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転生少女は救世を望まれる〜平穏を目指した私は世界の重要人物だったようです〜  作者: 蒼井美紗
最終章 救世編

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270、祈りを捧げる

 リンナット教皇が宿泊所を後にして、その場にいるのがアレンドール王国の皆だけになったところで、ポツリとダスティンさんが呟いた。


「リンナット教皇はよく分からない方だな」

「ダスティン様もそう思いましたか? 本心が読めない感じですよね」


 小声でそう告げると、ダスティンさんは少し身を屈めて私と会話をしてくれる。


「今のところは問題なさそうだが、完全に警戒を解くべきではないだろう。まあ、ここにいる間はずっとそうしておくべきだが」

「そのつもりです。とりあえず……私が祈ってみて、どうなるのかですよね」

「ああ、その結果によって色々と変わるだろう。私もレーナの祈りによって何が起こるのか、少し興味がある」

「私もちょっと、何か起こるのかなって思ってます」


 正直なところ、何にも起こらない可能性の方が高いと思ってるけど、ここは異世界で私は実際に創造神様から加護を得ているのだ。


 大聖堂がどういう歴史から作られたのかよく分かってないけど、ここが特別な場所って可能性もある。


 一番いいのは創造神様が応えてくれて、ゲートの問題が解決して私はアレンドール王国に帰れることだ。そして一番最悪なのは私の祈りに意味はなくて、それなのに国に返してもらえないこと。


 あとは問題は解決したのに返してもらえないって可能性もあるけど、そっちはまだゲートの問題が解決してるだけマシだろう。


「楽しい観光だったって、数週間後には帰路に就いていたいですね……」

「それが理想だな」


 そこまで話したところでダスティンさんは姿勢を正すと、クレールさんに荷物に関する指示を出し始めた。そこで私もパメラたちに指示を出し、準備された部屋に向かった。



 シーヴォルディス聖国に着いて二日目の朝。思っていたよりも美味しい朝食を食べてから、私はさっそく貴族令嬢としての正装をして大聖堂に向かった。


 私はあくまでもアレンドール王国の貴族として来ているので、まずはその正装からだ。それでダメなら、祭司服を着て祈ることになっている。


「レーナ、堂々と祈りを捧げて来なさい」


 広い大聖堂には教会関係者がたくさん集まっているほか、お養父様やダスティンさん、さらにカディオ団長やシュゼットなどアレンドール王国の人たちも大勢が集まっていた。


 そんな中で私は、お養父様に背中を押される形で一人、神々の像の前に向かう。アレンドール王国にあった教会と同じように創造神様の像が一番上にあり、一つ下の段に四柱の女神様の像がある形だ。


 しかし大聖堂の神像は、かなり大きかった。近くで見上げたら首が痛くなるほどに大きい。


 そんな神様たちの像に向かった私は、深呼吸をしてから片膝をついて頭を下げた。


 ――創造神様。この声が届いているのならば、世界を危機に陥れているゲートの異常出現を止めて下さらないでしょうか。どうか、どうかお怒りをお鎮めください。そして私たちに平穏をお与えください。


 なんだかそれっぽいことを祈ってみたけど、特に何も起こらなかった。


 ――創造神様、声が聞こえたりしてませんか? もし聞こえてたら返答をいただきたいです。


 特に何も返ってこない。


 ――えっと、創造神様はなぜ私に加護を与えてくださったのですか?


 厳かな感じからラフな声掛けまで色々としてみるけど、特に創造神様の声が聞こえるとか、像が光るとか、何にもなかった。私の周りをふよふよ飛んでいるルーちゃんも、いつもと同じだ。


 あ、そうだ。


 私はルーちゃんを見て、もう一つ試していなかったことを思い出した。


 ――ルーちゃん、創造神様に私の声を届けることってできる? ゲートの異常出現を止めてくださいってお願いしたいの。


 そう伝えると、ルーちゃんはなんだか困ったように上下に揺れると、私のお願いを聞かなかったことにしたのか、それまでと変わらずにふよふよと飛んだ。


 これは……ルーちゃんでもできないってことだよね。やっぱりいくら神様から加護をもらえる世界だからって、こっちの声が届くわけがないんだよ。


 なんだかそう納得できてしまい、私は落胆した。私の声が届かないことへのショックというわけじゃなくて、直面している危機はこれからも続くということがショックなのだ。


 こうなると、こんなところで祈ってる場合じゃなくて、少しでも被害を抑えるためにルーちゃんと戦いに身を投じた方が良いかもしれない。


 ただ、さすがにあと何日かは祈らないと解放してもらえないだろう。それに何の手応えがなくても、もしかしたら創造神様が願いを聞き届けてくれて、ゲート問題が解決してたなんてことも――――いや、その可能性は限りなく低いか。


「レ、レーナ様っ、いかがでしょうか……!」


 もう祈るのにも飽きて一度顔を上げると、待ちきれない様子のティモテ大司教が声をかけてきた。


「特に手応えはありませんでした」


 私の返答に、大聖堂内には落胆の空気が満ちる。しかしまだ祈り始めたところだからか、すぐに雰囲気は戻った。


「まだこれからなのでしょう。それよりもレーナ様が祈られるお姿があまりにもお美しく神秘的で、この場に居合わせることができたこと、私の人生にとって最大の喜びであることは間違いありません!」


 ティモテ大司教はまだ私のことを強く敬ってくれているようだ。これで成果が出なかった時にどうなるのか……やっぱり怖いね。


「では、もう少し祈ります」

「かしこまりました!」

「よろしくお願いいたします」


 ティモテ大司教の後に声をかけてくれたリンナット教皇に感情の揺れは見て取れず、私はそれも怖いななんて思いながら、また視線を下げて神に祈った。

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