第99話~卑劣な裏切り者~
狼煙台に上った八門衆の男はすぐに浪臥村の方を見た。
アリアはハシゴを上り切る直前でその男の様子を見ていた。見張り台も兼ねている為、高さはおよそ5メートル程ある。
「何者だ」
しかし、すぐに八門衆の男はアリアの気配に気付き腰の刀を抜いた。
「待ってください。序列11位の桜崎アリアです」
アリアは潔くハシゴを昇り狼煙台の上に上がると両手を上げ名前を名乗った。狼煙台の上は畳8畳程の広さがある。真ん中には狼煙を上げる為の大きな四角い箱が設置してあり中には藁や薪が詰め込まれていた。その周りにも大量の薪がきっちりと整理されて置いてある。
「生徒か」
八門衆の男ははアリアを認識しても刀を納めようとはしない。
「あの、この騒ぎは何ですか? あちこちでみんなが騒いでいますけど?」
アリアが尋ねると男は首を傾げた。白い仮面が赤い月明かりに不気味に照らされている。
「学園に内通者、いわゆる裏切り者が出た。そして、医師の御影先生が襲われた。今は学園総出でその内通者を捜している……お前は何故それを知らない?」
「内通者!? 初耳よ、そんなの。私はさっきお姉ちゃんのお墓にいたの。だから知らなかったんだわ」
「こんな時間に墓……だと?」
八門衆の男はアリアを疑っている様子で聞き返した。まったく隙がない。
「私を疑っているのね? 私が内通者なわけないでしょ? 夜眠れない時はいつもお姉ちゃんのお墓に行ってお話するのよ」
「まあ、御影先生を襲ったのは男らしいからな。お前がその内通者ではない事は分かる。しかし、内通者の仲間という可能性はあるな。わざわざ俺をここまで追って来て殺そうとでも言うのか?」
「な!? ち、違うわよ!! 私は柚木師範を捜してたの! そしたらあなたを見掛けたから……何してるのかな……って」
「柚木師範? 何故だ?」
八門衆の男は1歩ずつアリアへ距離を詰めて来た。
この男が内通者の可能性だってあるではないか。そもそも、この男の話が本当なのかすら分からない。 だが、学園中が騒ぎになっているのは事実だ。
男の仮面の額部分に刻まれている紋様を見ても、普段から関わる事のないこの男の名前など分からない。仮面を外させたところでこの男が本当に八門衆なのかさえ分からない。
アリアは手に汗を握りながらも背負って来た弓と腰の矢筒にそっと手を掛けた。
その瞬間、男は刀を伸ばした。切っ先はアリアの右手へ。避けられない。
アリアは覚悟を決めたが不思議と痛みはやって来なかった。代わりに刀が弾かれた様な音が近くで聴こえた。
「艮、待て。まずはお前が『八卦を示せ』」
アリアの目の前には海崎がいた。八門衆の男の刀を短刀で受けている。
「海崎さん、俺を疑っているのか……まあ、無理もないか」
八門衆の男はそう言うと海崎から刀を引き、左手の革の手袋を外し手の甲を見せた。
「間違いなく、艮本人だな……」
海崎は八門衆の男の本人確認を済ませたようだが何故かまだ短刀を構えたまま辺りを警戒していた。
「海崎さん、どうしたんですか? 俺はその女こそ怪しいと思うのですが」
艮と呼ばれていた八門衆の男はまだアリアを疑っているようだ。
「俺は恐らく内通者を見付けた。そして今その男を追って来た。その男は間違いなくこの狼煙台に向かっていた筈だった。だから艮、お前を疑った」
海崎の言葉にアリアはもちろん、艮も絶句して海崎の次の言葉を待った。
だが、海崎が内通者の名前を口にするよりも前に、下から海崎を呼ぶ女の声が聴こえた。そして、次の瞬間にはアリアの身体は宙に浮いていた。
「離……お前、何の真似だ」
