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010:冒険者ギルドにて

 そこは、木の香りが漂う空間だった。建物を構成する木材に艶は無く、かなりの年季が窺える。

 外観からして洒落たペンションのような見た目であったが、内部はというと、これまたわかりやすい構造だった。

 銀行の如きいくつもの応対カウンターと、待機スペースと軽喫茶が合わさったような冒険者達の待機場所。

 そして、そこに腰を下ろして会話に花を咲かせる若き冒険者達。対照的にガハハと大声で騒ぐ、ガラの悪そうな男達。

 地球でそう言った創作物に触れていた俺からすれば、あまりにもテンプレート通りで嬉しくなってくる。


 と、なれば。次に起こるのは――


「おう兄ちゃん。綺麗所を連れてえぇ身分やな」


 はい来た。この手の流れだと、絶対にガラの悪い冒険者から因縁を付けられるんだ。

 特に今の俺はパッと見で可愛らしい少女を伴う身だ。端から見れば生意気と思われても仕方がないだろう。


「はいはい、彼への手出しは止めてもらおうか」


 だが、俺が何か答える前にリチェルカーレが空気の弾で冒険者を弾き飛ばしていた。

 ノーモーションの魔術に対し、冒険者の方も対応できなかったらしい。


「ぐ……っ。てめぇ、何をした……」

「「「リーダー!」」」


 仲間らしき者達が動こうとするが、その瞬間にリチェルカーレは指先を不届きな冒険者の額へと当てる。

 指先に目視できる程の魔力が集まるのを見て、駆け寄ろうとしていた者達の動きが止まった。

 俺はまだチカラが発現していないせいか気配を感じる事は無かったが、周りの冒険者達が震えている事からして相当な力が籠っているのだろう。


「い、一体何事ですか!?」


 カウンターの奥の方から、冒険者ギルドの職員と思われる女性が駆けつけてくる。

 肩下まで伸ばした茶色の髪と、決して小さくない胸がたわわに揺れ、正直そっちに目線が向いてしまう。


「……また貴方ですか、ガランさん」


 どうやらガランと言うのが、突っかかって来た冒険者の名前であるらしい。


「う、すまねえ……。見慣れねぇモンを見ると、ついな」


 曰く、ガランはいつも『見慣れない新人』に対して絡んで行って品定めをするのだそうだ。

 見た目こそガラが悪いから誤解されがちだが、決して暴力を振るう訳ではなく、ただ単に話をするだけとの事。

 だが、初めて対面する者がそんな事を知る由もなく、己の身に降りかかる危機を振り払おうとして先んじて仕掛けてしまう者も居るらしい。

 結果としてトラブルが大きくなってしまい、こうして職員が出張ってくる羽目になるのだそうだ。


「さすがに今回は突っかかる相手が悪いですよ。この方はツェントラール魔導研究室長のリチェルカーレさんですよ」

「なに!? 魔導研究室の……」


 ガランは知らなかったらしい。その驚きの言葉と共に、ギルド内に居た多くの者がこちらに目を向ける。


「あー……普段は王城の研究室に引きこもりっぱなしですもんね……。お顔を知らない方が多いのも仕方がないのかも」

「すまないね、アイリ。いきなり騒がせてしまって」

「いえいえ、こんなの日常茶飯事ですからー。それよりどうしたんです? こんな所に珍しいですね」




 リチェルカーレの知り合いらしきギルド職員・アイリさんの案内で、俺達はカウンターの一つへと案内される。


「冒険者登録ですか? 別にいいですけど、どういう風の吹き回しです?」

「彼のお供さ。彼が冒険者になるのなら、アタシも同じようになっておいた方が便利だろうと思ってね」

「基本引きこもりの貴方がわざわざ外へ出る……。もしかして貴方、この方に……?」


 ニヤニヤしながらリチェルカーレに問うアイリさん。


「あぁ、アタシにとっては新たな生き甲斐とも言える大事な存在さ」


 しかし、リチェルカーレの方は臆面もなくそう言い放つ。


「微塵もぶれる事無くそう言い切りますか。あーうらやましい事で……」


 アイリさんが不貞腐れた。いや、リチェルカーレが言ったのは『知的探求心の対象として』だと思うぞ。

 異邦人である俺は、ル・マリオンの住人とは違って『未知の塊』なんだからな……。


「まぁ、気を取り直して……と。早速ですが、この書類に記入して頂きます。とは言っても、まずは名前だけですが」


 早速書類に記入を……って、俺はこの世界の文字を読めるが、書く事は出来るんだろうか?

