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転生少女は救世を望まれる〜平穏を目指した私は世界の重要人物だったようです〜  作者: 蒼井美紗
最終章 救世編

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263、美味しい昼食

 お昼ご飯を食べに来たカフェでおしゃれなメニューを覗き込み、まず決めたのはダスティンさんだ。


「私はリゾットにしよう」

 

 少しだけ頬が緩んでいるダスティンさんに、私の頬もつい緩んでしまう。ダスティンさんって、白米に似たラスタが結構好きなんだよね。私と気が合う部分だ。


 私は日本人時代にお米が大好きなタイプだったので、この世界にお米に似たものがあって良かったと心から思っている。

 パンがないのは全然気にならないけど、お米がないのはさすがに辛かったはずだ。


「リゾット良いですね。私は……ハルーツの胸肉を揚げたものと、ハーブラスタにしようと思います。ちょっと揚げ物をがっつり食べたい気分で」


 ハルーツの胸肉は鶏のもも肉みたいなやつなので、それを揚げた料理は唐揚げのような食感になっていることが多い。


 これが本当に美味しいのだ。味付けはソイだったら醤油味のまさに日本の唐揚げみたいになるし、ソルやハーブ系だったらちょっと個性的な唐揚げの味になる。


 どんな味かはその店ごとに決まるので、料理が運ばれてきてからのお楽しみだ。そしてハーブラスタっていうのは、ちょっとした混ぜご飯とか、ガーリックライスみたいなやつ。


 このハーブラスタも店ごとにこだわりの味があったりして、頼むのが楽しい。


「私は煮込み料理にしよう。この十種の野菜とハルーツのヒレ肉煮込みが良いな」

「あ、それ私も悩みました。美味しそうですよね」


 皆で楽しく頼む料理を決めたあたりで、会話を聞いていたかのようにちょうどよく店員さんが戻ってきてくれた。


 そこで注文して、少し待ち時間だ。


「他国に来ても、あまり食文化に違いはありませんね」


 もうここはアレンドール王国の外なんだけど、あまりそのことを実感できていなかった。


「そうだな。まだこの辺りでは気候もそこまで変わらないし、食文化に大きな違いはないだろう。しかしこの先は少しずつ育つ食材が変わり、スパイス料理などが増えてくるはずだ」


 ダスティンさんのその言葉に、これからの道中が少しだけ楽しみになる。スパイス料理と言えば、やっぱりカレーみたいなやつだよね。


 そのままカレーがなかったとしても、タンドリーチキンみたいなカレー味の何かがあると良いな。お腹も空いてるからか、想像すると食べたくなる。


「スパイス、たくさん買い込んで帰ります」

「そうだな。そうしよう」

「スパイスの味が落ちる前に帰らなければ」

 

 ダスティンさんもお養父様もすぐに帰るつもりでいてくれて、とても心強い存在だ。


 シーヴォルディス聖国には数日だけ滞在して、ちょっと観光して帰るのが理想なんだけど、どうなるのかな……。


 そんなことを考えていたら、さっそく頼んだ料理が運ばれてきた。


「わぁ、美味しそうです!」


 一番は私の唐揚げで、つい素で喜んでしまう。しかし店員さん以外の人がいない個室だからか、ダスティンさんにもお養父様にも咎められなかった。


 そこで私はもっと楽しくなり、唐揚げの匂いを仰ぐようにして嗅ぐ。


「凄く良い匂いがします……」


 唐揚げってこの匂いがまず最高だよね。なぜかこの香りは唐揚げにしか出せないのだ。私はそう思ってる。そして日本の唐揚げと同じような匂いだということは、これはソイで味つけられてるかな。


 ハーブラスタは旨みが強いタイプのハーブが使われているようで、ラスタからも食欲をそそる匂いが漂ってきていた。

 これは日本にあったものに例えるなら、コンソメで味付けしたお米って感じだ。


 とりあえず、凄く美味しいやつ。


 匂いだけでうっとりしていると、微妙な表情のダスティンさんに言われた。


「レーナ、そのような表情で待たれても罪悪感が生まれるだけだ。先に食べると良い」


 その言葉が嬉しくてお養父様にも視線を向けると、苦笑を浮かべたお養父様は頷いてくれる。


「先に食べなさい。冷めたらせっかくの食事が台無しだ」

「ありがとうございます! ではさっそく……」


 この旅ではお養父様に素を見せすぎている気がするけど、大丈夫かな。お養父様は私とダスティンさんが仲良いこともあんまり知らないはずだけど。


 そんな考えが頭をよぎりながらも、目の前の美味しそうな食事には抗えなかった。


 さっそく唐揚げをフォークとナイフで上品に切り分けて、待ちきれない気持ちで口に運んだ。するとサクッという食感の後にジュワッと肉汁が溢れ出てきて、信じられないほどに美味しい。


 その美味しさが残っているうちにスプーンを使ってハーブラスタを口に運ぶと、唐揚げの旨みとラスタの旨みが合わさって、口の中で革命が起きた。


「お、美味しいです……!」

「良かったな」

「レーナは美味しそうに食べるな」

「ダスティン様とお養父様も食べられた方が良いです。もしお腹に余裕があれば、ハルーツの胸肉揚げを追加してみてください」


 私がそんなことを言っていると、ダスティンさんのリゾットとお養父様の煮込み料理も運ばれてくる。


 その二つもとても美味しそうで、このカフェが当たりなのだと分かった。


 レジーヌとヴァネッサ、パメラも楽しんでくれてるかな。あとで何を食べたのか聞いてみよう。


「確かに美味いな」

「美味しい料理だ」

 

 それからも私たちは美味しい昼食を楽しみ、雑談にも花を咲かせた。お養父様が思っていた以上に楽しくて柔軟な人だと分かり、なんだか嬉しかった。

いつも読んでくださっている皆様、ありがとうございます。

以前に告知をしていました本作のコミックス1巻ですが、3/6に無事発売されました!


すでに読んでくださった方もいらっしゃると思いますが、まだの方はぜひお手に取ってみてください。

コミカライズ、めちゃくちゃおすすめです!!

(レーナが可愛くて、キャラたち全員が魅力的で、世界観がより広がります。そして食べ物がとっても美味しそうでお腹が空きます! また単行本にはおまけページもあり、そこでは図鑑のような感じで魔道具の説明などを描いてくださっていて、そこを読むだけでワクワクします……!)


コミックスもよろしくお願いいたします!


蒼井美紗

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― 新着の感想 ―
から揚げ美味しいですよね。ニンニクたっぷりのから揚げ食べた時は「これ、ケンタッキーフライドチキンより好きかもしれない」と思いました。チキンと言うより鶏肉って感じが日本っぽいかも。ただのから揚げでもマヨ…
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