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一限目~② とりあえずの帰着点

「クローン羊は生命のDNAを解析して作り出しているから生命である」


 しばしの間に思考を再構築した恍惚先生は、我が意を得たりと言い放つ。先の「人が居なければ~」の発言は無きものとされたようだ。突っ込みたかったが、グッとこらえる。恍ピューターがうなりをあげて、持論を展開し始めたのだからーーいわく、

 植物は炭酸ガスと太陽光を取り込む(植物の例えが好きらしい)が、タンパク質合成系がないとそもそも成し得ない。つまり「生命の誕生=タンパク質合成系が作られる」という事、らしい。


 なんだ? 急に雲行きが怪しくなってきたぞ? こっちはド素人なんだ。なんだ? そのタンパク質合成系って? 言葉尻で考えると、タンパク質と何かが混ざり合っているのか? 植物とのつながりも意味不明だし、だが恍惚先生の暴走は続く。追いつかない私のメモ書きがこちら↓


 ○ DNAは分かるだろう? DNAは一部を自己複製してRNAを作る。これは分かるだろう?(RNA、うっすら名前だけ聞き覚えがあるような……沈黙)


 ○ 遺伝暗号とは、アミノ酸とDNAがどう対応するかの関係性である。


 ○ DNAは4種のスクレオチド・20種の高分子・アミノ酸がどうゆう順番でタンパク質を形成するかの設計図。


 他にも何か言っていたが、聞き漏らしてしまった。そして興奮を極めた恍惚先生が、


「設計図(DNA)から本体(タンパク質)を合成するのが生命である。つまり生物学的にみた生命の起源とは、タンパク質合成系がいつ始まったか? なんだ」


 とどや顔で宣言した。そんなに自信満々に言われても……ド素人は途中からメモマシーンと化しているので、分かりません。激しく働いた頭から煙が立ち昇り、空中に?の形を作っているに違いない。


 少なくとも〝DNAを元にタンパク質を合成し始めたところが生命の起源だ〟という事だけはなんとなく分かった。


 しかし何故「生命があるという事=タンパク質合成系ができるという事」となるのか? 肝心なところは分からなかった。

 あと単純な疑問の「じゃあ何時頃が生命の起源なのか?」も聞けなかった……しかし、今回はここまで。


 もちかえってメモ書きを咀嚼してから、疑問点なんぞが浮かんだら二時限目をしよう、ということになった。


 もしこれを勝負とするならば完璧にド素人の負けである。しかも恍惚先生の認知症は確実に進んで行く、次の取材は更なる混迷を極めるだろう。


 負けるなド素人、頑張れド素人! と自分にエールを送って、恍惚先生の一限目を終わりたいと思う。ご静聴ありがとうございました。




 〜〜〜キーン・コーン・カーン・コーン〜〜〜




 ~休み時間~



 認知症の元学者を舐めていた、分かりやすく説明する能力が元々低いのに、我が意を得た後は早口になって、メモもどこまで正しいのか不明である。


 後から調べたら「スクレオチド」とはどうやら「ヌクレオチド」のことらしく、ありていに言うとDNAなどの二重螺旋の紐の部分の事らしい……というのもWiki先生の補足授業であり、本当に正しいかは不明である。


 恍惚先生もかなり譲歩して喋ってくれたと思う。単に聞き手がド素人すぎて、説明のための説明が必要なのだ。しかし、私にはこれしかできない。


 ド素人と認知症の対談は、着地点のないままヌルヌルともつれあっていく泥レスだ。ローション相撲だ。でもそれで良いのだ。元々正解を出せるものはここには居ない。


 最初に長々と自分語りを書いたのも、取材して書く行為そのものに意味がある事を言いたかったのだ(あと愚痴も書きたかった←この動機は大きい)


 今回の分を聞き出せたのも、父親の調子が良い日と、私の都合がちょうど合ったからだとも思う。ありがたし。

 二時限目ができるかどうかは、恍惚先生の恍惚度合いと、私の都合による。でも今回の試みは、私にとって関わり辛かった父親との接点を見いだすきっかけとなった。


 なろうという場があり、聞き取った事を載せるというモチベーションがなかったら……チラシの裏に書き留めたメモだけだったら、ここまで熱心に聞けなかっただろう。

 今回はド素人なりに良い仕事をした、と達成感を得つつ、次なる取材の機会を虎視眈々と狙いたいと思う。

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