表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

62/105

第61話 勇者だから

「はぁっ!」


アークが裂ぱくの気合と共に振るった青い剣が、赤黒いカエルの魔物――デビルフロッグを一刀両断する。

その剣技は超一流と言って差し支えない。

更に剣だけでなく、彼は魔法にも長けており、その強さは人間としての限界に近いレベルと言える程だ。


――そんな彼の二つ名は『青の勇者』。


アークは、ミドルズ公国にある青の英雄育成学園ブルー・ヒーローアカデミーの首席卒業者だった。

その学園の卒業試験として行われる試練――ステージクリア方式の物らしい――を、数十年ぶりに完全攻略した事で彼は『青の勇者』という称号を受けている。

そしてその称号がそのまま二つ名になったという訳だ。


因みに青の勇者というのは、建国時に活躍した青い剣と鎧を身に着けた騎士が由来となっている。


「おりゃあ!」


アークに並ぶ様にスレンダーな赤毛の少女――ミルラスが前に出て、デビルフロッグを蹴り飛ばす。

武器を持たず己の肉体だけで戦う彼女は、いわゆる武闘や武術と呼ばれるタイプの戦士だ。

その動きは素早く、また、見た目以上にパワーも強い。


ミルラスの強さはアークに比べるとどうしても見劣りしてしまうが、一般的に見れば、その戦闘能力は超一流と表されるレベルと言っていいだろう。


彼女はある事がきっかけでアークと勝負する事になり、そこで負けた事で彼に惚れ、以降行動を共にしている。

いわゆる押しかけ女房的ポジションだな。


「フレア!」


ローブを着た金髪の少女――ローラが魔法で火球を放ち、魔物を焼く。

彼女はアークと同じアカデミーの同級生で、その成績はアークに次ぐ二位だ。


単純に魔法だけなら彼女の方が上であり、このまま順調に成長して行けば、いずれは賢者クラスに至るのではないかと俺は睨んでいる。


で、本来高位貴族の子女であるローラは、卒業と同時に実家であるエルント伯爵家へと戻る筈だった。

だが学園生活の中で常に自分の上にいたアークを意識していた彼女は……まあ言うまでもないよな?

そんな訳で、負けっぱなしじゃいられないとか『つん』な事を言いつつ、家から出奔する形で彼に付いて来ている感じだ。


「やれやれ、ゆっくり休めやしないな。スターシュート!」


ぼやきながら光の魔法を放っているのは、タルクという男である。

他のメンバーは10代だが、彼だけは既に40近い歳だ。


――年齢の離れた彼がこの輪の中にいるのは、伯爵家の命令で家出状態にあるローラの護衛をする為である。


元々彼はアビーレ神聖教の武闘司祭――神官戦士と同等の、僧兵の様な物――だった訳だが、その怠惰な性格と、ギャンブル好きが祟って教会からは破門されてしまっていた。

だが腕は立つのでそこを見込まれ、エルント伯爵家に雇われ今の任務に就いているという訳だ。


因みに、ローラはその事実を知らない。


そんな四人に混ざり、俺もちょこちょこと魔物を牽制したり攻撃したりする。


「終わったな」


デビルフロッグの数は10匹以上いたが、ものの数分とかからず全滅してしまう。

まあ楽勝ではあったが、だからと言ってこの魔物が弱いのかというと、そういう訳ではない。


――ミドルズ公国の瘴気はエンデル王国より濃い傾向にあり、魔物のレベルは全体的に高い物となっている。


正確には、王国以外の国全般な訳だが。

まあその事は置いておこう。


そして今倒したデビルフロッグ共は、公国内でも高位に位置する魔物に分類される。

そんな魔物の集団を容易く処理出来たのは、それだけこの傭兵団――青の剣のレベルが高いという証である。


「まったく……少しは手伝ってくれていいだろうに」


木の上から眺めているだけで、一切手出ししなかったニンジャマンにタルクが恨めし気に目を向ける。


「拙者は討伐依頼を受けていないで御座る。それにあの程度の魔物、手伝わなくともそなたらなら敵ではなかったで御座ろう?にんにん」


ニンジャマンが正論で返す。


《《彼女》》は青の剣のメンバーではなく、闇蠍を追う為に狙われているアークに付きまとっているだけの……まあ言ってみればストーカーの様な物だ。

こそこそせず堂々と姿を現している点と、目的自体はアークではないので正確には違うが。


あ、因みにニンジャマンは俺の分身じゃないぞ。


え?

嘘つけ?


いやほんと。

俺もあいつがこのパーティーに近づいて来た時には、普通にびっくりしたし。


名前が名前だし、最初は転生者かと思ったんだが……調べてみたところ、アイツは俺より以前にこの世界に転生していた日本人の子孫だという事が判明した。


どうやら神は、定期的に転生者をこの世界に送り込んでいる様だ。


因みに見た目はゴツめの男だが、実際は細身の女性だったりする。

姿形は先祖から受け継いでいる力の一つ、変容術という特殊なスキルで変えているっぽい。


戦闘能力の方は、アークと同じぐらいだと思って貰えばいいだろう。

一般人としては糞強いが、転生者目線で言うならそこそこって感じだな。


調べたところ転生者――ニンジャマンの祖先はかなり強かったらしいので、どうやら子孫にはチート能力が完全に受け継がれたりはしない様である。

ま、現地人の血が混じる訳だから、当然と言えば当然ではあるのかもしれないが。


あ、因みに俺は犬な。

正確には狼。

青の剣で飼われている狼のウルとして、彼らに同行している。


闇蠍の情報を得るために。


アーク達は闇蠍に狙われていたからな。

彼らの懐に入るのは、人間以外が適切だと判断したのさ。

それに狼なら、ふらっとどこかに行っても違和感ないだろ?


え?

狼なら服着てないんじゃないかって?


フルチンですが何か?


俺は全裸だろうと気にしない。

何故なら勇者だから。

拙作をお読みいただきありがとうございます。


『面白い。悪くない』と思われましたら、是非ともブックマークと評価の方をよろしくお願いします。


評価は少し下にスクロールした先にある星マークからになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
自作宣伝
スキル【幸運】無双~そのシーフ、ユニークスキルを信じて微妙ステータス幸運に一点張りする~
『現代ファンタジー』ユニークスキル【幸運】を覚醒したダンジョン探索者が、幸運頼りに頂上へと昇りつめる物語
天才ですが何か?~異世界に召喚された俺、クラスが勇者じゃないからハズレとして放逐されてしまう~だがやがて彼らは知る事になるだろう。逃がした魚が天に昇る龍であった事に
異世界に召喚されたがハズレクラスだったため異世界に放棄された主人公。本来なら言葉すらも通じない世界に放り出されれば絶望しかない。だが彼は天才だった。これは持ち前の超学習能力で勇者を越える存在へと昇りつめる天才の物語
無限増殖バグ始めました~ゲーム世界には運営が居ない様なので、本来ならアカウントがバンされる無限増殖でアイテム増やして最強を目指したいと思います~
気づいたらゲーム世界。運営がいるならと、接触するためにBAN確定バグを派手にするも通知来ず。しょうがない、もうこうなったらバグ利用してゲーム世界を堪能してやる。目指すはゲームじゃ手に入れられなかった最強装備だ!
― 新着の感想 ―
色んな意味で勇者なんですね!
バーちゃんの昔馴染みかな
男らしいな!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