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334:魔力銃考察

 竜一は前方に出現した骸骨型のモンスターに向けて、召喚した銃の照準を定める。

 何発か発砲してみるが、案の定モンスターの眼前で展開したバリアによってあっさりと弾かれてしまう。


(ふむ。やはり物理攻撃――実弾を完全に弾くか……ならば)


 今度は赤い魔力を纏わせた状態で発砲する。今度はバリアを突き抜けて、骸骨の額に命中した。


(魔力を弾く効果はないようだな。魔力がバリアを突き破る事によって、実弾の通り道が出来た感じか)


 額に刺さった銃弾に纏わせた魔力が中の火薬諸共に爆発し、その頭部を木っ端微塵に吹き飛ばす。

 しかし、さすがはアンデッド系のモンスターというだけあり、単純に頭を吹き飛ばしただけでは終わらない。

 頭を失った状態でも普通に活動を続ける。ただし、破壊した場所が再生する程の力は無いようである。


(いわゆるアレか。核となる部分を壊さない限り、残った部位は動き続けるという……)


 現在、竜一が相手しているモンスターはスカルメイジと呼ばれる、アンデッドでありながら魔導師という存在。

 スカルと言う名が付いている通り、『頭蓋骨』の部分がこのモンスターをメイジたらしめているため、頭蓋骨を破壊すれば魔術の行使は出来ない。

 しかし、魔術云々とは別のアンデッドの根幹たる『核』は別の部分にあるため、残った部分は通常のアンデッドモンスターとして動く。


(課題の一つは破壊力だな。他の皆なら、こんな敵は一撃で完全に破壊し尽くせるだろう)


 竜一も決して破壊力を出せない訳ではない。ただしそれは、もっと大型の武器や地雷などの兵器を用いた場合に限られる。

 ダンジョンでそんな物を使えば地形ごと破壊してしまいかねないし、破壊力が大きくとも物理であれば先程のように通じない可能性も高い。

 銃のように軽く扱いつつ高破壊力を実現する。その手段の一つが、銃弾に『力』を込めて撃つ事であったが……。


(銃弾に力を纏わせて撃つか、銃身を利用して力そのものを弾として撃つか。使い分けが必要だな)


 先程の状況で言うなら、もし『力そのもの』を弾として撃っていた場合、命中してダメージを与える事は出来た。

 しかし、実弾を伴っての攻撃であれば、相手の体の中に銃弾を送り込む事が出来る。その銃弾は、仕込み次第でさらなる追撃となる。

 宿らせた魔力を利用して時間差で爆発を起こしたり、銃弾の中に入れた毒物を広げたりなど、色々と利用する事が出来る。


(待てよ。どうせ力そのものを放つというのなら、最初から魔術を形成して放てば……)


 早速思い付きを試す竜一。しかし、銃弾に纏わせた魔力を魔術へ変換しようとした瞬間、銃身が爆発した。


「ごあっ!?」


 銃を握っていた右手がボロボロとなり、腕の半ばまでが焦げたような状態になってしまう。

 しかし、瞬時に身体を循環させるように法力を巡らせて痛覚を遮断。その後、治癒のための力を流して徐々に状態を回復させていく。

 この法力の使い方、実は一流の神官でもそう簡単にできるような事ではなかったが、竜一自身にはその自覚が無かった。


 本来、法力を体内に巡らせて麻酔のように用いる使い方は非常に繊細な技術を要する。

 治療院など落ち着いた場で施術する時に使ったりするのが普通で、戦闘中とっさに痛覚を遮断するなどはとても出来たものではない。

 そのため、一般的な神官が法力麻酔を駆使しながら戦う竜一の姿を見てしまったら卒倒してしまってもおかしくない。


 竜一はその不死性を活かして、リチェルカーレによって痛めつけられ殺される事を繰り返す果てに本能レベルでこの技術を体得した。

 無意識下で『非常に繊細な技術』をこなせる領域に至っており、極論タンスの角に小指をぶつけたような時でもとっさに痛覚を遮断できる。

 傍から見たら、どんなにダメージを与えても顔一つ変える事無く向かってくる狂人である。相対している側からすれば、非常に怖い。


(俺は馬鹿か。銃弾なんてのは火薬の塊だ。それに炎を込めるなんてどうかしてる)


