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転生少女は救世を望まれる〜平穏を目指した私は世界の重要人物だったようです〜  作者: 蒼井美紗
2章 貴族編

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121、謁見の準備

 侍女の仕事についてや謁見室の広さなど興味深い雑談をしていると、すぐに髪は整った。豪華で可愛らしくなった髪型に気分が上がる。


「こちらで問題ないでしょうか」

「はい。とても可愛いですね。ありがとうございます」

「レーナ様はとてもお可愛らしいので、楽しくお髪を整えさせていただきました。ではそろそろ早めの昼食が運ばれてきますので、テーブルに移動をお願いいたします」

「分かりました」


 席に着くと部屋のドアがノックされ、別の使用人がワゴンに載った昼食を運んできてくれた。ワゴンには絶対に一人では食べきれない量の料理が載っている。


 これを一人で食べる……ってことはないよね。


「では準備をさせていただきます」

「ありがとうございます。……あの、これが全て私の分ではないですよね?」

「全て召し上がられても構いませんが、残った分はメイドや従僕に下げ渡されますので、お気になさらずお好きな分だけお召し上がりください。レーナ様が選ばれた料理を、私がこちらに取り分けさせていただきます」

「そうなのですね」


 たくさんの料理が運ばれてきて、そこから好きな分だけ取り分けてもらって食べるみたいだ。貴族社会ではこれが一般的なのかな。

 

「料理のご説明は必要でしょうか?」

「……いえ、特に食べられない食材などはないので大丈夫です。ただ見た目で何か分からないものだけ聞いても良いでしょうか?」

「もちろんでございます」


 それからいくつか料理の説明を受けて、いろんな料理を少しずつお皿に取り分けてもらった。飲み物はここでもハク茶が主流のようで、淹れたてのハク茶にミルクとシュガを入れてもらう。


「ごゆっくりとお召し上がりください」


 綺麗に並べられたカトラリーを手に取って、まずは薄く焼かれたラスートが何枚も重ねられ、その間にソースが挟まっている料理にナイフを入れた。


 日本にあったものに例えると、ミルフィーユみたいなものだ。溢さないように口に運ぶと、パリパリとした食感と美味しいソースがマッチしていてとても美味しい。


 これはあれだね。生地がパリパリのラザニアみたいな感じだ。小さく刻まれたお肉も入っていて、見た目よりもお腹に溜まる。


「とても美味しいです」

「ありがとうございます。料理人も喜ぶでしょう」


 それからもいくつもの料理を口に運び、取り分けてもらったものを全て食べ終えたところでデザートを選ぶことになった。


「本日のデザートはこちらの三種類となっておりますが、いかがいたしますか?」

「では……そちらのベルリが載ったメーリクをいただきます。一つだけで大丈夫です」

「かしこまりました。蜜やフルーツソースをお掛けいたしますか?」

「蜜を少しだけお願いします」


 メーリクとは植物の花びらで、食感はほぼスポンジケーキだ。味は蜂蜜のような甘さがあり、それだけでもとても美味しい。

 しかし基本的にメーリクには、クリームと果物がおしゃれにトッピングされている。今回私が選んだものは、味付けのされていない純粋なクリームに、水色なのにいちごの味がするベルリが載せられているものだ。


 ちなみに蜜とは、ルーナンドという木の幹から取れる甘い樹液のこと。私はこの樹液の甘さが好きで、ダスティンさんとよく行っていたカフェでもいつも掛けてもらっていた。


「美味しいです」


 このメーリク、絶対に高いやつだ。メーリクは植物の花びらだからやはり当たり外れがあって、甘さや食感が顕著に変わる。

 これはとにかく滑らかな食感で、甘みに雑味が一切混じっていない。やっぱり王宮は違うね……。


 デザートを食べ終えハク茶を飲みきったところで、昼食は終わりとなった。この後を考えて少しにしておこうと思ってたのに、結局は美味しくてお腹いっぱい食べてしまった。


「レーナ様、この後は食後の休憩がてら謁見の作法についてお話しさせていただきます。それが終わりましたら、お化粧とお着替えとなりますので、よろしくお願いいたします」

「分かりました。こちらこそよろしくお願いします」


 それから謁見の作法を覚えることに時間を費やしながら準備は進んでいき、準備を終えた時には六の刻九時になっていた。


「レーナ様、そろそろ謁見の前室に向かっていただくお時間ですが、お手洗いに向かわれますか?」

「いえ、先ほど行ったので大丈夫です」

「かしこまりました。では前室までご案内させていただきます」


 部屋を出て案内されたのは、エントランスホールにあった巨大な階段を登った先の大きな扉……の隣にある部屋だ。あの大きな扉の先が謁見室となっているらしい。


「レーナ、来たのね」


 中に入るとすでに家族皆が揃っていて、三人とも緊張の面持ちでソファーに腰掛けていた。


「皆の方が早かったんだね。それにしても……ちゃんとした格好をすると違う人みたい」


 お母さんは髪の毛をアップにまとめて、タイト寄りのシンプルなドレスを身に纏っている。お父さんとお兄ちゃんは細身のパンツにシャツを着て、シンプルなジャケット姿だ。


 メインは私だからか派手じゃない格好だけど、それでも今まで見たことがない服装なので新鮮だ。


「それはこっちのセリフよ。レーナは凄いわね……」

「それ、めっちゃ高いんじゃないか?」

「さすが俺の娘……可愛すぎる」


 皆は私の服装を見て、驚きが隠せないようだ。自分でもあまりに豪華な格好に驚いたから、気持ちは凄く分かる。


 私の服装はこれでもかとレースが使われたボリュームのあるドレスで、髪の毛も侍女さんの手品のような手腕でふわふわなハーフアップになっている。


 薄らとされた化粧も相まって、鏡を見たときには自分だと思えなかった。レーナのこの綺麗すぎる顔が自分だって、やっと慣れてきてたのにね……。


「侍女さんが凄かったんだよ」

「確かにその髪型、どうやったのかしら?」

「良い匂いのする液体を付けて、櫛と紐で気づいたらこうなってたの。凄い技術だよね」

「やり方を教えて欲しいわね」


 それからも皆でお互いの見た目についての話をしていると、予定時間より少し早めに使用人の男性が私たちのことを呼びに来てくれた。

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