艮が刀をアリアの方へ向けて言った。
桜崎アリアは八門衆の離によって左腕で首を絞められ、右手を背中で極められていた。もちろん、離は行方不明になっているのでこの男が離ではないだろうことは容易に想像がついた。付けている白い仮面の額の紋様が離のものだというだけだ。
離の格好の男に首を締め上げられているアリアの足は地に着いておらず宙ぶらり状態で足をバタつかせている。
「は、放して……息が……」
アリアが苦しそうにもがいているので海崎も艮も何とか隙を突いて助け出せないかと様子を窺いながらジリジリと距離を詰めて行った。
「海崎さん!! 大丈夫ですか!? 私もすぐ行きます!」
下から斉宮つかさの声が聴こえた。
「来るな! お前はそこで待機していろ!」
海崎は下のつかさに指示を出すとアリアの方を見た。その離の格好の男の正体。それはもう海崎には分かっていた。感じる氣も海崎が先程まで追っていた氣だ。しかし、一体どこでその氣を一度見失ってしまったのだろうか。
「離……いや、柚木。内通者はお前だったのだな」
海崎のその言葉にアリアも艮も驚き声を出した。
「やれやれ、もうバレてしまったんですか。さすがは海崎さん。手強いですね」
観念したのか柚木は仮面を付けたまま喋り始めた。
「柚木、貴様には聞きたい事が山ほどある……が、まずは桜崎を離せ。彼女は関係ない」
「関係ない? この子は大事な人質です。大丈夫、殺したりはしません。でも、僕の要求を飲んでくれないと最悪殺さなくちゃいけなくなります」
「要求?」
海崎は顔をしかめた。
「そうです。艮さん、そこの藁に火を点けてください」
柚木は海崎ではなく、隣の艮に命令した。艮が海崎の顔を見て指示を乞うと海崎はアリアの方を見てから艮に頷いた。すると艮はすぐに備え付けのマッチを擦り、狼煙を上げる為の藁に投げ入れた。
すぐにメラメラと燃え始めた藁は大きな炎に包まれ狼煙台の上を明るく照らした。
「さあ、柚木。要求通り藁を燃やしたぞ。桜崎を放せ」
海崎が近付こうと一歩前へ出ると柚木はアリアの首により一層力を込めた。
「がっ!」
アリアが悶えたので海崎は一歩引いた。
「すみません、海崎さん。僕はまだこの子を放すわけにはいきません。僕には僕の仕事がありますので、これで失礼します」
「卑怯な」
「あ! 海崎さん、お墓……お墓が」
アリアが突然何かを言おうとした瞬間、柚木の手刀がアリアの後頭部を打った。
アリアは一瞬で気を失い下を向いてしまった。
「それでは」
柚木はアリアを抱えたまま狼煙台を器用に降りて行った。
「斉宮! その男を逃がすな!」
海崎の声と共に、頭上から誰かを抱えた八門衆の男が降って来た。
「桜崎さん!?」
ピンクの髪のツインテールは見間違う事のない、紛れもなく桜崎アリアだった。
頭上の狼煙台の上で角笛が鳴った。
つかさはそれには構わず、男が着地する地点に馬を駆けさせ豪天棒を横に振った。
しかし、男は着地と同時に姿勢を低くして豪天棒を躱し、そのままつかさの乗る馬の腹の下を潜り抜けた。
「逃がすか!」
反対側に出た男をつかさの豪天棒が上から突くように襲う。だが、男は横に転がり攻撃を躱す。
「ちょろちょろと!」
つかさは手綱を片手で操りながら馬の前脚と豪天棒の同時攻撃によって男を捉えようとするが男はアリアを抱えたまま華麗に躱し続け、つかさの攻撃範囲内から抜け出してしまった。
「くそっ!」
つかさが男の逃げた方を見た時には隣に海崎が降りて来ていて、つかさと同時に男を追おうとした時、 1本の矢がつかさと海崎の間を空を割く音と共に通過し後ろの狼煙台の柱に突き立った。
