間章 2
ベッドの上で寝転がっていた私は上半身を上げた。時刻は八時十分。寝るにはまだ早い時間だけど、ここ最近……正確にはお兄ちゃんが廃屋敷に赴くようになってから、ろくに眠れてないのだ。
ベッドから降りて、石が飾られた棚の前に立つ。様々な形の石がある。そこら辺に落ちているような普通の石。剣のような形。見事なまでにまん丸の形。Lの形。形容のしようがない形。……すべてお兄ちゃんと一緒に見つけた石だ。小学生のころ、よく河原に二人で繰り出して、一日中遊んでいたのだ。その途中、変わった形の石を見つけて、石探しにはまったのだ。
二階のリビングに降りた。お兄ちゃんがソファーに座り、テレビを見ていた。最近は残業が続いて、夜中に帰ってくることが多かった。就職してすぐも残業が多かった。よく金曜日に残業がなかったと思う。……もしかしたら、金曜日はものすごいスピードで仕事を終わらせてるのかもしれない。
私はキッチンで、麦茶をコップに注いで飲んだ。私はお兄ちゃんを見る。風原さんはドッキリかもしれない、って励ましてくれたけど、私にはいい想像ができない。何か悪いことに関わっているんじゃないかという考えが消えない。でも悪いことと言っても、どういう悪いことなのかがわからない。不法侵入だからそもそも悪いことなんだけど、侵入する理由がわからない。すぐに出てくるなんて、何がしたいのかがわからない。
色々と考えが渦巻いていたが、お兄ちゃんのメールの着信音で我に帰った。お兄ちゃんはメールを見ると、バッグを持ってソファーから立ち上がった。嫌な予感がしたわたしは訊いてみる。
「どこか、いくの?」
「ん? ああ、ちょっとな」
廃屋敷に向かうときと同じ断り方だった。今日は水曜日なのに……。
お兄ちゃんが出て行ったあと、私は急い自室に戻って間颶馬君にメールを打った。彼は毎日、八時から十一時まで張り込んでいるのだ。
私は呆然とベッドに腰を下ろした。……お兄ちゃんはいったい、何をしているの? 考えれば考えるほど不安になって、遂には涙までこぼれてきた。




