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転生少女は救世を望まれる〜平穏を目指した私は世界の重要人物だったようです〜  作者: 蒼井美紗
最終章 救世編

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276、応接室で話し合い

 アレンドール王国に貸し出されている宿泊所の応接室に入ったところで、私は完全に体から力が抜けた。ちょっとお行儀は悪いけど、ソファーにぐったりと座り込ませてもらう。


 今までもずっとこんなことになるのを予想してたけど、まさかすぐに命を狙われるとは思ってなかった。それもなんの躊躇いもなさそうだったのが怖すぎる。


 ティモテ大司教は、むしろいいことをするんだというような穏やかな表情だった。あの表情のまま、なんの感情の揺れもなく私を殺してきそうだ。


「はぁ……」


 思わずため息を吐くと、お養父様が気遣わしげな表情を向けてくれた。


「レーナ、大丈夫か? さすがに話の急展開さに驚いてしまったな……とにかく私たちはレーナを神の元へ帰すなど、訳の分からない決定には絶対に従えない。それだけは確かなので安心して欲しい」

「ああ、その決定にアレンドール王国が従うことはない。向こうが強行するならば、こちらも武力で対抗しよう」


 お養父様とダスティンさんの言葉に、心から安心できる。


「本当にありがとうございます。私も死にたくありません。それに、私を神の元へ返して欲しくて世界を荒らしてるなんて、あまりにも飛躍しすぎた考えだと思います」


 そもそもティモテ大司教的には、一人の人間を返して欲しいというその目的のためだけに、世界を荒らして大勢を犠牲にするような神様、受け入れられるのだろうか。


 ティモテ大司教の思考は本当に理解できない。とにかく神が第一ということは分かるんだけど……。


 うん、多分考えても仕方ないのだろう。絶対に分かり合えない人というのはいる。


「私にも理解不能だったな。しかしティモテ大司教の方が動きが分かりやすくていい。問題はリンナット教皇だ」


 ダスティンさんの言葉に、私は大きく頷いた。


「私もそう思います。リンナット教皇は何を考えているのか分からなくて怖いです。そしてさっきの感じからして、私たちの味方というわけでもなさそうですし……」

「ティモテ大司教をとりあえず遠ざけていたが、ただの時間稼ぎという感じだったな。リンナット教皇は私たちの仲間ではないが、ティモテ大司教も邪魔に思っているのだろうか」


 お養父様の考察に、私は少し納得できた。


 確かにその立ち位置が一番しっくりくる。じゃあリンナット教皇の望みはなんなのだろうと思うと……やっぱりさっき聞かれた、私に教会に入って欲しいってことなのかな。


 もしかしたら、私の力が欲しいのかもしれない。ルーちゃんの魔法は本当に凄いから、創造神様の加護持ちという部分がなかったとしても、魔法能力だけで欲しがる人がいるのは納得できる。


 でもそのために、リンナット教皇がどこまでするのか分からないんだよね……さっき断ったので諦めてくれたのか、もっと強硬手段に出るのか。


 ティモテ大司教を押さえるって言ってた時の顔、というよりも瞳の雰囲気が凄く怖かった。あの雰囲気だけで判断すると、無理やり何かをしてくる予感がしちゃうけど……。


「ひとまず護衛を増やして警戒態勢を敷こう。その上でまずは明日の話し合いだな。そこで話の行方がどうなるのかで今後が決まるだろう。とにかくアレンドール王国としては帰還の意思を曲げず、ティモテ大司教の言っていた神の意思には断固として反対だ。さらにレーナの教会への勧誘についても拒否する」


 ダスティンさんがまとめてくれた言葉に力をもらい、私は大きく頷いた。


「はい。その方針でよろしくお願いします。私のことを守ってくださり、本当にありがとうございます」


 そう言って頭を下げると、ダスティンさんには肩を慰めるように叩かれ、お養父様には優しく頭を撫でられた。そんな二人の優しさに泣きそうになる。


「それは当たり前のことだ」

「レーナは何も気にしなくていい。当たり前に守られているように。ただ、いざという時はレーナの力も貸して欲しい」


 お養父様のその言葉に、私はグッと拳を握りしめて頷いた。


「もちろんです!」


 もしもの時は、ルーちゃんに大活躍してもらおう。遠慮せずに武力を使う。


「武力行使する事態は考えたくないが、それも考慮に入れるよう皆に伝えておこう。非戦闘員をどう守るのかも話し合わなければな」

「そうですね。私は自分で自分を守ることもできるので、皆の安全にも騎士を割いてください」


 私の側近の中でもパメラには武力がないから、守る術を考えないと。レジーヌかヴァネッサのどちらかに、パメラに付いていてもらうのがいいかな。それともパメラにはずっと私の近くにいてもらって、一緒に守ってもらう?


 その方がいいかも。それなら私もパメラを守れるから。


「どうやって全体を守るのか、采配が大切だな。ここはカディオ団長とも話し合わなければ」

「そうですね。ここに来てもらいますか?」

「そうしよう」


 それからはカディオ団長やシュゼットも共に話し合いをして、私たちが今いるのは敵城の中だというぐらい、油断なく警戒態勢を整えた。


 しかし騎士の数には限りがあり、下働きをしてくれている人たちも含めると、非戦闘員が結構多いのが不安だ。現状のメンバーで最適な態勢は整えたけど、どうしても物理的に手が届かない場所がある。


「明日の話し合いが平和に終わったらいいのですが……」

「それが一番だな。……そのためにも明日に関する作戦会議もしておこう」

「はい」


 そうして私たちはたくさんの話し合いをして、慌ただしく時間が過ぎていった。

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着いてから同じような話が続いているように感じています。
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