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【第一章完結】300年国を支え続けた魔法使いは元教え子と共に大迷宮攻略に挑戦します  作者: 日之影ソラ
第一章

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12.意外なお仕事?

「概念魔法は世界の法則を書き換えることが出来る。例えば生物が眠るという概念を消失させて、この世から睡眠を消し去ったり。種族そのものをなかったことにしたり。なんでもありな力……って伝わってるんだけど、合ってるかしら?」


 姫様は私に確認を求めてくる。

 彼女も実際に知っているわけではないようだ。

 私は頷き肯定する。


「その認識で合っています」

「そう。なら概念魔法の力ならこういうこともできるわよね? 魔女と言う存在は悪ではない、という共通認識を世界に植え付けるとか」

「可能、だと思います。できたとしても、概念魔法を使うなんて無理です」


 私はキッパリと言い切る。

 彼女が概念魔法を実際に知っているわけじゃないと思った理由。

 それは、魔女である私ですら、概念魔法については効果くらいしか知らないから。

 発動方法やリスク、魔法の行使には条件が存在する。

 その一つでも足りなければ正常に発動しない。

 最低限、魔法式は知っておかなければ話にならないのだ。

 私はそれすら知らない。

 いや、私だけじゃないはずだ。

 二千年前にこの国を作った偉大な魔女ですら、おそらく知らないだろう。


「概念魔法はもっとも古い時代の魔法です。その起源は一万年を超えると言われています。いかに長命な魔女でも、実際を知る者はいません。なにせ禁忌にさえなっていましたから、正しく伝わってすらいないでしょう」

「もちろん知っているわ。私たちも概念魔法について調べたもの」

「それなら――」

「ええ。使い方はわからなかった。だけど、使い方を知っている存在は突き止めたの」

「知っている存在?」


 そんな人がいるのかと、心の中で声に出して驚く。

 一体誰だろう?

 この国に隠れ潜んでいるという他の魔女?

 それとも全く別の誰か?

 考えても浮かばない。

 魔女でも一万年以上は生きられないし、人間はもっと短命だ。

 わからなかった私は、彼女の言葉を待つことにした。


「その存在は特別よ。ある意味では、魔女たちよりも……この国にとってなくてはならない存在でもあるわ」


 彼女は勿体ぶるように、長々と前置きを語る。

 早く答えが知りたい私は、姿勢がどんどん前のめりに鳴っていった。

 そんな私を見て、隣でアレクがクスリと笑う。

 子供みたいだと思われたのだろうか?

 気になったけど、今はそれよりも彼女の言葉が聞きたかった。


 そして、ようやく彼女は口に出す。


「世界に四体しかいない最高位の存在にして、その一柱――その名は『赤』! レッドドラゴン」

「ド……ドラゴン!?」


 思わず声に出てしまうほどの驚き、衝撃が全身を襲う。

 思ってもみなかった答えだ。

 いや、考えることすらなかっただろう。

 ドラゴンなんて言葉が出てくるなんて……いや、確かに的を射ている。

 種族の最上位に位置する存在、ドラゴン。

 赤、青、黒、白の四体しかいないとされる最強の存在。

 彼らは永遠に近い寿命を有している。

 一万年前の禁忌、概念魔法について知っていても不思議じゃない。


「姫様はドラゴンがどこにいるのか知っているのですか?」

「ええ」

「ほ、本当に?」

「知っているわ。他の三体のことはわからないけど、レッドドラゴンの居場所なら知っている。なぜならレッドドラゴンこそ、この国の誕生に関わったもう一人だから」


 そうか。

 この国の始まりは、ドラゴンと魔女の出会いだったと聞く。

 魔女は二千年前、この地で赤きドラゴンと出会ったんだ。


「私たち王族にはね? 先祖様が残したという日誌を代々受け継いでいるの。そこにはこう記されているわ。『私は我が友と共に眠る。この地で、先の世の繁栄を願いながら』」


 我が友……はドラゴンのことか。

 この地で?

 どこを指して……


「王都?」

「ええ、私もそう思って探したのよ。この王都中を駆け回って何かないかって」

「まさか、見つけたんですか? その何かを」

「そうよ! こういうのを灯台下暗しっていうのね! ドラゴンが眠る場所はこの城の下! 地下には大迷宮が広がっていたの!」


 姫様は真下を指さし、勝ち誇ったような堂々たる態度で言い放った。

 地下の大迷宮、すなわちダンジョンがこの場所に?


「本当なんですね? 大迷宮なんて」


 普通じゃない。

 五百年生きた私でも、ダンジョンなんて出会ったことがない。

 ドラゴンと同じく古に伝わる巨大施設ダンジョン。

 偉大な者たちがその偉業と成果を隠し残すため、時間と力を使い果たし生み出した宝物庫。

 古代の遺産がこの城の地下に……


「私たちが二人に望むのは、地下迷宮を攻略して、奥に眠るレッドドラゴンを目覚めさせることよ! 危険なお仕事だけど引き受けて……って確認するまでもなさそうね」


 噂によれば、魔法に関する知識や道具も隠されているとさえ言われてる。

 私ですら知らない魔法の知識が眠っているかも。

 そうなら見たい。

 ぜひ見て学びたい。

 

「アレクシス、貴方の先生はわかりやすいわね」

「はい。でも、そこも先生の素敵な所ですよ」


 呆れる姫様と、微笑ましく見つめるアレク。

 二人の視線に気づいたのは、興奮が落ち着いた後だった。

 この時の私はドラゴンとは関係なく、ダンジョンへの期待に胸を膨らませていた。


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新作投稿してます!
婚約破棄に追放までセットでしてくれるんですか? ~職場でパワハラ、婚約者には浮気され困っていたので助かりました。新天地で一から幸せを手に入れようと思います~

最後まで読んでいただきありがとうございます!
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