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転生少女は救世を望まれる〜平穏を目指した私は世界の重要人物だったようです〜  作者: 蒼井美紗
最終章 救世編

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251、自然の脅威

「カディオ団長、シュゼット、大丈夫かしら。先ほど天候に問題があるとの話を聞いたのだけど」


 地図を覗き込みながら険しい表情で話し合いをしていたところに声を掛けると、二人はすぐにこちらを向いてくれた。

 

 そして代表して、眉尻を下げたシュゼットが説明してくれる。


「レーナか。多分……これから大雨になるんだ。団長の見立てでは早くて一刻後らしい」


 一刻後に大雨の予定。予想していたよりも状況は悪いようだ。私も二人と同じように眉間に皺を寄せてしまうと、カディオ団長がさらに詳しい説明をしてくれる。


「見立てより遅くとも、街に到着する前に天気が崩れるのはほぼ確実だろう。そこで別のルートや今夜泊まる街の変更を話し合っているのだが……ちょうどいい街や村がなく、ルートもあまり選択肢がない」


 ということは、大雨の中で街まで辿り着かないといけないってことか。現代日本で生きていた私の価値観だと、ただの雨で大袈裟じゃないのかと思っちゃうけど、この世界で雨は致命的だ。


 まず一番の問題は、ガソリンで走ってくれる自動車じゃなくて、リューカ車だということ。あまりにも雨が強いとリューカの体力消耗が激しくて、時にはリューカが動けなくなったりするらしい。


 また車の作りも完璧じゃないから、雨漏りをしたりすると、一気に荷物がダメになる可能性もある。


 さらに道もコンクリートなどで綺麗に整備されてるわけじゃなくて、土を固めただけの道が多い。今私たちが通ってるのもそんな道で、雨が降ると一気に足場が悪くなる。


 そこを無理に進むと――最悪は車が壊れることもあるのだ。


「どのぐらいの雨が、いつまで降るのかしら」

「そこまで正確なことは分からないが……今までの経験から推測するに、日付が変わる頃までは大雨となるかもしれない。降り方も楽観視は全く出来ないだろう。最悪は前が見えないほどの雨になるはずだ」


 前が見えないほどって、あの時々発生する怖いレベルの大雨と同じぐらいかな。スラム街に住んでいた時は、その雨によって家の中が水浸しになることも頻発していた。


 この世界の雨って、明らかに日本より雨足が強いのだ。雨が降る日数は比較的少ない代わりに、降る時はとことん降る。その中でもたまにある酷い時は、まさに滝のような雨が半日以上も続いたりしていた。


「とりあえず、これからダスティン様とティモテ大司教にも相談して、方針を決めようと思う」


 シュゼットのその言葉に、私は不安を抱えながら頷く。


「私にもできることがあれば言ってね。ルーちゃんの魔法で役立てるかもしれないから」

「ありがとう。その時には声をかける」

「本当にありがたい。何かあれば力を貸してほしい」


 シュゼットとカディオ団長の二人に真剣な表情でお願いされ、私は気を引き締めた。


「はい。任せてください」


 そうして現状の危機を把握したところで、私はリューカ車へと戻った。この場にいても有益な意見を出せるわけじゃないし、現状ではルーちゃんの精霊魔法を使うような段階でもなさそうなので、早めに立ち去る方が良いのだ。


 ティモテ大司教を警戒しつつ足早にリューカ車に向かい、無事に乗り込むことができた。お養父様のところに行くのは、また次の機会だ。


「話し合いは順調かしら」

「どうでしょうか。問題なく街へ着けると良いのですが」


 ダスティンさんたちが戻ってくるまでと、一緒にいてくれているパメラ、レジーヌ、ヴァネッサと話をしていると、そんなに待たずダスティンさんたちが戻ってきた。


 パメラたちが車から降りて、ダスティンさんとクレールさんが乗り込む。


「今後についての話し合いはしましたか?」


 気になっていたのですぐに聞くと、ダスティンさんは衣服のズレを整えながら答えてくれた。


「ああ、先ほど話し合い、予定通りの道を早急に進むことと決まった。別ルートを進んだとしても雨から逃れられるとは限らないし、今は悩んでいる時間も惜しいからな」

「確かにそうですよね」


 良い感じの別ルートや近くの街、村がないなら、ここで悩んでいても仕方がない。少しでも目的の街に近づいた方が絶対に良いはずだ。


「雨が弱いと良いのだがな……」


 そう言って窓から空を見上げたダスティンさんに続き、私も改めて空を眺めた。透き通った青がどこまでも広がる綺麗な空を見ていると、これから大雨になるなんて信じられない。


 でもカディオ団長たちの予想なのだから、天気が崩れるのは決まりなのだろう。確かに天気は、さっきまで晴れていたのに急に雨ってこともよくあるものだ。


「リューカ車が問題なく進める程度なら、街まで予定通り行けますもんね」

「ああ、今はそれを祈ろう。そうだ、クレールは雨漏り対策もしておくように」

「かしこまりました」


 そうして話をしていると、すぐにリューカ車は動き出した。少しでも早く先に進もうという考えなのだろう。


 心なしかさっきまでよりも進むスピードが上がり、ガタッと激しめの揺れがたまに発生する。

 その揺れによって車内で何かをするというのは難しくなったため、私たちは不安定な荷物を抱えながら、口数少なく目的の街が見えるのを願った。

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