えたい……。
苦しみから解放されたい……。
もう、終わりにしたい……。
揚羽の心の中でそんな感情がグルグルと渦巻く。
瞳は虚ろになりながら泳いでおり、心は暗闇に囚われたまま、光が差し込まない。
その瞳に映っているのは「絶望」という闇……。
「あ……」
揚羽がそう小さく声を発すると、ベッドからのそのそと起き上がり、部屋のローテーブルに置いてあるケースをぼんやりと眺める。
そして、その中に収納してある、お気に入りにヘアオイルを取り出し、じっと見つめる。
「うぅ……うぅ……」
揚羽の瞳から大粒の涙が溢れてくる。
どれくらい泣いただろうか……。
気が付くと揚羽は、泣き疲れたのか、そのまま意識が深い暗闇の中に落ちていった……。
***
「……よし!じゃあ、行こうか!」
揚羽の学校の友達の一人が店員からケーキの入った箱を受け取ると、元気な声でそう声を出す。
この日は土曜日で、揚羽に元気を出してもらうために揚羽の友達三人が集まり、揚羽の好きなケーキと紅茶の詰め合わせを買って、揚羽の家に向っていた。
そして、揚羽の家に着いて母親に揚羽のお見舞いに来たことを伝える。
しかし、揚羽は「会いたくない」の一点張りで、会うことが出来ないまま揚羽の家を後にすることになってしまった。
「やっぱり、相当ショックだったのね……」
道を歩きながら一人の女子が悲痛な表情をしながら、そう口を開く。
「揚羽ちゃん、あの長い髪をいつも綺麗にしていたもんね……」
別の女子が辛そうな表情でそう答える。
「お見舞いに行けば元気になるかもって思ったけど、そんな単純な事じゃなかったね……」
また、別の女子がそう口を開く。
三人とも、暗い顔をしながらトボトボと道を歩く。
その時だった。
「あれ?どうしたの?」
傍にあるコンビニから出てきたサッカー部の男子が三人を見つけてそう口を開く。
その男子の近くには山中もいる。
「……どうやら、寺川には会えなかったみたいだな」
山中が、女子が持っているケーキの箱を見てそう声を発する。
女子たちはその言葉になんと言っていいか分からずに、辛そうな表情のまま頷く。
「あのさ……」
そこへ、サッカー部の男子が口を開く。
「これは僕の提案だけど、――――って、いう事をしてみるのはどうかな?」
「え……?」
その言葉に女子が声を発する。
「もしかしたら、元気になるかもしれないよ?」
その男子が優しく微笑みながらそう言葉を綴る。
「それ、いいかも……」
「うん……。やるだけやってみようよ!」
その男子の言葉に女子たちがそう口にする。
そして、その提案を実行するために、早速準備に取り掛かる事にした。
***
――――ドカッ……!!!
「このバカ娘が!」




