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転生少女は救世を望まれる〜平穏を目指した私は世界の重要人物だったようです〜  作者: 蒼井美紗
最終章 救世編

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279、現状把握と打ち合わせ

「ダスティン様!」


 ヴァネッサとレジーヌに手伝ってもらいながら素早く着替えて廊下に出ると、ちょうどダスティンさんも部屋から出てきたところだった。


「レーナ! 無事だったか!」


 ダスティンさんもかなり焦っている様子だ。


「はい。ダスティン様もご無事で良かったです。そちらにも聖騎士が……?」

「ああ、襲ってきた」


 頷いたダスティンさんは強い怒りを露わにしている。聖騎士に襲われたのだから当然だろう。教会が明確にアレンドール王国と敵対したってことなのだから。


 教会側はこれからのことをどう考えてるのか……こんなことをしたら、教会の信頼は地に落ちるはずだ。


「とにかく被害状況を確認しなければいけない。他の者たちも全員起こして……」


 ダスティンさんがそう言っている間に、また別の部屋の扉が開いた。出てきたのはお養父様で、それとほぼ同時に廊下の向こうからカディオ団長、シュゼットたち騎士も慌てて駆けてくる。


「その必要はなさそうだな」

「お怪我はありませんか!」


 カディオ団長が叫んだ言葉に、少し冷静さを取り戻したダスティンさんが答えた。


「私は大丈夫だ。レーナはどうだ?」

「私も大丈夫です。ただパメラが連れ去られて……!」


 その言葉に皆の表情が暗くなる。


「誘拐か……パメラの安否は分かるだろうか」


 カディオ団長の問いかけにはヴァネッサが答えた。


「血痕などが全くなかったため、パメラは酷い怪我などはしていないはずです。命はまだ無事だと思います」

「そうか。では人質として連れ去られた可能性が高いな。向こうの目的は……」


 団長がそこまで呟いたところで、今度はお養父様が口を開く。


「こちらでも側近が一人攫われてしまった」


 さらに少し遅れて駆けてきた騎士の一人も、慌てて報告した。


「騎士が一名見当たりません! それから下働きの者が三名ほど行方不明だと! 怪我人も何名かいますが、命に関わるような大怪我をした者はいないようです!」


 連れ去られたのは合計で六人だ。命を落とした人がいないことは不幸中の幸いだけど、たくさんの人質を取られたことに誰もが唇を噛み締める。


「まさか教会がここまでやるなんて……団長、向こうの目的はレーナでしょうか」

「その可能性が高いだろう」

「レーナを手に入れるために人質を取ったのだろうな。ティモテ大司教が今回の行動を起こしたと考えるのは違和感がある。リンナット教皇あたりだと考えるのが無難だ」


 シュゼット、カディオ団長、ダスティンさんの会話だ。そして私も三人の考えに賛成である。リンナット教皇は私が大聖堂に入ることを望んでたみたいだし、断られたことで実力行使に出たと考えてもおかしくはない。


 私を手に入れるためだけにここまでするのかって疑問はあるけど……自分で思ってる以上に、私の力は誰もが欲しがるものなのかもしれない。ルーちゃんの力は本当に凄いから。


 とはいえティモテ大司教はそんな私をこの世から消し去ろうとしていて、教会も内部はかなり意見が割れてるのだと思う。ティモテ大司教とリンナット教皇は敵対してるのか、それとも互いに無関心なのか、そこもよく分からない。


「これから教会はどう動くのでしょうか」


 とにかく今大事なことは直近の行動なので、私はいろんな考えを全て思考の隅に追いやってそう聞いた。するとダスティンさんが眉間に皺を寄せながら答えてくれる。


「とにかく人質を盾にレーナを好きに動かそうと考えるだろうな。いや、レーナだけでなく私たちもか。問題は今回の黒幕――おそらくリンナット教皇の最終的な目的がどこにあるかだ。アレンドール王国を敵に回したわけだが、最低限の友好関係を保とうとするのか、もしくは完全に敵対するのか……」


 最低限の友好関係を保とうとするなら、私たちを脅して私が自分から大聖堂に入ったと喧伝するのかな。もしくはダスティンさんたちは証拠隠滅に消される?


 完全に敵対する場合は考えるまでもなく、普通に命を狙われそうだし……。


 どう考えても最悪な未来しか描けなかった。とにかく分かることは、教会のペースに乗せられてはいけないということだ。


「こちらからも積極的に動くべきだろう。人質を奪還するべきだな」

 

 私が考えていたこととほぼ同じ意見を、厳しい表情のお養父様が口にした。するとダスティンさんもすぐに同意を示す。


「私も同意見だ。向こうの態勢が完全に整う前に、人質奪還のためにこちらから攻めた方が良い。とにかく時間との勝負だ」


 それに反対する人はいなかった。危ないと分かっていても、このまま向こうのペースに乗せられる方が、危険に飛び込むよりもさらに状況を厳しくするだろう。


「私も人質奪還のために動きます」


 絶対に譲らないという意思を込めてそう告げると、ダスティンさんとお養父様はしばらく難しい表情で押し黙ったけど、しばらくしてまずはお養父様が認めてくれた。


「――向こうの目的がレーナである可能性が高い以上、レーナはこちらで守りを固めておくべきなのだろうが、レーナの戦力は今の私たちにとって重要だ。積極的に動いてもらう方が良いのかもしれない」

「――さらにレーナの守りに人手を割いていては、人質奪還に向かえる人員がかなり減ってしまう。ここは戦える者全員で向かうぐらいの思い切りが必要だろう」


 二人のその言葉で、私も人質奪還のために動くことになる。


「では作戦を考えましょう。大聖堂に正面から向かうのか、向こうが使った隠し通路を追いかけるのか、いくつか方法があると思います」

「そうだな……」


 それからは戦いのプロであるカディオ団長とシュゼットが中心となり、素早く作戦を考えた。作戦が決まったら、さっそく行動開始だ。

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