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転生少女は救世を望まれる〜平穏を目指した私は世界の重要人物だったようです〜  作者: 蒼井美紗
2章 貴族編

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226、ギャップ萌え大作戦

 しばらくシャツ選びを進めていると、エルヴィールが選んだ胸元にフリルがたくさんついたシャツが意外と赤いジャケットに合っていて、シャツはそれに決定となった。


 この三つで基本の服装は決定となり、あとは細かい部分としてタイやブローチ、カフスなどを選んでいく。


 アリアンヌも楽しくなってきたようで、派手なデザインのやつを楽しそうに手にした。ちょっとだけ派手さを盛りすぎな気もするけど、このジャケットに負けないようなデザインの方が合う気もするし……意外と難しいね。


「お姉様、このカフスなんてどうでしょうか。光っていて目立ちます!」

「……確かにそうね。タイと柄の雰囲気を合わせるのもありかしら」

「これはどう! これ!」


 もうちょっと控えめ路線にしようかなと少し考えたところに、アリアンヌとエルヴィールから楽しげに声を掛けられ、とりあえずこのまま突っ走ろうと考え直した。


「靴はどれが良いと思う?」

「やっぱり光ってるやつ!」


 エルヴィールはキラキラしているものがお好みらしい。


「これかな」

「うん!」

「エルヴィール、足元まで光っていたら他の光っている場所が目立たないわ」


 アリアンヌがエルヴィールを嗜めて、少し落ち着いたやつを選ぶのかな……そう思ったけど、アリアンヌが手に取ったのは赤に近い色味の赤茶色の靴だった。


「ジャケットと色を合わせましょう」

「うーん、確かにその方がいいかも!」


 エルヴィールが賛成したので、靴は明るい色のものに決定だ。これで一通りのコーディネートは終わりかな。あとは細かい装飾品だ。


「指輪はこれなんかどう?」


 派手ではないけど太めの指輪を選ぶと、二人からの反応はかなり良い。さらに二人もそれぞれ好きな指輪を選び、イヤリング、ネックレスも選んだら終了だ。


「これで完成ね。後は化粧だけど……そこは着替えてもらってからにしましょうか。じゃあリオネル」


 ソファーに座って待機しているリオネルを振り返ると、リオネルは遠い目で虚空を見つめていた。なんだか全てを諦めたような表情だ。


 私たちだけで楽しんじゃって申し訳なかったかな……。最後の選択肢はリオネルに委ねよう。


「リオネル、私たちが選んだこの服や装飾品の中から、上手く選んで着替えてくれる?」


 そう声を掛けると、リオネルは瞳をパチクリと瞬かせた。


「全部身に付けなくて良いの?」

「ちょっと選びすぎた気もしてるから、調整をお願いしたいの。アリアンヌとエルヴィールも良いよね?」

「構わないです」

「もちろんいいよー!」


 私たちの言葉にリオネルは少し元気を取り戻すと、侍従を連れて部屋を出ていった。

 リオネルを見送ってから、私たちは化粧品選びだ。


 あの服装と装飾品ならかなり派手になるから、化粧も派手目の方が似合うと思う。唇には色が強い紅を引いて、目元の化粧を重点的に。


 リオネルは肌が綺麗だから、パウダーとかは要らない気もするけど……あの服装には少し載せた方が良いかな。


「二人とも、これはどっちが良いと思う?」

「私はこちらが良いと思います」

「わたしも!」


 三人で楽しく話し合った化粧の方向性が決まったところで、部屋のドアがノックされた。そしてリオネルの声が聞こえてくる。


「三人とも入るよ」

「入って良いよ」


 私が答えると侍従によって扉が開き、入ってきたリオネルは――いつもと全く違う雰囲気だった。


 ニコニコと穏やかで優しい優等生が、実は派手なバンドマンだったみたいな、そんなギャップがある。いつもの穏やかな笑顔じゃなくて、少しだけ不満げな表情なのも服装にドンピシャだ。


 一言で感想を表すと……


「カッコいい!」


 これに尽きた。いや、予想以上だ。ちょっと派手すぎて、服に着られる感じになるかと思ってた。やっぱり顔が良いと、どんな服装でも似合うのかな……。


「お兄様、素敵です!」

「カッコいいね!」


 二人も大絶賛みたいだ。選んだアクセサリーは最終的にほとんど付けてくれたみたいで、化粧はまだだけど髪型もカッコよく整えられていた。


 凄い、これは凄い。赤と黒の派手なセットアップみたいなやつ、リオネルにここまで似合うとは思わなかった。

 やっぱりプロの仕立て屋さんって凄いんだね。ちゃんとリオネル似合うよう仕立てられてるんだ。


「変じゃない? ちょっと違和感が凄いんだけど」

「全く変じゃないよ。今度それで学院に行ったら、一日中注目の的だと思う」

「……それ、悪い意味で注目されるんじゃなくて?」

「違う違う、カッコいいって方向で!」

「そっか……それなら、良かったよ」


 リオネルは私たちに褒められて照れたのか、僅かに頬を赤らめて視線を逸らした。イケイケな格好をした人が照れるとギャップが良い……!


 これ化粧なんてしない方が良いかもしれない。もうこれで完成してる。


 そう思った私は、さっそくリディに見てもらいたいと、窓の外を警戒していたリディに何気なく声をかけた。


「他の女性の意見も聞きましょう。そうね……リディ、少しこちらを向ける?」


 後ろ姿のリディにそう声をかけると、近くにいた別の兵士が警戒を一時的に代わり、リディはこちらを振り返ってくれた。

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