 竜一は思い至った。自分が過去に見た事があるマンガでは『魔法を込める専用の銃弾』に術を装填していた。

 となると、こちらの世界で新たに魔術に適応した銃を作り出す必要がある。思い出すのは、リチェルカーレがエリーティで見せてくれたもの。

 己の魔力が続く限り撃ち続けられるという仕様の魔力銃だ。だが、あの銃も『専用の銃弾』の使用までは想定していない。


 銃弾なしに魔力を弾代わりに撃てる銃は、魔力を攻撃に転化する事が苦手な者にとっては、気軽に攻撃に用いる事が出来る便利なものだ。

 しかし、銃弾の魔術を込める方式であれば時間差で使う事が出来る。合間合間で魔術を込めた銃弾を作っておけば、いざ戦闘中にすぐに使う事が出来る。

 さらにはその魔術が使えない他人でも使用する事が出来る。さらに言うならば、そもそも魔力を有してない者でも使う事が出来てしまう。


 そういう利便性から、竜一は『銃弾』を用いるタイプの魔力銃があった方が便利だと考えていた。

 一方で、リチェルカーレの作った魔力銃を発展させ、魔力そのものを撃つのではなく、魔術として完成したものを弾として撃つパターンも案としてあった。

 この場合、直接魔術を行使した方が早いのではないかと言われそうだが、銃に魔力の構築と収束をフォローしてもらえば杖の代わりに出来る。


(アイディアを練るのはいいが脱線し始めているな。何か俺自身の強化を考えないと……)

「きゃああぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーー!」


 考察を巡らせていると、通路の先から女性の悲鳴が聞こえてきた。

 竜一は角まで行ってそっと覗き込むと、そこにはモンスター達に囲まれた冒険者パーティが居た。

 既に地面に倒れ伏す者が二人、他には女性と、彼女に抱きかかえられるように倒れている男性の計四人。


(どうやら二人は既に手遅れのようだな……。抱えられている男も危ないな。残る女性は既に戦意喪失状態か)


 堂々と出て行って助けても良いかと思ったが、同時に後々が面倒だとも思ってしまった。

 竜一としてはこのまま下へ潜って修行と探索を続けたい。関われば、間違いなく外へ戻る事になるだろう。

 だからこそ、竜一は銃を使った。魔力を込めた弾を次々と放ち、女性を囲むモンスターを一掃。


(ついでに一つ、試してみるか――)


 竜一は力の質を変化させ、赤く光る魔力から緑の法力へと切り替え、今度は弾が装填されていない別の銃で、実弾を伴わない法力の塊を発射した。

 ターゲットは倒れている男の方。麻酔効果や治癒効果のある法力を分け与えたのだ。完全な治癒は出来ないが、少なくとも命に別状は無くなった事だろう。

 直に触れていた方が効果が高いとされているためか、竜一の力量では飛び道具となった法力に込められる治癒力はそこまで高くはない。


(よし、成功だな。実弾が伴っていたら男へのトドメになってしまう所だった)


 攻撃の際は副次効果を狙える実弾ありを基本とするが、状況に応じて実弾無しの魔力砲撃に切り替えていく。

 一方で支援に関しては相手に銃弾をぶち込む必要はないので、絶対に実弾が入った銃で行使してはいけないと己に言い聞かせる。

 戦闘中に慌てて取り違えてしまっては話にならない。竜一はこの機会に瞬時の切り替えも練習していく事にした。


 ・・・・・


 余談だが、竜一によって救援されたパーティの生存者は後に無事帰還する事が出来た。

 瀕死だった男性はそこそこの使い手だったらしく、油断さえしなければ女性一人守りながらの帰路は全く問題なかった。

 女性は神官であったため、容態が安定した後の治療は問題なく行う事が出来、以降も帰路をサポートした。


 他の二人は残念ながら手遅れであったが、後にパーティの生存者二人と捜索隊によって亡骸を再発見。地上へと連れ帰られた。

 神官はあの危機に陥った際に起きた救援を『神の思し召し』と考え、自分が生きる意味を考えるようになったのだが、それはまた別の話――

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