目の前にアリアを抱えた八門衆の男の近くに白い仮面が落ちたのが見えた。
その顔は背後のつかさの位置からでも微かに見えた。
「柚木師範……!?」
その男はつかさが予想もしていない人物、体特師範の柚木だった。
「やれやれ、もう少し混乱していてくれると思ったんですが……いつの間に真っ当な団結力を培ったんですか、あなた達は」
柚木は一瞬だけつかさと海崎を見るとまた前方に向き直った。
つかさも柚木の視線の先に目をやると、7騎の弓特生達が駆けて来ていた。
「内通者が……あなただったなんて、柚木師範」
弓特生の真ん中にいた後醍院茉里が馬を止めて言った。その横1列に他の弓特生達が整列して弓を構えた。
「バレてしまったら仕方ありません。ま、どの道今日で僕は学園を去るつもりでしたがね」
柚木は弓特生7人とつかさ、海崎、そして今狼煙台から飛び降りて来た八門衆の男の総勢10
人に囲まれているにも関わらず落ち着いた声で言った。
「柚木師範、まずはアリアさんを放してください。話はそれからです」
茉里が静かな声で言った。その声に怒りが篭っている事をこの場の全員が感じているだろう。
「こんな闇の中、僕の仮面を遠くから騎射で射抜くとはさすがは御堂筋弓術使いの後醍院茉里さんです。あなたのその武芸の腕前に免じて、この子は返す……と、言いたいところですが、そう言うわけにはいきません。この子は僕がここを無事に脱出する為の人質でもあるんですから」
柚木の言い方は、アリアという人質を「ここを脱出する目的以外にも使う」というような意味も孕んでいるように聴こえた。
「卑怯ですよ! 柚木師範! ここは武術の学園! 人質なんて取らずに私達全員を倒して逃げるくらいの事をしたらどうですか!?」
つかさが声を上げると、柚木は小さな声で笑い始めた。
「既に僕はこの学園とは関係のない存在。わざわざ危険を冒してまでそんな事する必要はない。どう見てもこの状況では人質を取らないと逃げられそうもありませんからね。本当は僕の計画だと、あなた達はお互いを疑い合ってもっと混乱して収拾がつかなくなる筈でした。その機に乗じて貰うべきものを貰ってここから脱出する。でも、予想以上にあなた達の結束力が強く、貰うべきものを回収出来ないまま追い詰められてしまったというわけです。これじゃあ、人質を取るしかここから脱出する手段がない」
「柚木、この学園から何を盗み出そうとした? 神髪瞬花の情報、消氣剤の情報……それだけか?」
「そんな事、いちいち教えると思いますか? 僕も忙しいんです。お話はここまでです、海崎さん。桜崎さんを生きて返して欲しければ馬を1頭用意してください。妙な動きをすれば桜崎さんの命はないですよ」
柚木はアリアの首を掴み、その場の全員に見えるように掲げた。
「下衆野郎」
茉里の怒りに満ちた低い声が聴こえた。それと同時に弓特生達は弓を下ろした。
「柚木、召集の角笛は聴こえただろ。もうじきここには他のクラスの生徒達や八門衆、師範、そして総帥も到着される。どうせ逃げ切れん。罪を重ねる前に大人しく降参しろ」
「はは、逃げ切れなければ桜崎さんを殺して僕も自害するだけです。こんな仕事をしてる以上、覚悟はとうに出来ています」
柚木は相変わらず涼しい表情で言った。
そうこうしてるうちに、師範達を引き連れて重黒木も馬に乗って到着した。その後から剣特、体特、槍特の生徒達も続々と到着した。
「柚木……貴様裏切りおって……どこの手の者だ」
重黒木は怒りを抑えつつ冷静に問うた。
「僕は蒼国のスパイとして、ここに赴任した時から活動していました。あなたが僕を雇ってくれた時には既にスパイだったわけですよ、重黒木総帥」
