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第二十一章 まるで、それは世界最期の日のようで…… 5

 ケルベロスは、アサイラムの医務室で目を覚ました。


 メビウスの能力で、アイーシャ、インソムニアの生首を抱えるバイアスと一緒に脱出した事だけは覚えている。


「よう、本当にお前ら、頑張ったよな」

 レウケーが苦々しい顔で彼を見ていた。傍らには、マディスもいる。そして、リレイズもいた。いつもの顔ぶれだ。

 ケルベロスは、いつものように苦笑する。


「コーヒーは無いかな? 後は、煙草が欲しい……」

 半ば、放心しながら、彼は呟いていた。

 地底の城は、闇の彼方へと消し飛んでいってしまった。


 メビウスに、フルカネリという者の事を少しだけ訊ねたが、余り答えてはくれなかった。ただ、いつか排除しなければならない“混沌の元凶”だけ答えられた。



 アイーシャは、ドーンのハンターに登録する。


 傍らには、バイアスもいた。

 ケルベロスから、アサイラム直属の親衛隊にならないかと、誘われたが断った。

 自由はいい。

 自由がいい、何者にも拘束されていない自由だが。


 ……さてと、これから大変だろうな。

 イゾルダの生体兵器の蔓延や、グリーン・ドレスの破壊、ニーズヘッグの消滅化などによって、世界は未曾有の混乱の只中にいる。

 各地でテロが勃発しているらしい。そして、数多くの難民が彷徨っている。

 核兵器や細菌兵器が、至る処で広がり、死の苦痛を生み続けている。そして、イゾルダの生体兵器の処理も、まだ残っているらしい。

 まともな倫理を保てずに、あらゆる国が、憎しみの連鎖を広め続けている。

 ルブルは……、メアリーは、人間という存在に、風孔を開けてしまったのだろう。

 既に、人々はダートというものに敗北してしまっているんじゃないか……。


 ……しかし、私には関係が無いな。私も今更、善人のつもりも無いしな。

 そんな事を考えながら、彼女は、グリーン・ドレスの形見の首飾りをくるくると回す。

 アイーシャは宿泊しているホテルにて、しばらくの間、だらだらと過ごす事にした。此処からは海がよく見える。それはとてつもなく、光輝いていた。

 空は、何処までも青く、太陽が皮肉のように照り付けていた。




END



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