問題解決と、ルーナの決意
牢屋でぼんやりしていたら、領主が来た。
「さっさと解放しなさいよ。それともあなたは、自分の欲で国を危険に晒すつもり?」
「具体的にどうするというのだ?人に従魔をけしかけて攻撃させた。聖女といえど罪から逃れられるとでも?」
「ならそちらこそどうする?」
「あの腰抜け共は今すぐお前を解放しろと言っているが、結婚とは言わぬ。領主に頼んで我が家の後ろ盾となって貰おう。
それで手を打とうじゃないか?悪い話しではあるまい。お前は無罪放免され、我が家は大統領に近くなる。いや、次の選挙では我こそが大統領だ。そうすればボルドー領主にも利がある」
「お断りします。既に父様とは話したから、こちらの状況は分かっている。すぐにでも私を解放してくれるでしょう」
「そんな馬鹿な事があるか。そこから動かずにどう連絡を取ると?」
「補助魔法。私自身、ここからオニキスを連れて逃げ出すなんて容易いんだよね」
領主は少し怯んだ。
「父様はまず、ヨードラス大統領に連絡を取ると言っていました」
「!こ、の疫病神が!我が領を潰すつもりか!」
「私は冒険者としてこの街に来ただけ。初めに言ったはずだけど?欲を出して利用しようとしたあなたが悪い」
オニキスから、感情が伝わってくる。
「オニキスを脅しても無駄だよ。私達にはパスが繋がっているんだから。オニキスを傷つけたら正当防衛成立だよね?」
「!わ、分かった!解放する!あの竜もだ!だから大統領には」
「その辺は父様に決めて貰おうかな?…父様?聞こえますか?」
「ああ、どうなった?」
「とりあえずは解放の流れかな?あとは父様にお任せします」
「分かった。すぐそちらに向かう」
「すぐに来るって。…これ以上、余計なことはしない方が身のためだよ。人のファーストキス奪っておいて、殴られる位で済んでいるんだから、余計なことしなきゃいいのに」
ルーナは堂々と牢屋から出て、オニキスと合流した。
〈主!もう何もされていませんか?私がお側に居ながらあんな暴挙を許してしまうなど、申し訳ありません!〉
「気にしないで、あんなのノーカンだよ。名前も知らないオヤジなんて、数のうちに入らない。全く、既成事実作ればこっちのもんとか、いい歳こいて恥ずかしくないのかね」
〈あんなのに先を越される位なら、私が…!〉
「さすがにそれは恥ずかしいよ、オニキス。みんなもやきもち焼かないで、…何かもう面倒くさい」
(でも、聖女にならなくてもルーナちゃんは神になっていたと思うわ)
(信仰を受けたから神になったんだよね?)
(聖女なんてただの称号だもの。きっかけに過ぎないわ。あなたを通して神を見る人は多いはずよ)
(それは今なら少し分かる。それに成長しなかったら、どんなに鈍い人でも分かると思うし。家族は私を見守っていてくれただけなんだよね)
館から出て少し歩くと、馬に乗ったボルドーの兵士達が見えた。
「いくらなんでも早すぎない?」
「領主様は昼の時点でこうなる事を予想しておいででしたから。ご無事で何よりです」
精神的ダメージは結構あるけどね。
馬に乗った父様が後ろから来た。
「ルーナ、よかった」
「ごめんなさい、父様、結局迷惑かけちゃって」
「何もされてはいないな?大丈夫だ。これをネタに揺さぶりをかけてやる」
さすが父様、黒い。
「じゃあ、私達はボルドーに帰るね」
「何なら馬で送らせるが」
「亜空間移動で帰るよ」
「分かった」
「それと父様…あとでみんなにお話したいです」
「ん?…わかった。こちらも問題が片付き次第帰る」
ルーナは頷いて亜空間に入った。
そろそろ最終回ですかね?




