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転生少女は救世を望まれる〜平穏を目指した私は世界の重要人物だったようです〜  作者: 蒼井美紗
最終章 救世編

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282、本題と大聖堂に戻る

 心を読まれたことによりティモテ大司教やリンナット教皇が敵なのか問いかけられ、私は少し躊躇いながらも口を開いた。


「その、私にとっては敵かもしれません。ティモテ大司教は創造神様のことを何よりも崇拝していまして、大聖堂で祈っても私が創造神様のお言葉を聞けなかったことで、創造神様のご意志を間違った方向に推測していると言いますか……リンナット教皇は信仰心よりも、支配欲や金銭欲の方が大きいのかもしれません」

『――分かった。やはり魔界の方に翻弄され、こちらを放置していたのがいけなかったようだ。魔界に割いている力が必要なくなり次第、神託などを行おう』

「ぜひ」


 これでヤバい状態の教会が少しでも正常化されればいいな。そんなことを考えていたら、創造神様の声音が少し柔らかくなった。


『しかし、その状態だと確かに大聖堂へ落ちなくて良かったのかもしれないな。ただ別の場所に落ちてしまったことで連絡手段をなくしたというのは事実なのだが……お主が大聖堂へと赴いてくれて本当に良かった』


 つまり、大聖堂じゃないと創造神様と話すことはできないってことなのかな。それも創造神様がちょうど時間を割ける時に。


 それなら、嫌だったこの国に来た甲斐があるというものだ。


「私もお話しできて良かったです」


 そこで少し会話が途切れ、創造神様は話題を変えるように声のトーンを変えた。


『そろそろ時間がないため、本題に入ろう。先ほど伝えた魔王の暴走だが、ついに魔王が自ら精霊界を蹂躙しようと企んでいる。お主には神子として、どうかそれを止めてほしい。一週間以内には大聖堂近くに現れるはずだ。お主に会うのが間に合って本当に良かった』


 え、一週間以内に大聖堂近く!?


 私はあまりにも驚きすぎて、言葉を失ってしまった。まさかそんなに切羽詰まっていたなんて……教会と争ってる暇なんて全くない。すぐに対処法を考えなければいけないだろう。そもそも魔王はどれほど強いのか。


「それって、ゲートが開くってことですか?」

『ああ、魔王とその部下たち、そして魔物も大勢押し寄せるだろう』

「それを私に止められるのでしょうか……?」

『我の加護を持つ神子ならばできると信じている。そうだ、お主に会えたらこれを授けようと思っていた』


 その言葉が聞こえた直後、私の目の前には金色の輝きを放つ宝石の付いたネックレスが現れた。加護を得るときに授かった指輪と同じようなデザインだ。


 それは私が手に取らずとも、勝手に首元に付けられる。


『それを付けている限り、お主は魔力を無限に扱える。少しは助けになるだろう』


 魔力を無限……無限って、いくらでもってことだよね?


 それは助けになるどころの話じゃない。このネックレスがあれば、魔王をなんとか倒せるのだろうか。


 私はまだ混乱しながらも、ネックレスにそっと触れて決意した。


「絶対に、私たちが住む世界を救います」


 大切な人たちがたくさんいるのだ。絶対に魔王なんかに蹂躙させない。


『ありがとう。精霊界を頼んだぞ』


 そこで創造神様の声は聞こえなくなった。私は自分が優しい光に包まれていくのを感じながら、これからのことを考える。


 とにかく魔王を倒さなければいけない。そしてその準備を早急に進めるためにも、ティモテ大司教やリンナット教皇と敵対している場合じゃない。


 協力し合うなんてこっちから断りたいけど、魔王と争うなんて、いくら戦力があっても十分とは言えないはずだ。


 早急にパメラたち人質を助け出してから創造神様の言葉を伝えるべきか、最初から創造神様からの神託があったと伝えて魔王が攻めてくることを周知するべきか。


 どうすればいいのだろうと考えていると――一瞬意識が遠のき、パチパチと瞬きをした時には、大聖堂にある創造神様の像の前に戻ってきていた。


「あ……」


 ルーちゃんの魔法で宙に浮かんだままだ。さっきのは絶対に夢じゃない。現実だったはず。ただ魂だけがあそこに呼ばれたのか、肉体ごと呼ばれたのか……。


 色々と考えていると、周囲の音が戻ってきた。


「レーナ!?」

「大丈夫なら返事をしてくれ! 何かあったのか!?」


 慌てたようなその声は、ダスティンさんとシュゼットのものだ。


「レーナお嬢様、お返事を!」

「何があったのですか!?」


 レジーヌとヴァネッサの声も聞こえる。私は少しだけ怠い体を動かして、下に視線を向けた。


「すみません。下りますね」


 そう伝えると、下に集まってくれていた皆は一様に安堵の息を吐いた。ここまで心配されてるってことは、さっき創造神様の話をしていた時間は、そのままこっちでも時間が流れてたのかな。


 ――ルーちゃん、ゆっくり下ろしてね。


 私の要望通りにルーちゃんは床まで下ろしてくれて、私は地面に足をついたところでなんだか安心できた。


「ふぅ……」


 大きく息を吐いていると、ダスティンさんに肩をガシッと掴まれる。


「何があったのだ?」


 そう問いかける表情は真剣そのものだ。


「――創造神様と、お話をしていました」


 私の言葉に、誰もが息を呑むのが分かった。

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