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異世界の流離人~俺が死んでも世界がそれを許さない~  作者: えいりずみあ
第八章:幾億光年の彼方、異世界の宇宙
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291:新たな大陸へ

 俺達はミネルヴァ様の力でコンゲリケットの海岸に降ろされた。

 さすがにシュヴィンが地上にまで身体を伸ばして直に俺達を下ろすのは騒ぎになりそうなので避けられた。

 行きは『魔導学院の実験』という事で誤魔化したらしいが、違う国ではそうもいかないだろうしな。


「さっきまでのは夢だったのかな……。なんか信じられないものを見たような気がする」

『主よ。理解できない範疇であったのは分かるが、現実から逃げるでない』

「うぅー。やっぱ本当にあった事なんだよねー。あまりにもぶっ飛び過ぎてて処理が追い付かないよ」

『我も驚いておるのだ。彼奴等の前では、この我をして豆粒以下ではないか……』


 ヴェルンカストはおそらく、全身が露出すればクサントスにも騎乗出来るであろう存在だ。

 そんな存在でも、並の惑星よりも巨大な生物、木星のようなガス惑星をも丸呑みする生物と比較すれば話にならない。

 ただ、必ずしもデカさと強さは比例しない。リチェルカーレが過去に一体倒した事があるらしいしな。


「俺達の世界の知識で良ければ、後で改めて『宇宙』について説明するよ」

「とりあえずこの地域の宿屋に行こうか。この先の行程についての話もしたいしね」


 リチェルカーレが背を向けて歩き出す。海岸から少し行ったところに町があるらしい。

 そう遠くない距離らしいので、俺達は連なるようにして歩きだした。徒歩での旅ってのもいいよな。



 ・・・・・



 近場の街にたどり着いたが、文化的にはあまり差異は無いらしく、ツェントラールの町と似たり寄ったりの造りだ。

 早々に宿屋を確保してまずは各々の部屋で休む。特に何か激しい運動をしていた訳ではないが、精神的な意味で色々とな……。

 俺もすぐベッドに大の字だ。少しばかり仮眠した後、食事を兼ねつつ今後の打ち合わせだ。


「……海岸沿いの町だけあって海の幸が美味いな」

「しっかりと味が付いているのに、素材そのものの風味が失われていないわ」


 食事の場で俺とハルは海産物を満喫する。スモークサーモンみたいな魚料理がなかなかにいい感じだ。

 その魚はスープにも使われており、他にも干した魚や甲殻類、貝類を用いた品も並んでいる。

 かと言って魚のみが並べられている訳ではなく、野菜や肉類もバランス良く揃っていてバリエーションに富んでいる。


「さて、これからの行程はこんな感じで行こうと思っているが、特にエレナ」


 リチェルカーレの背後の壁には地図が広げられており、皆食事しながらその地図に目線をやっている。

 地図のコンゲリケットを指し示すように光の矢印が浮かんでいるが、あれもリチェルカーレの魔術なんだろうか。

 唐突に名前を呼ばれたエレナは口に物を含んだ瞬間であったのか、頬を少し膨らませた状態で止まっている。


「あぁ、食事しながらでいいよ。とりあえず計画ではこういう感じでルートを予定しているんだが……」


 光の矢印が徐々に右へ進み始める。俺達の世界で言うノルウェーを横切り、スウェーデンを右上に進み、フィンランドを右下へ下る。

 ロシアの西端を通るようにしてそのままいくつかの国を抜け、ギリシャにあたる場所まで行ったら再び上へ進む。

 ドイツにあたる場所、イタリアにあたる場所を通りそのまま最西端……ポルトガルにあたる場所まで行く行程を描いた。


「……見ての通り、レリジオーネを通るよ?」


 俺達の世界で言うイタリアにあたる場所のある一点が赤く光る。そこがそのレリジオーネなのか。

 以前エレナの素性を聞いた時、補足としてミネルヴァ聖教の聖地である場所についても名前はを聞いていた。

 にしても、あの位置は……。やはり、世界最大の宗教と言う事で、聖地も俺の世界と同じなのか。


「かまいません。いずれは決着を付けねばならぬ事……ですが、私はそれを己の旅の終点としたくはありません」


 エレナはキリッとした表情で決意を語るが、口元に料理の欠片が付いているせいかいまいち締まらない。


