265、たくさん購入!
リオネルたちへのお土産は、私が中心となって選んだ。三人とも欲しいものはなんでも手に入るような立場なので難しかったけど、そこはフィーリングだ。
まずリオネルにはアレンドール王国では手に入らなそうな本と、さらにこの辺で人気らしい精霊を模した置物を選んでみた。
とはいえ精霊はぼんやりと光ってる丸い何か、としか私たちには見えないので、置物も丸い球体に色が塗ってあるだけだ。
なんでこれが人気なんだろうと首を傾げつつ、リオネルへのお土産にしてみた。部屋の窓際にでも飾れば……うん、多分室内が華やかになるよね。
そしてアリアンヌとエルヴィールへのお土産は、この辺りの伝統的な手法で染められた布や、髪飾りなどにした。やっぱり女の子は可愛いものだ。
ついでに例の精霊の置物も買ってみたけど、これは飾ってくれたらいいな、ぐらいに思ってる。ずっと部屋にあったら愛着が湧くかもしれないし。
「これで十分でしょうか」
私の言葉に、お養父様が苦笑しつつ頷いた。
「これだけあれば喜ぶだろう。一部、不思議な土産もあったように思うが……」
どう考えても精霊の置物についてだろう。
「あれはずっと見てるうちに可愛くなるやつです。多分」
日本でもなんでこのキャラが? っていう微妙なのが流行って、でも頻繁に目にしてるうちにだんだんと可愛く見えてきたりしてたよね。
うん、あの現象が起きるやつなんだよ、多分。
「そう……なのかは分からないが、レーナが選んでくれたものならば喜ぶだろう」
「喜んでもらえたら嬉しいです」
「購入するのも大変だったからな」
そう言って苦笑を浮かべたお養父様に、私は深く頷いてしまった。私の周りには普段からルーちゃんがいるけど、この世界はどこにでも精霊がいるのが普通だから、ルーちゃんの特別な色に気づかない人も多いのだ。
だから基本的には普通に過ごせて、長く滞在するようなところでは使用人たちがこっそりと通達してくれたりするんだけど、さっきの精霊の置物を売るお店では精霊にまつわるものを売るお店だからか、店員さんがすぐルーちゃんに気づいてしまった。
「拝まれるのには慣れません……」
「レーナはそこに少し慣れた方が良いのかもしれないな」
全く慣れられる気がしないけど、その通りなので、私は仕方ないと思いながら頷いた。
最初は衝撃や興奮、そして興味の対象って感じで騒がれるけど、創造神様の加護持ちとしてシーヴォルディス聖国に向かう途中だと伝えれば、だいたい拝まれるか、そこまでいかなくても明らかに線を引かれるのだ。
まあ線を引かれるのは、貴族だって思われてる場合もそこまで変わらないから、かなり慣れてきたけど。
「……頑張ります」
そうしてオードラン公爵家の皆にお土産を買ったところで、私はお養父様とは別れて、今度は家族にお土産を選ぶことにした。
家族向けのお土産はとにかく実用性があるもの一択なので、そこまで悩まない。ただその中でも他国のお土産なんだなと分かるものを入れていきたい。
「この布と、そっちの布も買おうかな」
「かしこまりました」
私の言葉にパメラがすぐにお金を払ってくれた。まずは家族全員に向けて使いやすい感じの布だ。デザインはアレンドール王国にないような感じのやつを選んだけど、布の質はごく一般的な、むしろ安めのやつにしている。
その方が皆が気後れせずに使ってくれるし、なんなら慣れてるから使いやすいらしいのだ。
あとは面白い形の調理器具とか、工具みたいなもの、さらに木皿や木製の小物入れも買っていく。そして日持ちする食料としてスパイス系もたくさん買った。
「こんなものかな」
「皆様、喜ばれそうですね」
私が選んだお土産を見て、ヴァネッサがそう言ってくれた。
「本当?」
「はい。レーナ様がご家族のことを考えて選ばれたのがよく分かります」
なんだかその言葉が凄く嬉しくて、私はにへっと頬を緩めてしまう。
「ありがとう」
気合が入って、さらにお土産選びを続行した。あとは友達へのお土産と、ロペス商会向けのお土産、それから自分が気に入ったものだ。
私はもう端からお店を巡って、途中からはいくら使ったかも考えないようにして、ひたすら買い物を楽しんだ。大金持ちみたいな買い方に途中で不安になって残高を確認するという庶民的なこともしつつ、ここはお金の使い所だとできる限り金額は考えないようにする。
大通りを行ったり来たりして、基本的には近くにいてくれたダスティンさんやお養父様とも話をしつつ、満足できるまでお土産を買い込んだ。
さすがにこれ以上はやめとこう。そう思ったところで店先の商品に向けていた視線を横にずらすと、すぐ近くにダスティンさんがいた。
お養父様は……少し先のお店で店員さんと話をしているみたいだ。
「さすがに買いすぎじゃないか?」
ダスティンさんからジト目で顔を覗き込まれるようにしてそう告げられ、私はそっと視線をずらす。
「えっと……私もそう思ってるんですけど、全部必要なんです。誰に対してのお土産か、全部言えますし」
「あの量を全てか。凄い交友関係だな」
「ありがたいことに、いろんな人と仲良くさせてもらってます」
私はスラム街、平民街、貴族街と住む場所を移っているから、特に知り合いが多いのだ。場所ごとに仲の良い人たちがいて、やっぱり全員にお土産は渡したかった。
もちろんエミリーたちにも渡すつもりで、布とかドライフルーツとか色々と買ってみている。
「自分のものは買ったのか?」
姿勢を正していつも通りの雰囲気に戻ったダスティンさんは、そんな質問を投げかけてきた。そこで私は自分用に買った、実は一番高かったものを紹介することにした。




