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【3巻8/2】嫌われ妻は、英雄将軍と離婚したい!いきなり帰ってきて溺愛なんて信じません。  作者: 柊 一葉
番外編

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番外編SS 英雄の義妹ですが、恋は突然やってくるそうです(4)

ジャックスさんが持ってきてくれた着替えを持って浴室へ行き、ぐちゃぐちゃになったドレスを何とか自力で脱いで体をきれいにしたら、謎の達成感と解放感ですぐにお腹がすいてきた。


ワンピースに着替えた私は、浴室から出た後、勝手に水差しの水をグラスに注いでごくごくと飲み干す。


「あ、もう出てきたんですか?お疲れ様でっす」


緊張感のない声に、私の頬が緩む。


「あれ、ジャックスさんこそこれから仕事なんですか?」


さっき会ったときは、シャツのボタンが2つほど開いていて、上着も着ていなかったし、完全にオフな雰囲気が漂っていたのに。


きょとんとする私を見て、彼はにっこり笑った。


「ニーナ嬢を邸まで送り届けるという仕事ができました」


「うわぁ。それはごめんなさい」


きっと、邸と何らかのやりとりをしたのだろう。

今夜はここに泊まって、朝になったら邸に帰ることが決まっていた。


いくら王都の治安はいいといえ、夜中に馬車を走らせるのは馬に負担がかかるし、夜道は普通に危ない。


お義兄様のことだから、「ソアリスに心配をかけたくない」って言って朝まで何も知らせないつもりなんだろうなと想像できる。第一、私自身には何も危険はなかったのだから、夜中に妊婦を起こしてまで知らせるような話ではない。


「アレン様が迎えに来るって言ってたらしいんですけど」

「絶対にやめてください」


将軍に迎えに来られるなんて、お姉様じゃあるまいし。顔の前でぶんぶんと手を振って断ると、ジャックスさんは予想通りという風に笑った。


「やめてくださいって伝えておきました」


「ありがとうございます」


王都にいると、皆が過保護で困る。

ずっと護衛騎士がいる暮らしはつらい。


「いい匂い」


「でしょう?毒見は済んでますのでどうぞ」


テーブルの上には、お皿と紅茶と揚げパンがあった。

私は喜んでそれをいただく。


ぱくりと頬張ると、冷めているのに外側がさくさくでおいしかった。


「んんん~!!!!おいしい!!!!」


たまらず目をつむり、おいしさに感動する。

ジャックスさんはそんな私を見て笑い、おかわりも勧めてくれた。


「まだいっぱいあるんで、好きなだけどうぞ」


「ありがとうございます!」


結局3つも食べてしまって、さすがに食べすぎたかなと反省する。


あぁ、揚げパン最高。

ヒースラン邸では絶対に出てこない、チープなおいしさがある。これはまたぜひ食べたいと思った。


「これどこで買ったんですか?」


「城の裏門を出てすぐの店です。夜中でも開いてるんですよ」


「へ~、こんな時間に揚げパンを売るなんて罪深い店ですね」


「はい。文官はこれのせいで太ってます」


「あら」


騎士はともかく、残業中の文官には危険なカロリーの食べ物だ。

そして、婚活中の私にも……。


揚げパンのかすがちょっとだけついている皿を見つめ、これは太ったなと反省する。


「大丈夫ですって、クリス様を担いで歩いたんでしょ?」


「それはそうですが……。あ、クリス様はどうなりました?」


大丈夫なんだろうか。

私が不安げな顔で見つめれば、ジャックスさんは「まだ何も」と答える。


茶色の大きな扉の向こうは、療養スペースだ。

そこでクリス様は薬を投与され、眠っているはず。


「様子、見に行きます?」


「え?でもお邪魔では?」


「邪魔ならレイファーさんに追い返されるだろうから、行くだけ行ってみましょう」


ジャックスさんはそう言うと扉の方へ歩いていく。

私もそれについていき、そっと療養スペースをのぞいてみた。


「何よ」


いきなりレイファーさんと目が合った。

私はジャックスさんの背中に隠れて安全を確保しつつ、様子を尋ねる。


「クリス様はどうです?」


「もう落ち着いたわ。…………って、あんたなんでメイド服なのよ!」


「え?だってジャックスさんが持ってきてくれたのがこれだったので」


紺色のワンピースは普段着かと思いきや、医局のメイド服だったらしい。

エプロンがない状態だと、それだと気づかなかった。


ドレスだと一人で着られないからすごくありがたかったんだけれど、レイファーさんは「ありえない」という風に顔を歪める。


「まぁ私の格好はいいんです。それより、落ち着いたんなら様子を覗いてもいいですか?」


「好きになさい。私はジェイデン様に報告してくるから」


「ありがとうございます」


私たちはレイファーさんの横を通り過ぎ、クリス様が眠っているベッドの元へ向かった。


カーテンを開けると、少し狭いベッドに彼が仰向けで眠っている。顔色は随分とよくなったように見えた。


「よかった」


私はほっと胸をなでおろす。

ベッドのそばに一人掛けの椅子があったので、私はそこに遠慮なく腰を下ろした。


「ふふっ、もうどうなることかと思いました」


眠っているクリス様からは、当然お返事なんてない。

腹痛も起きていないようだし、どうやら噴水の水は大丈夫だったらしい。


ジャックスさんは、クリス様の診察記録に目を通している。

そこにはどんな薬が使われたかなど書かれているそうだが、私は見てもわからないので手に取ることもしなかった。


「ふぁ……」


あぁ、安心したら眠くなってきた。仮眠室があるって言ってたけれど、動くのが面倒だった。

背もたれに体を預け、私は少しだけというつもりで目を閉じる。


このふかふかの椅子がいけないんだわ。

もうこれ絶対に寝かせる気で作られてる。


温かい部屋で、私はすぐに眠りに落ちていった。



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