第74話 救出作戦
王宮へと続く秘密通路。
本来は緊急的状況下で王家の人間が脱出する為に作られた通路だが、俺達はその通路を逆行して外部から王宮へと潜り込む。
「なんでこの脱出路ってこんなに狭いのよ」
通路内は狭く。
天井も、大人が屈んで通る程度の高さしかない。
そのため全員屈んだ状態で進んでおり、その事にミルラスが文句を垂れた。
因みにニンジャマンだけは天井に張り付き、その状態でしゃがむという謎の行動をとっている。
魔法ではなく固有系のスキルを使っている様なので、俺にも真似できない芸当だ。
まあ、真似する気は全くないが。
「脱出後の為ね」
「脱出後?」
「ええ、脱出後にこの通路は仕掛けで崩壊させる事が出来る様になっているのよ。後を追えない様に。でも、大きな通路を崩落させたらその痕跡が地上に出てしまうでしょ。だからそれを防ぐ為に最小限のサイズにされているのよ」
部分崩壊だと魔法で追跡されやすい。
だから全体崩壊をさせた上で、追跡困難な様に作られている様だ。
脱出路とかは考えてなかったが……
ローラの言葉に成程と思いつつ、俺はコーガス侯爵家の屋敷にそのギミックを取り入れる事を検討する。
基本的に俺が見守っている間は問題ないが、俺だって永遠に生きられる訳じゃないからな――多分。
後々の事を考えたら、その手の物を用意しておいて罰は当たらないだろう。
しかもうちには製造チートの大河もいるので、より完璧な完成度の脱出路を構築してくれるはず。
「着いたわ」
秘密通路を抜け、王宮へと辿り着く。
出入り口に見張りなどはない。
え?
王家の秘密通路なら、他の王子達も知っているんじゃないのか?
その点は問題ない。
暗殺された公王は、第一王子や第二王子達にはその場所の事を伝えていないからだ。
恐らく早い段階から、二人の事を警戒していたんだろう。
そして病気で先が長くないと分かった時――聖女タケコに依頼をする前――通路の事を信頼できる腹心のエルント伯爵にだけ伝えた。
何かあった際、そこから第三王子を逃がせる様にと。
だから潜入は簡単だった。
まあ本番はここからな訳だが。
「ここからは私はあんまり役に立てないから……お願いね」
ローラは純粋な魔法使いだ。
下手に魔法を使えば、即座に潜入がバレる事になってしまう。
そのため魔法の使えない彼女の潜入時の仕事は、もっぱら道案内となる。
「兎に角、王子の場所まではバレねぇようにいかねぇとな」
……そう、最低でも第三王子確保までは見つかる訳にはいかない。
確保さえできてしまえば、この面子の実力なら最悪強行突破で王宮から抜け出す事も可能だ――まあそうなったら、その後の追跡を躱すのが大変になるが。
だがその前に侵入に感づかれ、相手側に第三王子を押さえられると――タイミング的に目的は明らかなので即バレる事だろう――力押しではどうにもできなくなってしまう。
「そこは信頼して貰っていいで御座るよ。にんにん」
隠密のプロを名乗るニンジャマンが自信ありげに胸を叩く。
「ええ、期待してるわ」
この作戦の肝は間違いなくニンジャマンだ。
というか、彼女の力量あってこその救出作戦と言っても過言ではない。
普通なら王宮に忍び込んで、隠密に第三王子の元へ辿り着くなんて無理ゲーに近いからな。
ま、俺なら話は変わって来るが……
「では、任務スタートで御座るよ」
ニンジャマンが先陣を切って、秘密通路の出口となっている小部屋から音一つ立てず出ていく。
俺達もすぐその後に続いて行動する。
「完璧だな」
ニンジャマンの仕事ぶりは大したものだった。
まあそれでも、道中どうしても制圧しなければならない場面もあったが、それを容易く行えるだけの実力が青の勇者一行にはあったので問題なく進んで行く。
「……」
拍子抜けする程あっさりと、俺達は捕らえられた第三王子の元へと辿り着いた訳だが……その事に喜びを見せるメンバーはいなかった。
何故なら見つけた王子には酷い拷問の跡があり、虫の息だったからだ。
まあ趣味でやったとは思えないので、おそらく何らか情報を引き出そうとしたんだろう。
にしても、子供相手に容赦のない奴らである。
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