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転生少女は救世を望まれる〜平穏を目指した私は世界の重要人物だったようです〜  作者: 蒼井美紗
最終章 救世編

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242、オードラン公爵家に報告

 王宮での話し合いが終わった私は、お養父様と一緒にオードラン公爵家の屋敷に戻った。

 そしてその日の夕食の席で、さっそくお養母様とリオネル、アリアンヌ、エルヴィールに向けて、大聖堂行きを伝えることにする。


 お養父様から話すこともできると提案されたけど、こうなった理由は私なので、私から話をすることにしたのだ。


「皆、レーナから話があるから、聞いてあげてほしい」


 お養父様がそう言ってきっかけを作ってくれたので、私は深呼吸をしてから、ゆっくりと口を開いた。


「本日陛下に謁見をして――そこで、大聖堂への訪問の要請を受けました。昨今の異常事態について、大陸会議でそのように決まったそうです。創造神様から加護をいただいた私が、大聖堂で祈ることで声が届くのではないかと」


 その言葉を聞いて、お養母様とリオネルはすぐに目を見開く。しかしアリアンヌとエルヴィールにはまだ難しかったのか、困惑している様子だ。


 しかし二人にはまた後で詳しく話をしようと考えて、話を先に進めた。


「私はアレンドール王国の貴族レーナ・オードランとして、シーヴォルディス聖国を訪問します。そのためお養父様が保護者として同行してくださることに決まり、王族からはダスティン様が、さらにカディオ団長などたくさんの騎士の方、他にも多くの方が同行してくれます。もちろん私の側近たちもです」


 パメラ、レジーヌ、ヴァネッサの三人には、先にこの事実を伝えてあり同行の了承を得ている。


 全く嫌がることなく、むしろ絶対に同行しますと言ってくれたのは凄く嬉しかった。


「また教会側からは、ティモテ大司教とその部下の方たちが同行してくださるそうです。そして出発日は五日後、滞在日数は現段階では不明です。しかし私の意思としては、大聖堂で祈るという役目を終えたら、すぐに帰還しようと思っています」


 祈りによって何かが起きても、何も起きなくても、数日のうちには帰りたいと思っている。そう上手くいくのかは分からないけど、大陸会議で決まったのは私が大聖堂で祈るということだけだ。役目を終えたら帰っても問題ないはず。


 そんなことを考えていたら、お養母様が口を開いた。


「レーナ、とても大変なお役目でしょうけれど、オードラン公爵家の娘として、胸を張ってシーヴォルディス聖国への訪問を成功させてきなさい。あなたもレーナのことを頼みましたよ。二人が不在時のこの家は、私にお任せください」


 全く不安を表に出さない強いお養母様の言葉に、私の中にあった不安が小さくなっていく。やっぱりお養母様は凄い人だ。とても優しくて見た目もふんわりしているのに、芯がしっかりとしている。


「……はい。しっかりと務めて参ります」

「私もこの国の貴族として恥ずかしくないよう、訪問を成功させてくる。不在時のことは任せたよ」


 私たちの返答にお養母様が頷いたところで、今度はリオネルが口を開いた。


「父上、レーナ、お気をつけていってらっしゃいませ。大変なお役目だと思いますが、二人が世界のために動かれること、誇りに思います。……レーナ、無理せず頑張って。そして帰ってきたら、また一緒に学院に通おう」

「うん。リオネル、ありがとう」


 リオネルのいつも通りの笑顔に、なぜか泣きたくなってくる。早くこの家に帰ってきたいな……そんなことを考えていたら、なんとなく話が飲み込めてきたらしいアリアンヌが、震える声で口を開いた。


「……しばらく、お姉様と会えなくなる、ということですか?」


 アリアンヌの泣きそうな表情に、私まで瞳が潤んでしまう。なんとか涙は溢さないようにと唇を噛み締めながら、アリアンヌに向けて頷いた。


「そうなるよ。でも絶対無事に帰ってくるし、あまり長期の不在にならないようにする」


 そう伝えたけど、アリアンヌの不安はなくならないようだ。


「危険は、ないのでしょうか。それにお父様まで……」

「アリアンヌ、大丈夫だ。騎士たちもたくさん付いているのだから」


 お養父様の言葉に何度も頷きながら、しかし涙は止まらないのかポロポロと泣き続けるアリアンヌに、私は席を立ってアリアンヌの下に向かった。

 

 ギュッと抱きしめると、泣いている声がダイレクトに伝わり、私までもらい泣きしてしまう。


「アリアンヌ、帰ってきたらまたお茶会をしようね。どんなお茶会にするか考えておいて。楽しみにしてるから」

「は……、はいっ、すっごく楽しい、お茶会を、考えておきますね……っ、だから、早く帰ってきてください」


 アリアンヌの言葉に何度も頷いていると、なんだか悲しいことが起きていると理解したらしいエルヴィールも泣き始める。


「毎日っ、会えなくなるの、嫌だ〜っ!」


 そう叫びながら泣くエルヴィールのことも抱きしめると、エルヴィールは子供らしく豪快に泣き始めた。そんなエルヴィールの背中を撫でながら、絶対に最速で帰って来ようと決意する。


「エルヴィールもアリアンヌと一緒に、楽しいお茶会を考えておいてね」

「っ……ひっく、うん……っ!」


 それからアリアンヌとエルヴィールが落ち着いたところで食事を再開し、エルヴィールは躊躇いなくお養父様の胸にも飛び込み、アリアンヌは少し恥ずかしそうにお養父様の近くに向かい、穏やかな家族の時間を過ごした。

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