「既に神髪瞬花の情報を青幻に渡しているのだろうな。神髪瞬花が蒼に亡命したのはその為か」
「お察しの通り、青幻陛下の最大の目的は神髪瞬花を手に入れる事。その為の情報収集を僕に命じられたわけです。消氣剤の話は理事会の時たまたま知ったのでついでに貰って行く事にしただけです、はい」
柚木はにこやかに答えた。この2年間学園を欺き続けた事に何の罪悪感もないようだ。その目を細めた微笑みの表情が、つかさには堪らなく憎く感じた。
「御影を襲ったのはついで、という事か」
「はい」
柚木は重黒木の問いにまた笑顔で答えた。
「他にも目的があったような口振りだったが?」
「それは答える必要はありませんね。企業秘密という事で。さ、そんな事より、早く馬をくださいよ。早くしないと桜崎さんの身体の骨を1本ずつ折っちゃいますよ?」
柚木が左手で持ち上げているアリアの右手の指に手を掛けた。
────その時
「お墓……お墓が荒らされてた」
気を失っていた筈のアリアが突然呟いた。
だが、柚木はすぐにアリアの首を掴んでいる手に力を込めて口封じに掛かった。
アリアの低く苦しそうな呻き声がその場の全員に聴こえた。
「やめてください! 柚木師範! アリアさんを放して!」
茉里の叫びも虚しく、柚木の手はアリアの首を締め続ける。
「いけませんね、桜崎さん。余計な事を言うと死ぬのが早くなりますよ?」
柚木は細い目をさらに細めてニコニコと笑いながら苦しむアリアの表情を眺めていた。
「柚木師範、わたくしが……わたくしが代わりに人質になります。だからアリアさんを放してください、お願い致します」
茉里の提案に場は騒然とした。
「いいですよ。それはむしろこちらからお願いしようと思っていた事です。もとより僕は後醍院さん、あなたも連れて来いと命令されていますので」
「え? わたくしを?」
茉里自身も何故自分が連れて行かれるのか分からないようで顔をしかめて首を傾げた。
「そうです。御堂筋弓術を使うあなたを連れて行く事も僕の任務の1つ。青幻陛下はこの世の全ての武術家を仲間に加えたいと考えておられます。『神髪正統流槍術』の使い手の神髪瞬花さんは既に蒼国の手中にあります。あと足りないのは『御堂筋弓術』と『篝氣功掌』」
「何だと!!」
つかさは『篝氣功掌』という言葉を聞いてつい叫んでいた。
つまりそれは、カンナも連れて行くという事ではないか。
柚木は横目でつかさを見た。
「あーあ、それにしても、後醍院さんを攫うのにはもう少し準備をしておけばよかったですね。今最も弓特はバラバラで、僕が特別何かしなくてもこの混乱に乗じて後醍院さんを攫う事は簡単だと思っていたんですけど」
「あら、残念でしたわね、柚木師範。もっとも、どんな準備をしても、わたくしはあなたには捕まったりしませんけどね」
茉里の手の弓にはまだ矢が番えられていた。隙を突いてアリアを助けようとしているのだろう。
「これはこれは、随分と自信がおありなんですね。でも、あなたが大人しく捕まらなかったせいで、上手くいかない時の為に計画していた、桜崎さんを餌にあなたをおびき出すという非道な作戦を使わざるを得なくなってしまったのは本当に心苦しいですよ。さあ、桜崎さんを助けたければ後醍院さん、僕と一緒にこの学園から脱出しましょう。そうすればこれ以上桜崎さんを痛めつけずに解放する事を約束しますよ?」
「分かりましたわ」
茉里は即答した。
柚木は意外そうな顔で茉里を見た。柚木に掴まれたままのアリアも茉里の方を見ているようだ。
「待ちなさい、茉里」
声を上げたのは弓特師範、美濃口鏡子だった。
