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転生少女は救世を望まれる〜平穏を目指した私は世界の重要人物だったようです〜  作者: 蒼井美紗
最終章 救世編

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246、学院の友達とロペス商会

 家族と離れでのんびりとした時間を過ごしてから三日後の昼間。私はオードラン公爵家の屋敷で出発準備に追われながらも、その合間を縫って応接室に向かった。


 応接室には、私が呼んだ人たちが順番に顔を出してくれる予定なのだ。出発日までとにかく時間がないということで、大聖堂訪問を直接伝えたい人たちに会いにいく時間が取れなかったため、今回はこの屋敷に呼ぶという方法を取った。


 パメラたちと一緒に応接室に入ると、まずそこにいたのはノルバンディス学院の友人たちだ。

 メロディにオレリア、そしてアンジェリーヌ、テオドールにアナンもいる。


「皆、今日は来てくれてありがとう」


 そう伝えると、まず口を開いたのはアンジェリーヌだ。


「別に構いませんわ。レーナ様がいらっしゃらなくとも、私はとても楽しく毎日を過ごしておりますもの」


 まだ何も言ってないのにそんな事実を強調してきたアンジェリーヌに、思わず苦笑を浮かべてしまう。


「そっか。寂しいと思ってくれているのね」

「なっ、そんなことは一言も言っておりませんわ!」


 通常運転のアンジェリーヌに安心しつつ、私は大切な事実をまず口にした。皆と話すときは、いつもよりも貴族令嬢らしさを意識する。


「今日皆を呼んだ理由は……知っているかしら」


 貴族家に属する皆なら知っているだろうと確認をすると、メロディが答えてくれる。


「はい。レーナ様が世界を救われるために、シーヴォルディス聖国の大聖堂へ赴かれると聞いております。とても大切なお勤めをされるレーナ様のこと、心から尊敬しております。ご無事にご帰還なさってください」


 メロディの言葉に頷いて、改めて自分からも告げた。


「ありがとう。私は創造神様の加護を持つ存在として、今回のお役目を任されたわ。……この国を代表して行ってきます。帰ってきたら、また今までのように仲良くしてくれたら嬉しいわ」


 その言葉に、オレリアがブンブンと首を縦に振る。


「もちろんです……! お待ちしております!」

「帰ってきたら、また一緒に遊んだりしましょうね!」


 続けてそう言ったのはテオドールだ。メロディとアンジェリーヌも私の望みを受け入れてくれて、最後に皆の視線がアナンに移った。


 アナンは同じ研究室の一員というだけで、他の皆とはあまり接点がないから居心地が悪そうだ。そんなアナンに、私は笑顔で伝える。


「アナンも、私が帰ってきたらまた一緒に魔道具研究をしましょう。ダスティン様も私に同行してくださるから、しばらくは一人になってしまうのが申し訳ないのだけれど、帰ってきた時にアナンの成果を聞くのを楽しみにしているわ」


 そう伝えたら、アナンの瞳が少し輝いたのが分かった。


「は、はい。頑張って研究しています」


 そうして皆と話をしたら、次に会いにきてくれた人たちと交代だ。本当はもっと長く話していたいけど、そんな時間はない。


 皆が応接室を出ていき入れ替わりで入ってきたのは、ロペス商会の皆だった。今回は私が望む人なら誰でも良いということで、貴族以外の人たちも来てくれているのだ。


 パメラたちにも少し部屋を出てもらって、私は貴族令嬢らしさは一旦脇に置く。


「皆さん、お久しぶりです!」


 嬉しくて前のめりになりながら声をかけると、まずはジャックさんが私の下に来てくれた。肩をポンっと軽く叩かれて、それだけでなんだか嬉しい。


「久しぶりだな。とは言っても、ここに商売に来るたび会ってる気がするが」

「確かにそうかも」


 そんな会話をしていると、ニナさんとポールさんも笑顔で声をかけてくれる。


「レーナちゃん、元気そうで何よりだわ!」

「そうだね、良かったよ。しばらくこの街を離れると聞いて心配していたんだ」

「お二人も来てくれてありがとうございます!」


 まずは笑顔でそう伝えると、ニナさんは私のことをギュッと抱きしめてくれた。なんだか懐かしい抱擁に、自然と頬が緩む。


「遠くに行くのは確かに心配な面もあるんですが、準備をしているうちに前向きになれたというか、ちょっと開き直りました。最短で帰ってこようと思っています」


 本心からそう宣言すると、皆が笑ってくれた。


 確かにシーヴォルディス聖国に向かうのは心配な面もたくさんあるけど、たくさんの人たちが一緒に行ってくれるし、私にはルーちゃんもいるのだ。

 根拠はないけど、無事に帰って来れると思う。今ではそう信じることができている。


 そんなことを考えていたら、笑顔で見守ってくれていたギャスパー様が口を開いた。


「では、レーナに一つ頼み事をしても良いかな。レーナの状況によっては遠慮しようと思っていたのだけれど、元気そうだからね」

「もちろん構いませんが、頼みとはなんでしょうか」


 私ができることなんてあるのかな。そう思いながら続きの言葉を待っていると、ギャスパー様の頼みは実にらしいものだった。


「道中で寄る街、それからシーヴォルディス聖国にある特産品をぜひ買ってきてほしいんだ。もちろん無理ない程度で構わない。生鮮品も難しいだろうから、たとえば長期保存が可能な調味料のようなものだったり、他国の保存食、それから茶葉などもとても嬉しいな」


 珍しく瞳を輝かせているギャスパー様からの頼みに、私はやる気満々で頷いた。


「任せてくださいっ。できる限りいろんなものを買ってきますね」

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