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転生少女は救世を望まれる〜平穏を目指した私は世界の重要人物だったようです〜  作者: 蒼井美紗
最終章 救世編

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285、これからの動き

 創造神様からの神託の内容を全て聞いたティモテ大司教は、もうどんな感情なのか理解できないけど、とにかくずっと泣いていた。


 しかし泣いているその瞳には、熱い炎が燃えている。


「我々にそのような使命を与えてくださるなど……なんと光栄なことでしょうか! この命をかけて全力で御神託を遂行いたします! レーナ様、どうぞ私たちをお使いください……!」


 ありがたいことだけど、ティモテ大司教の熱量が凄すぎて若干引いてしまう。しかしティモテ大司教が前向きになってくれるのは望んでいたことなので、その気持ちはあまり表に出さないようにして頷いた。


「ありがとうございます。よろしくお願いします」


 ここまで予想通りに事が進むなんて、ティモテ大司教たちをまず仲間に引き入れようとしたのは大成功だ。


 これで教会側の一つの勢力が完全に協力してくれることになる。魔王との戦いにおいては大きな一歩だ。あとはリンナット教皇だけど……そっちはどうなるのか本当に分からない。


 やっぱりティモテ大司教は、行動原理が分かりやすいところは良かったね。


「まずティモテ大司教たちに協力していただきたいのは、人質の奪還です。実は先ほど私たちの宿泊所に聖騎士が襲ってきて、何人も人質を取られました。おそらくリンナット教皇によるものなのですが、捕らわれた仲間たちを助けたいです。そして人質を助け出してから、リンナット教皇にも協力要請ができればと思っています。できる限りの戦力で魔王への対抗を……」


 私がそんな説明を始めると、ティモテ大司教が瞳に強い怒りを滲ませたのが分かった。思わず口を閉じると、それとほぼ同時にティモテ大司教が呻くように告げる。


「あの男め……私が殺してくれる!!」


 その声は今まで聞いたことがないほど低く、このまま呪い殺せるんじゃないかというほどだった。


 本当にティモテ大司教は優先順位が分かりやすい。創造神様からの神託を得た加護持ちの私を害そうとしたから、ここまで怒っているのだろう。


 ただ正直なところ、ティモテ大司教がそれを言うの? って感じだけど……昨日までは私を殺そうとしてなかったっけ?


 そう詰め寄りたい気持ちになるけど、それをしたら絶対にまたややこしいことになるので口を開くのはやめた。

 リンナット教皇に対して怒って人質救出の手助けをしてくれるなら、なんでもいいのだ。


 私が内心でそんなことを考えていると、ここまで黙っていたダスティンさんが口を開いた。ダスティンさんはティモテ大司教を味方にしようと提案したけど、ティモテ大司教への不快感を全く隠していない。


 あからさますぎる様子に、こんな時だけど少しだけ口元が緩んでしまった。


「リンナット教皇の普段の居場所、現在いるだろう部屋、さらに寝所の場所を教えろ。それからこの教会の隠し通路や隠し部屋の場所も全てだ」


 敬語も使わず命令口調のダスティンさんだったけど、私の仲間という認識だからか、ティモテ大司教は従順だった。


「もちろんです。すぐに地図を。おいっ、早く持ってこい」

「はっ!」


 それから地図を用意してくれたティモテ大司教は、全く躊躇わずにこの教会の作りを説明してくれた。ティモテ大司教がどこまでの情報を持っているのか疑問だったけど、予想以上にその内情を知っているようだ。


 そこはやっぱり、大司教という地位にいた事が大きいのかもしれない。ティモテ大司教が大司教であることに感謝する時がくるとは予想外だった。

 

「人質はどこにいる可能性が高い?」

「この部屋か、もしくはこちらの部屋でしょう」

「救出は可能か?」

「こちらの隠し通路から向かって――」

「お前たちの戦力は?」

「私たちは聖騎士の一部と――」


 ダスティンさんが淡々と問いかける質問にティモテ大司教は澱みなく答えていった。それによってすぐに、人質救出作戦の全容が決まる。


 危険な役割を担うのは基本的にはティモテ大司教側の戦力だ。ちなみにティモテ大司教には一応動かせる聖騎士がいたし、さらに私兵のような存在もいた。


 そして私たちは、実際に人質を救出する役割を果たすことになる。そこだけはティモテ大司教たちに任せたくなくて、私たちから立候補した。


「いいか? リンナット教皇はとりあえず生かせ。そこを間違えぬように」


 ダスティンさんがティモテ大司教に対して、強い瞳で念押しをする。ティモテ大司教がリンナット教皇への強い怒りを隠さないからだろう。


「リンナット教皇は魔王討伐のために果たしてもらいたい役割があります。それが創造神様のご意志でしょう」


 私もそれらしい感じで伝えてみると、ティモテ大司教は感動の面持ちで泣きながら頷いてくれた。


「はっ、かしこまりました!」


 皆でこっそりと部屋を出たら、作戦開始だ。

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