「鏡子さん」
「柚木師範、御堂筋弓術というなら私を連れて行けばいい。何故茉里なのですか?」
鏡子は師範達の後ろから馬を前に出した。
「美濃口師範、いや、あなた程の実力者となると僕が連れ去るには荷が重いんですよね。御堂筋弓術免許皆伝・美濃口鏡子。確かにその肩書きは魅力的ですが、今回は後醍院さんで十分なので」
柚木は鏡子が出て来ても冷静に答えた。
そして、アリアを一旦下ろし自分の胸の中へと抱き抱えると、アリアの頭を撫で始めた。
「さあ、そろそろ腕が疲れました。どうします? まあ、後醍院さんが桜崎さんを見捨てる筈ないと思うので答えは分かり切っていますが」
「柚木師範……あなた絶対に許さないわよ。例え茉里を攫ったとしても必ず取り戻して見せるわ」
鏡子さえも人質を取られた状況ではどうする事も出来ないのか。もし、敵がかなり格下であればきっと鏡子は隙を突いて矢を放ちアリアを助け出すだろう。しかし、相手は体特師範の柚木である。師範達や海崎、重黒木でさえ動く事が出来ない。まったく隙がない。
茉里は弓と矢を隣の千里に渡すと、馬を降りて柚木のもとへ近付いて行った。
「さ、馬です。アリアさんを解放してください」
茉里が柚木に手綱を差し出した。
「ありがとうございます」
柚木はアリアの首に手を回しまた首を締めながら手際良く茉里の馬に乗った。
「今度は後醍院さん、あなたが乗る番です。僕の前に乗ってください。そうしたら桜崎さんを解放します」
柚木が片手を差し出すと、茉里は言う通りに柚木の手を取り前に座った。
「ごめんなさい……後醍院さん、わたしのせいで……こんな」
柚木の腕に首を締められていたアリアが柚木の前に座った茉里に泣きながら話し掛けていた。
「謝る必要はありませんよ、アリアさん。柚木師範の目的はわたくし。むしろ、わたくしのせいであなたを巻き込んでしまったようなものですわ。痛い思いをさせてごめんなさい」
アリアは首を振った。
「いいの、違うの……ねぇ柚木師範、お願いします。後醍院さんを連れて行かないでください。私の……私のお姉ちゃんをもう奪わないでください」
アリアの言葉を聞いて茉里は手で口を覆った。突然涙がポロポロと溢れ出してきた。
それを見た柚木は少し茉里から顔を背けるような仕草をしたように見えた。
「悪いですが、僕も仕事なのでね。約束通り桜崎さんは解放しましょう」
柚木は近くにいたつかさをチラリと見ると、アリアをつかさの方へと放り投げた。
「ちょっと!?」
つかさは豪天棒を捨てて小さなアリアの身体を抱き留めた。
「大丈夫? 桜崎さん」
つかさの問い掛けにアリアはただ泣きながら何度も頷いた。
「これで僕の学園での任務はすべて完了。2年間、お世話になりました。御影先生には謝っておいてもらえますか? それでは……」
「待って!! 柚木師範!! 今『すべて』って言いました? あなたカンナも学園から連れて行くみたいな事言ってましたよね? ……カンナは……既に捕まってる……って事?」
つかさは恐る恐る尋ねた。またカンナも連れて行かれてしまう不安、いや、もう既に捕まってしまっているという恐怖。そんな感情が心の中で渦巻いていた。
「澄川さんですか、澄川さんなら今学園にはいませんよね? まあ、そう言う事ですよ」
柚木はニヤリと微笑むと茉里を乗せた馬の腹を蹴り、闇の中へと駆け去って行った。
つかさは柚木の最後の言葉に戦慄した。
海崎が八門衆を柚木の追跡に動かす声が聴こえたが、つかさは身体に力が入らずそのまま膝を突いて地面に座り込んだ。
胸の中ではアリアがまだ泣いていた。




