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転生少女は救世を望まれる〜平穏を目指した私は世界の重要人物だったようです〜  作者: 蒼井美紗
1章 環境改善編

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97、観光とお土産

 しばらく雑談をしながら歩いていると、クレールさんが少し先に見える大きな建物を示した。


「あちらの店舗が一番品揃えが良いと、宿の従業員が薦めておりました」

「かなり大きな建物ですね」


 外観を見回してからクレールさんに続いて中に入ると、たくさんのカラフルな布に迎えられる。大きな一枚布が綺麗に折り畳まれ、所狭しと並べられているようだ。


「いらっしゃいませ。魔道具師の方ですか?」


 声をかけてくれたのは、優しげな笑みが印象的な店員の女性だ。


「ああ、いくつか土産に布が欲しいのだが」

「かしこまりました。気に入った柄がありましたら、お申し付けいただけたらと思います」

「分かった。布によっては場所で柄が違うと思うが、その場合は欲しい部分の布を買えるのか?」

「もちろんでございます。それによって余った布は端布として売っていたり、カバンや服などにして売っておりますので、お気になさらず好きな部分を伝えていただけたらご用意いたします」


 そういうことか。だから鞄や服が少しだけ売ってるんだね。端布とかもお土産に良いかもしれないな……お母さんが喜びそう。


「あっ、ダスティンさん。この青い色合いの布、ダスティンさんに似合いそうです」

「……そうか?」

「はい。クレールさんはこっちの緑ですかね。意外と赤もいけますか?」

「赤は止めてください」


 かなり鮮やかな赤をクレールさんの前に差し出したら、嫌そうな顔をされてしまった。クレールさんには意外と合うと思うのに。


「私はこの辺りの色合いが好きです」


 そう言ってクレールさんが指差したのは、グレーや茶色の布だ。確かに悪くはないけど……地味だね。


「せめて緑はどうですか?」

「まあ、それならば」

「じゃあこの布で服を仕立てましょう! ダスティンさんは……」


 それから私はたくさんの布にテンションが上がり、皆に合う布を端から選んでたくさん積み上げていった。


「こんなに買うのか……?」

「いえ、さすがにこんなには持ち帰るのも難しいので、ここから特に欲しいやつを選ぼうと思います」

「全部買えば良いんじゃないか?」

「それだと楽しくないんです。こういうのは吟味するのが良いんですよ」

 

 私はニコニコと満面の笑みを浮かべている店員の女性の助けを借り、購入する布の裁断を始めてもらった。そしてそれから数十分、やっとテーブルの上に購入したい布が全て積み上がる。


「ダスティンさんの魔道具開発に使えそうな布は決まりましたか?」

「ああ、この二つにする。どちらもたくさん切られたのかそこまで大きくないようだし、このまま購入しよう」

「分かりました。じゃあこれも合わせてお会計をお願いします。ここは私が全部払いますからね。たまにはお礼をさせてください」


 財布を取り出そうとしたダスティンさんより先にお金を取り出してカウンターに置くと、ダスティンさんは少し悩んだのか私とカウンターの上のお金を交互に見つめてから、ゆっくりと頷いて財布を仕舞ってくれた。


「……分かった。ありがとう」

「レーナさん、私の分までありがとうございます」

「いえ、気にしないでください!」


 私はレーナになって久しぶりに奢るという行為ができて、思わず頬が緩んでしまう。やっぱり奢られてばっかりっていうのは性に合わないんだよね。凄くありがたいことは確かなんだけど。


「たくさんのお買い上げありがとうございます。ついでにこちらの果物もいかがでしょうか? この時期しか売っていない希少な果物です」


 店員の女性がカウンターの近くに置かれていた果物を示して、私は初めてそれが置かれていたことに気づいた。


「これってなんて果物ですか?」

 

 ロペス商会でも見たことがない果物があることを不思議に思いつつ問いかけると、店員の女性は笑顔で一つを手に取ってカウンターの上に乗せてくれた。


 黄色一色のその果物は、両手で抱えるほどの大きさだ。女性が持ち上げた感じからして、重量感もあるように見える。


「メイカという名前の果物です。この街で栽培されている染料となる植物は土の月に収穫され、風の月の中頃に種を蒔きます。その間となる水の月にメイカを育てるのが、この街の伝統なんです。果実はこうして収穫し皆で食べて、余った分は売りにだし、メイカの蔦や葉、根などは乾燥させて畑の土に混ぜると翌年の染料となる植物がよく育ちます」


 そんなサイクルがあるんだね……この話はダスティンさんも初めて聞いたのか、興味深そうに耳を傾けている。


「この果物は王都に輸送していないのか?」

「はい。あくまでも果実は副産物なので、街の皆で食べてこうして少し売りに出すと、すぐに終わってしまいます。なのでこの時期にこの街へ来られた方だけが食べられる、珍しい果物だと思いますよ」


 私はそこまでの説明を聞いて、この果物を買うことに決めた。味見はできないみたいだけど、珍しい果物というだけでロペス商会へのお土産にぴったりだろう。


「どのぐらい日持ちしますか?」

「直射日光が当たらない場所でしたら、二週間程度は美味しく召し上がっていただけます。こちらはまだ収穫して三日ですので、しばらくは大丈夫です」


 それならお土産として問題はない。ギャスパー様に一つと皆で切り分けて食べる分が二つぐらい、それからエリクさんにも買っていこうかな。後はうちで食べる分も一つ欲しい。


「五つ買っても良いでしょうか? ダスティンさん、リューカ車に乗りますか?」

「これが五つぐらいは問題ない」

「ありがとうございます! では五つお願いします」

「かしこまりました。準備いたしますのでお待ちください」


 それからメイカ五個分の支払いも済ませ、持ち帰るには多くなりすぎた購入品を宿まで運んでもらえるようにお願いして、私たちはお店を後にした。

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