「父との決着はあくまでも旅の通過点です。私はその後も竜一さんや皆さんと共に世界を巡りたい」


 嬉しい事を言ってくれるじゃないか。そういう事なら、その時は俺も全力で加勢させてもらうとしよう。

 おそらくは皆も同じ気持ちだろう。とは言え、リチェルカーレはこういう個人的な問題には干渉しないだろうな。

 あいつが出てきたら一人で全てを終わらせる事が出来る。だが、それでは何の解決にもならない。


 本人もそれをわかっているのだろう。今まで巡ってきた国の問題も、あくまでも現地の人間に手を貸す形だったしな。

 自分達自身で問題を解決できるようにならないと、いつまでも英雄に縋ってしまう情けない存在になってしまう。


「クラティアにも立ち寄って頂けるのは助かります。あの地には、かつて共に戦った仲間の生き残りが療養していますので、いつか行く機会があればと思っていました」


 レミアが地名を挙げると、それに反応して地図の一点が赤く光る。便利な地図だな……。

 位置的に言うならギリシャか。俺の世界では神々と縁の深い地だったが、この世界でもそうなんだろうか。

 そういや過去に当時の仲間を失ってるって言ったな。生き残りと再会できる機会は嬉しいだろうな。


「そう言えばあの地は『神の武具』が収められていたヴァルゴ神殿があるんだったね」

「えぇ、それもあって仲間達の墓もその地に作りました。あわせて墓参りをさせて頂いても?」

「当然構わないよ。その時にまた仲間達の話を聞かせてくれるかい?」


 コクリと頷くレミア。例え死別したとしても、仲間だった者はいつまでも仲間だからな。

 俺もそれを邪魔するような野暮はしない。現在の仲間として、俺もその仲間達に挨拶をさせてもらうよ。


「他の皆は気になってる所とか、行ってみたい所はあるかい?」

「私はアレマンにあるネグニロスへ行ってみたいです。世界的な刃物の町なんですよ」

「刃物だったら、ガリアの都市スレイトも有名だって授業で習いましたよ」

「それぞれの都市が属しているアレマンもガリアも隣り合う国だからね。ライバル心剥き出しで競ってるんだ」


 セリンとルーの会話に反応し、またも地図が反応する。光った地点は俺達の世界で言うドイツとフランス。

 ドイツと言えばゾーリンゲンの刃物が有名だし、フランスのティエールもソムリエナイフで有名だな。

 やはり大元となった星が地球だからなのか、色々な部分がリンクしているみたいだな。俺には予想しやすくて助かるが。


「実はアタシ達がさっきまで居た魔導国にも刃物の町があったんだよ。ドレーフェスって言うんだけど、あそこはあまり対外的に商売をしていなくてね」


 一大生産地でありながら、生産者のこだわりか地域密着型で地元の人向けにしか物を売っていないケースはある。

 小さな商店街などでたまに見る「なぜ潰れないんだ?」って閑古鳥が鳴いている店も、実は大口の場所に製品を卸していたりする。

 リチェルカーレの言うドレーフェスという都市は、魔導国御用達で直接国と取引をしているらしい。


「あ、そうだ。ちなみにこの辺は何という地方なんだ? アンゴロ地方みたいな呼び方ってあるんだろう?」

「この辺はピアカデア地方って言うんだ。結構色々な国が点在していて、少し前の時代は争いが非常に盛んだったよ」

「今ではミネルヴァ聖教などの影響もあって、国同士の争いは収まっているのですが……」


 そこでレミアはエレナの方へと目線をやる。ミネルヴァ聖教の話題を出した事で意識が向いたのだろう。


「表向きの戦争は収まってこそいますが、裏では権力者達による泥沼の争いが発生しています。目に見えないだけで、本質は変わっていません」


 エレナの話だと、教皇は権力欲に取り付かれていてかなりゲスい事をやっているらしいからな。

 そして、そんな教皇にすり寄って権力の甘い汁を享受しようとする者達も、同様の性質を持っているに違いない。

 これは下手したら、旅の過程でそういう奴らと手当たり次第ぶつかっていく羽目になるかもしれないな……。


 アンゴロ地方ではツェントラールを侵略しようとしているという理由で周りの国々と戦ってきた。

 これから巡る国々とは特に何の因縁も無いが、俺を含めた誰かに対して何かしらのラインを超えてきた時は戦うぞ。

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