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転生少女は救世を望まれる〜平穏を目指した私は世界の重要人物だったようです〜  作者: 蒼井美紗
最終章 救世編

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260、大きな街に到着!

 私が弾んだ声音でいつ頃次の街に着くのかと問いかけると、ダスティンさんは少しだけ考え込んでから答えてくれた。


「そうだな、昼過ぎには着くだろう。ただ道を直しながらになるからな。この先の街道の状況次第では、どうなるのか分からない」


 大雨の影響でボコボコになってしまった街道を、リューカ車が壊れそうなほど酷い部分だけ精霊魔法で直しながら進むらしいのだ。


 私が魔法を使う担当をやっても良かったけど、騎士さんたちはそうやって先に進む訓練も受けているらしく、今回は任せることに決めた。


「あまり問題なく、早めに着いてほしいですね。部屋でゆっくりしたいです」


 つい本音が漏れると、ダスティンさんと共に隣のクレールさんも大きく頷いてくれる。


「早くダスティン様に休息を取っていただかなくては」


 いつでもダスティンさん第一のクレールさんに苦笑しつつ、私は同意した。


「そうですね。長旅で疲れが溜まってるところに今回の事態なので、皆さん休むべきだと思います。確か次の街には二泊するんですよね?」

「ああ、そう決めた。リューカとノークにも休息は必要だからな」

「二泊できるのはかなり嬉しいです。それだけあれば観光をしたり、お土産を買ったりもできますよね」


 この先の街は幸運なことに、結構大きな街らしいのだ。多分お店も観光地もたくさんあると思うから、存分に楽しみたい。


 とにかく一番は、お土産の購入だ。皆にたくさん渡したいから、日持ちするものを端から買い込まないと。


 私がお土産の購入に闘志を燃やしていると、ダスティンさんの瞳も光った。


「魔道具開発のための素材も、色々と手に入るかもしれないな」

「はい。持ち運びは任せてください」


 異空間収納に入るものならいくらでも。そんな気持ちでグッと拳を握りしめると、ダスティンさんはニヤッと口角を上げて私の拳に自分の拳をぶつけた。


「レーナと知り合えて良かった」

「これからも色々とよろしくお願いしますね?」

 

 そんなやり取りをしつつ適当な雑談をしていると――ついに、街道の先に目的の街が見えてきた。昨日は誰もがあそこまで辿り着ければと、夢にまで見た街だ。


「確かに大きな街ですね!」

「これは期待できるな」

「普通に食べ歩きとかもしたいです。屋台とか出てますかね」

「出てるだろう。食事処もたくさんあるはずだ」

「王都にはない食事もたくさんあるでしょうか!」


 危機を乗り越えた先のご褒美のような時間に、テンションが上がってしまう。家族や友達、ロペス商会の皆などたくさんの人たちを思い浮かべて、皆に何を買おうかと悩んでいると、すぐに街の目の前まで来た。


 カディオ団長やシュゼットが手続きをしてくれて、すぐ中に入ることができる。


「おお、王都アレルほどじゃないとしても、かなり栄えてますね」


 この辺りの文化なのか三角屋根の建物がたくさん立ち並ぶ街中は、なんだかとても可愛らしくておしゃれだった。リューカ車の中から見回す限り、あまり屋台のようなものはなくて、普通に店舗のお店が多いみたいだ。


 カフェのようなお店にはテラス席もあって、たくさんの人たちが楽しい時間を過ごしている。


 また屋台はないけど、店先に布で屋根を作って店の外で商品を売ってる人たちもたくさんいて、そういうお店の商品はリューカ車の中からでもしっかり見ることができた。


「あ、あのお店で売ってる布、凄く可愛いです!」


 アレルでは珍しい可愛い布は、アリアンヌが特に喜びそうだ。それからメロディたちやギャスパー様も。


「お、あちらの店舗は魔物素材を扱っているのではないか? 皮肉にも昨今の情勢によって、素材が豊富にありそうだ」

「本当ですね」


 ゲートの出現率が上がったことによる唯一のメリットと言っていいのは、魔物素材が豊富に手に入ることだろう。


 ただその対価として大勢の人たちが危険に晒され命まで奪われていることは、全く喜べることじゃない。


 特に予告なしのゲートなんて、最悪以外の何者でもない存在だ。今まで通りにゲート出現の予兆があって、しっかりと対処をすれば被害は軽微で済み、魔物素材という大きなメリットが得られるという、このバランスに戻ってほしい。


 つい色々と考え込んでしまっていると、リューカ車が大きな宿の前に着いた。

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