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第68話 そんな理由で……

「お前が暗殺者を雇い、先代コーガス侯爵夫妻を殺したのか?」


「何故そんな事を聞くんだ?」


「お前は黙って質問に答えればいい」


「ぬ……分かった。私は暗殺者など雇っておらん。そもそも奴らは病死だろうに」


『前半は事実で、後半は出まかせだな』


どうやらコーダン伯爵は、直接の犯人ではない様である。

とは言え、暗殺に関わっているのは確かだ。


「暗殺は確定している。容疑者に心当たりがあるならその名を言え」


次に俺は犯人について質問する。

関わってたなら、当然知っているはず。


「知らん!もし本当に暗殺だとしても、私は何もかかわっておらんのだぞ。容疑者など知る訳がない!」


『嘘だ』


「俺は何度も同じ質問をするつもりはない。正直に答えろ」


「だから知らんと――ぐげぇあ!?」


再び嘘を吐こうとしたので、素早く奴の右手の指を掴んでそのままへし折った。


拷問をする気はないが、素直に話さないのなら当然話は変わって来る。

人がせっかく穏やかに話を進めてやってると言うのに、本当に馬鹿な奴だ。


「がぁ……き、きさま……わ、私の指をよくも……」


伯爵はその場で蹲り、痛みに脂汗を流す。


「これからは嘘を吐く度に指を折る。指を全部折ったらその次は手足の関節だ。」


「ひ、ひぃ……」


「これ以上怪我をしたくなければ素直に答える事だなで?質問の答えは?」


「ぐ……テライル・ジャッカー、ノイガス・ギャロップ、ゲン・モンペ。恐らく……その三名の誰かだ」


『嘘は言っていない』


「テライル・ジャッカー、ノイガス・ギャロップ、ゲン・モンペか……」


その三名は知っている。

何故なら、コーガス侯爵家の属家――十二家の中にある名だったからだ。


なるほどな……


その名を聞き、俺は納得する。

以前の没落状態だったコーガス侯爵家は、暗殺をおこなうメリットなど皆無に等しかった。


だが十二家だけは。

そう、十二家だけにはその意味があったのだ。


――何故なら、先代夫妻は爵位を返上していようとしていたから。


そうなれば、彼らに与えられていた爵位も消滅してしまう。

彼らがその情報を得ていたならば、その中の誰かが先代夫妻を暗殺していてもおかしくはない。

爵位返上を阻止する為に。


「なぜコーガス侯爵家の情報を……暗殺に繋がる情報をその三名に渡した?」


動機は理解できた。

そして情報源は間違いなく伯爵――バーさん――だ。

他に吹聴してそこから耳に入ったとは考えにくいし、なにより、伯爵が容疑者として明確に名を上げているのだから間違いはないだろう。


だが分からないのは伯爵の方の動機だ。

十二家の人間に告げ口した所で、彼に大したメリットはないはず。


なのに何故わざわざ侯爵家を監視し、そしてその情報を彼らに流したのか。

それがどうしてもわからない。


本質的にがどうでもいい事なんだが、どうしてもそこが引っかかる……


「私は情報を渡してなど……ひっ!ま、まて!話す!!ちゃんと話すから!!」


あからさまに嘘を吐こうとしていたので伯爵の指を掴もうと手を伸ばすと、奴は悲鳴を上げ、逃げる様に手を庇って後ずさった。


「き、嫌いだったんだ!私はコーガス侯爵家が!!だから!!!」


「は?」


予想外の言葉に、俺は思わず変な声を出してしまう。

嘘を吐くにしたって、もう少し真面な――


『嘘は言っていない』


「……」


どうやら嘘ではない様だ。

つまりこいつは、嫌いという理由だけで十二家の三名にその情報を渡したって事か。


そんな理由……

そんな幼稚で下らない理由で、こいつは情報を流したのか……


――そしてその結果、先代夫妻が殺された。


子供達の未来を思って行動した二人。

それが伯爵に嫌われたという理由だけで殺されたのだ。


余りにも下らない理由から齎された最悪の結果に、腹が立ってしょうがない。


「お前の渡した情報が、状況的に二人の命を脅かす可能性がある事は分かっていた筈だ。それなのに、お前は好き嫌いでそんな真似をしたと言う訳か……」


俺は怒りに拳を固める。

聞くべき事はもう聞いた。

もはやこれ以上生かしておく理由もない。


このまま奴を――

拙作をお読みいただきありがとうございます。


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