表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生少女は救世を望まれる〜平穏を目指した私は世界の重要人物だったようです〜  作者: 蒼井美紗
最終章 救世編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

258/304

255、皆に伝達

 大雨の中を何往復も歩かせるのは可哀想だということで、シュゼットとカディオ団長はノークから降りた。外套を脱ぐわけにはいかないので、予備の防水布をノークに被せて準備をする。


 そして私の案内に従って新たに作った道を歩き出すと、キョロキョロと辺りを見回して信じられない面持ちを浮かべた。


「こんなところに、道はなかったはずだが……」

「本当にレーナの魔法は規格外だ」


 しかし新たな道への驚きは、巨木が見え始めるところまでだ。酷い雨によって視界が遮られ隠されていた巨木が、近づくにつれて少しずつ見えてくる。


 その全容が把握できたところで、二人は口をぽかんと開けたまま上を見上げて固まった。


「な、な、なんだこれ……」

「大きすぎる……」


 まだ雨が当たる場所で呆然と立ち尽くしている二人に、私は声をかける。


「二人とも、そんなところで立ち止まっていないで先を急ぎましょう。木の下に入れば雨に当たらないから」


 その声掛けにハッと我に返った二人は、どこか緊張しているような面持ちで巨木の下に足を踏み入れた。着ていた防水布で作られた外套のフードだけを脱ぎ、呆然と巨木を見つめ続ける。


「どう? このぐらいの広さがあれば、リューカ車も全部入れると思うんだけど……もし難しければ、作りがしっかりした車だけは外にいてもらうということもできるでしょう?」

 

 さっそく今後について相談するけど、二人からは反応がない。二人は巨木の大きさに呑まれそうになっていた。


「カディオ団長! シュゼット!」


 少し大きめの声で呼ぶと、やっと私と視線が絡まる。


「そこまで驚くことかしら。確かに私も感動したし、驚いたけど……」

「いや、これは驚くだろう。驚くどころじゃなく、神の座すところに来たのかと、そう思うほどの荘厳さを感じる」

「私もだ……あまりの力強さに、祈りたくなる」


 二人のそんな感想を聞いて、改めて少し後悔した。ごく一般的な信仰心を持っているだけの二人がここまで思うってことは、ティモテ大司教はどうなるのか。


 あまり考えたくなくて、思考を飛ばすように首を横に振った。


「これは神とは関係ない、ただの木よ。普通じゃあり得ないほどに大きいだけなの。ということで、ここで雨宿りするのはどう?」


 半ば強引に話を戻すと、二人はやっと実用的な思考を取り戻してくれる。


「そう、だな。ここに皆が入れば、大きな被害が発生する可能性はかなり下がるだろう。リューカやノークたちも弱らない」

「さっそく皆に伝言をして、リューカ車を動かしましょうか」

「ああ、まずはとにかく戻るか」


 そうしてカディオ団長とシュゼットの話し合いは早々に終わり、ここで雨宿りをすることが決まった。


 私が作った道を辿って隊列が止まっている場所に戻り、手分けしてリューカやノークを誘導することになる。


 カディオ団長がリューカを動かす担当で、シュゼットはノーク担当。そして私は皆に移動することを伝える担当だ。


 さっそく隊列の先頭から窓を叩き、雨が入らないように精霊魔法を使いながら手短に伝えていく。皆は移動するという話にかなり驚いていたけど、カディオ団長の決定だと伝えると、すぐに納得してくれた。


 パニックになっては困るので、このタイミングでは、まだ巨木のことを伝えていない。そこは実際に見てもらって、なるようになるだろうと諦めた。


 コンコンッ。


 次はお養父様のリューカ車だ。窓を叩くと同時に中にいたお養父様がギョッとした表情でこちらを見て、すぐに窓を開けてくれた。


「レーナ、何で外にいるんだ!? 早く中に入りなさい。風邪を引いてしまう」

「いえ、大丈夫です。私のことはルーちゃんの魔法が守ってくれてますから」


 そう伝えて両手を広げると、私が全く濡れてないことを確認したのか、お養父様は少し落ち着きを取り戻す。少し上げていた腰をストンと下ろすと、深呼吸をしてからまたこちらに視線を向けた。


「確かに大丈夫みたいだ。そこは安心したが……なぜ外にいるのだろうか。いくら魔法で雨が防げるとはいえ、この天気では危ないだろう」


 お養父様が心配してくれることを嬉しく思いながら、本題に入る。


「実は雨による被害を少しでも減らせないかと思って、精霊魔法での対策を考えたんです。その一環としてリューカ車が少し動くので報告に来ました。リューカ車が動いても驚かず、そのまま乗っていてもらえますか?」

「精霊魔法で対策……もちろんこのまま乗っているのは構わないが、こんな大雨に対策などできるものなのか?」


 ひたすら不思議そうなお養父様が巨木を見たらどんなに驚いてくれるのかと考え、私は少し楽しくなった。


「楽しみにしていてください」


 そう伝えてお養父様との会話を終わらせると、また次のリューカ車に向けて移動する。


 それからもひたすら声掛けを続け、ティモテ大司教のリューカ車は一切の返答を聞かずに要件だけを伝える形で何とか乗り切り、最後にダスティンさんのリューカ車に戻ってきた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