王都で
次のダンジョンがある港街エレインまでは、飛んでも結構かかった。どうやら国の西でも国境付近にあるらしい。
よし!明日からダンジョン攻略だ!と思ったら、強制的に休みになった。
一応1週間に一日位は休むようにしてたけど、全然足りないと言われた。確かに1カ月に五日しか休まないのは、どこのブラック企業かって話だけど、本当に楽しくて、無理している意識がなかったのだ。
畑はキュリやトマトマ、コーンが収穫期で、畑を手伝いながらゆっくりと過ごした。
私がいつの間にかいなくなっていたから、亜空間移動を覚えたのがばれてしまった。
両親に、絶対にばれないようにしなさいと厳命された。でないと戦争に利用されるらしい。
戦争なんて絶対に嫌なので、次からはより気をつけようと思う。
「本当に凄いわね。ルーナは。もしかしたらマジカルマスターになったんじゃない?」
「ねえお母さん、マジカルマスターって呼び方、何か恥ずかしくない?」
「どうして?名誉だと思うけど」
うーん。私だけかな?こだわってるの。
「宮廷魔術師にもマジカルマスターにはなかなかなれないって、もしなれたら、宮廷魔術師も夢じゃないわね」
「私は国に仕える気はないかな」
「ルーナは聖女だから、そうした方がいいと思うわ。もし1国に肩入れして、それが原因で戦争になったら大変だものね」
「そういうものかな」
「でも恋愛はしてもいいと思うわ。誰か気になる人はいないの?」
「今の所恋は要らない」
「そう?」
「今は冒険が一番楽しいから」
私が聖女だからか、どこか一線引かれてるんだよね。気兼ねなく喋れるのはバート位かな?
今度王都に行ったら遊びに行ってみよう。恋人出来てるといいな。
王都と言えば、家具も見たかったんだ。大きなベッド、あるといいな。
「お母さん、明日は王都に行くつもりだけど、何か欲しい物ある?」
「特に無いわ。楽しんでいらっしゃい」
バートのお屋敷の執事さんに聞いたら、午後には戻るそうなので、それまで買い物をする事にした。
今回コハクは人化しない。オニキスがお子様抱っこしてくれる。女装できないのが嫌なのだろう。
キングサイズのベッドが売っていた。これなら大きいままのコハクとサファイアが寝ても大丈夫だろう。
それと、いい感じの姿見があった。歪みも少ないし、いいものだろう。値引き交渉してみたけど、大金貨一枚になった。
ベッドがいいものだから仕方がない。オニキスが竜になった時に敷く絨毯も欲しかったけど、いいものがなかったから今回は諦めた。買ってそのまま亜空間収納にしまったら、驚かれた。
バートの家を訪ねたら、女の人がいた。半年で立ち直れたんだ。良かった。
「初めまして、聖女様。アリアと申します」
「ごめんね?バートに彼女出来たなら安心だから、お邪魔虫は帰るね」
「茶位だすよ。せっかく来たんだし」
庭のあずまやに通された。
アリアさんは、大人しい印象だけど美人さんだ。
「聖女様は、バート様と普通に話されるのですね」
「ルーナでいいですよ?アイツは手癖悪いけど、私は鑑定を、結界魔法で防げるんで」
「さすがは聖女様ですね。私には、覗かれても分からないのに」
「大事にしたい人を困らせるような奴じゃないですよ?」
香りのいい紅茶を飲んだ。
「うん?どうした?」
「アリアさんの事、覗き見してないでしょ?」
「アリア、私は先に言ったよね?必要と感じなければ魔眼は使わないって」
「えっ…ええ」
「鑑定と魔眼て、違うの?」
「あれ?おチビちゃんは知らないんだ?その気になれば、名前とかだけじゃなくてスキルや称号まで見えるんだ。レベル差はあまり関係なく」
「じゃあ、看破より凄いんだ。バートのがチートじゃん。しかも覗かれてるのが分かって、とっさに結界張れなきゃ弾けないとか、嫌な奴!」
「はぁ、嫌とか言うなよ。傷つくだろ?それにさっきも言ったように、身の危険を感じなきゃ、覗かねぇっての」
「まあ、私は弾けるから。今はやってないならいいんじゃない?」
アリアは、小さく震えていた。
「バート、騙して付き合わせたの?アリアさん可哀想」
「違うって。アリアの父親の子爵とは仕事上の付き合いがあって、娘と是非にって言われたんだよ」
「ごめんなさい、バート様。やっぱり私、無理です」
アリアは帰ってしまった。
「はあ。やっぱりだめか」
「ごめんね?私が聞かなければ逃げなかったかも」
「いや、いずれはこうなっていたさ。父親の命令で来ても、図太くなきゃ付き合えないのさ。自ら公爵夫人を望むような、ね」
「なら、加護持ちと付き合ったら?」
「あのなぁ。そんなほいほい加護持ちがいると思うか?」
「…難儀だね」
「やっぱりルーナ、俺と付き合わない?大人になるまで手出ししない!だから」
「無理。私は一生結婚しないって、決めてるの」
「はあ?その歳で何言ってんだか」
「ちゃんと理由あるんだけど…バートにならいいか。弾かないから私に魔眼使ってみて?」
「は?いいのかよ」
「バートの事は一応信用しているし、友達だと思っているからいいの」
「分かった」
うー、やっぱり覗かれるのって嫌な感じ。偽装した所までは、覗かれないと思うけど。
「…どんだけチートなんだよ。神になるのか?」
「そうなると思う。もう半分くらいはそうみたいだから。納得した?」
「せざるを得ないだろうが。それはいつなんだ?」
「さあ?」
しゃがみ込んで落ち込むバートの頭を撫でてやる。
「なあルーナ、何で忌み子なんて生まれるんだろうな」
「分かんないけど、神様はそういうの分け隔てしないと思う」
「そうだろうけど、辛い」
「子供に言う愚痴じゃないでしょ、そのうちきっとバートでもいいって人出てくるよ」
根は悪い奴じゃないんだし。




