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転生少女は救世を望まれる〜平穏を目指した私は世界の重要人物だったようです〜  作者: 蒼井美紗
最終章 救世編

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303/304

300、お願いと現実へ

 創造神様へのお願いを一つ思いついて思わず声を上げると、すぐに問いかけられた。


『何か思いついたか?』

「あの、無理だったら諦めるんですけど――日本食とかってこの世界で食べられるようになったりしませんか?」


 無理だろうと思いながらも要望を口にする。


 どんなに願っても手に入らないものは、日本にあったもの全てだ。特に日本食はずっと食べたいと思っていた。


 もちろんこっちの世界で似たようなものを作ったり、食べることはできるけど、やっぱり違うのだ。それに全く手に入らないものもある。


 日本食とは違うかもしれないけど、そもそもこの世界にはパンがないのだ。ふわふわの食パンにクロワッサンやアップルパイ、メロンパンにカレーパン、コッペパンなど、様々なパンが食べたいと思っていた。


 あとはピザもいい。ラーメンも食べたいし、蕎麦やうどん、お寿司も食べたい。卵かけご飯に納豆、焼き海苔なんていう朝ご飯を食べられたら、最高に幸せだろう。


 なんだかお腹が空いてきた――。


 鳴りそうなお腹をさすったところで、創造神様が悩みながら答えてくれた。


『レーナの元いた世界の食事だな。なんという世界だったか?』

「地球です。その中にある日本という国ですね」

『ふむ……時間はかかるが不可能ではないかもしれぬ。食事でいいのだな?』

「え、他のものもこちらに持ってこられたりするのですか? それならぜひ漫画を!」


 欲望を全開にしてしまうと、創造神様の悩みが深くなったような気がした。


『それは、なんだ?』

「本です。絵がたくさん描かれた本で、物語が描かれています。とっても面白いんですよ」

『本か……ひとまず可能かどうか確認しよう』

「ありがとうございます!」


 確認してくれるだけで本当にありがたいことだ。


 ただ、もし漫画を持ち込めるってことになったら、しばらく夢中で読み耽ることになりそうである。自制しないといけないのは辛そうだ。


 今までは考えないようにしてたけど、思い返してみると続きが気になっている漫画がいくつもある。最終決戦前で続きを読めていないものも、二人の恋が成就する寸前で止まっているものも。


「あ、私だけが読める形でも問題ありませんので、その方向も模索していただけたら……」


 この世界にもたらす影響を考慮して却下されないよう、さらに要望を出してみた。創造神様からは悩む様子が伝わってくるものの、さっきまでよりは前向きな雰囲気が感じられる。


『それなら、可能だろうか……』


 独り言のように呟いてから、話を切り替えるように言った。


『考えておく。少し待て』

「もちろんです。ありがとうございます」

『そうだ。他の者たちに神託をするという話もあったな。あれはどうする? 何か伝えるべきことはあるか?』


 創造神様は話を覚えていてくれたらしい。それをありがたく思いつつ、私は創造神様の神託の内容に口を出せる自分の立場が少し怖くなった。


 改めて、神子という立場を実感する。


 神子とはよく考えたら、神の子という意味だ。自分がそんな凄い存在だなんて全く思えないけれど、少しは自覚しておかないといけないのかもしれない。


 何気ない要望が、世界に大きな影響を与えることになったら困るのだ。


「神託をしていただけるだけでとてもありがたいですが……もし問題がなければ、私が自由に動けるように皆さんに伝えていただけると助かります。教会に縛られず自由に生きたいんです」


 ティモテ大司教のおかげでその願いは概ね叶いそうだけど、創造神様からの後押しがあれば完璧だろう。


 そう思って願ったけど、すぐに了承してもらえた。


『分かった、伝えておこう。ではレーナを戻し、少ししたら神託を行う』

「はい。よろしくお願いいたします」


 私がそう答えた瞬間、また意識が遠のいていくのが分かった。右も左も分からないような不思議な感覚が過ぎ去ると、体の感覚が戻り、現実に戻ってきたのが分かる。


 目を開くと、そこは大聖堂の中だった。


 周囲には私を心配そうに見つめるダスティンさんやお養父様たちと、私に対して祈りを捧げているティモテ大司教たちがいる。ティモテ大司教たちはいつものように号泣である。


 涙など全く気にせず、熱心に祈っていた。


「レーナ、大丈夫か?」


 心配そうに眉を下げているダスティンさんが声を掛けてくれて、私は頷いた。


「はい。創造神様と話をしてきました。私は……どのような形になっていましたか?」

「何かに守られているように光り、近づけなかった」


 創造神様のところに行ってる時はそんな感じになってるんだ……それは、ティモテ大司教たちの気持ちも少しは分かるかもしれない。


 突然体が光って近づけない護りみたいなのに包まれた人間がいたら、私でも神の力を実感するだろう。


「レーナ様……! そ、創造神様の、御神託が!?」


 ティモテ大司教が興奮や感動で言葉を詰まらせながら、なんとか聞いてきた。私はそれに、神子らしさを意識して頷く。


「はい。創造神様より皆様へもお言葉があるようです。今すぐにここへ人を集めてください」


 創造神様の神託がどこまで聞こえるのか分からないし、大勢が聞くべきだろうと思ってそう伝えると、ティモテ大司教は面白いぐらい目を見開いて顔を上げた。


 目が血走っていて、目玉が飛び出しそうなほど力が入っていてかなり怖い。


「わ、わ、わ、われ、我々にっ、御神託がっ、!?」


 慌てすぎていて、何を言っているのか分かりづらい。


「はい。皆様にお言葉があるようです」

「い、い、今すぐにっ、大聖堂にいる全員を集めます!! おいっ、早くするんだ! 早くっ!!」

「は、はい!!」


 ティモテ大司教たちが大慌てで動き出す中、私はダスティンさんたちに視線を向けた。

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