 そんな不安を他所に、ペンを取り紙に向き合うと、その瞬間に文字の書き方を理解した。

 これもミネルヴァ様によるサービスだろうか。言語学習の手間が省けるのは非常にありがたい。


「そう言えばリューイチ、文字の記入は大丈夫かい?」

「それに関しては問題ないみたいだ。不思議とペンを取った瞬間に書き方が分かった」


 とりあえず、この世界の文字で書類に俺の名前を書いていく。


「オサカベ・リューイチ……ですか。変わった名前ですね。もしかして『和国』出身の方ですか?」

「……和国?」

「違うのですか?」

「すまん。そもそも、その和国という国の事がが分からない」


 アイリによると、ル・マリオンにはそういう名前の小さな島国が存在するらしい。


「私、フルネームはアイリ・フローラルと言って、アイリが名前、フローラルが苗字なのですが、和国は逆なのです。あと、名前の語感が独特で、リューイチさんの名前は何となく『それっぽい』感じがして……」

「試しに、和国の人物で知っている名前を何人か言ってもらっていいか?」

「わかりました。例えばフジイガワ・ゴンザブロウ、ハマダ・ジロー、オダ・ノブナガ……と言った感じでしょうか」

「おいちょっと待て。最後……なんて?」

「オダ・ノブナガ……ですか? もしかしてリューイチさんのお知り合いとか?」

「いや、知り合いという訳ではないんだが、聞き覚えが……な」


 まさか本人じゃないだろうな。召喚されるのが『いつの時代から』とかは聞いていないし、その可能性もあり得るぞ……。


「ちなみにそのオダさんって人、今も生きてます?」

「今は和国に籠っていると聞きますよ。あの国は現在凄まじい異常気象に包まれていて中の状況が確認できない状態なので、正確には分かりかねますが」


 気になる。気になるぞ。いつかは行ってみたいな、和国。そのためには凄まじい異常気象とやらをどうにかしなきゃならないっぽいが。

 響きからして、異世界モノにありがちな『何故か存在する日本っぽい雰囲気の国』のような気がする。俺より先に来た日本人が興した国なのかもしれない。


「リューイチさん、リチェルカーレさん、双方とも書類の方は問題ありません。ありがとうございます」


 そう言って書類を奥のデスクに置くと、また別の書類を手元の引き出しから取り出した。


「リューイチさんはまだチカラを発現させていないとの事ですが、早速資質判断を行いますか?」


 お、なんかそれらしい事が始まりそうだ。もちろん行うに決まってる。俺は全力で頷くのだった。




 ・・・・・・・・・・




 連れてこられたのは中庭だった。


「リューイチさんには、まずこれを見て頂きます」


 アイリさんが提示してきたのは、俺達の世界で言うクレジットカードくらいの大きさのカードだった。

 どうやらこれが、冒険者ギルドに登録したら貰えるという『ギルドカード』らしい。


 表面には持ち主の名前とギルドの名前が記され、他はギルドのシンボルマークが描かれているだけのシンプルなデザインだ。

 銀色のプレートでカードが作られているためか、日の光が反射してまぶしいぞ……。


「では、順番に説明をさせて頂きますね。まずは対象者の名前です。このギルドカードは身分証明書にもなりますので、当然ですね。続いてギルド名はギルドカードを発行した支部が記されます。とは言え、当然ながらカード自体はどの支部でも有効です。全世界に通じるのがウリですから」


 ドヤァと胸を張るアイリさん。ちなみにシンボルマークはここのギルド単体のものではなく、全冒険者ギルドを統括する『冒険者ギルド協会』のマークであるらしい。


「カードの色や材質はランクによって異なります。Aランクが金のプレート、Bランクが銀のプレート、Cランクが銅のプレート、Dランクが青色の金属板、Eランクが白の金属板と言った感じですね」


 最初はEランクから始まるらしい。冒険者として駆け出しで真っ白という事で、プレートの色が白に決まったらしい。

 Dランクはまだまだ青いという意味合いからで、それ以降は銅、銀、金とランクアップしていくようだ。次元の異なる世界においても金銀銅の概念は一緒なのか……。


「もしかしたらですけど、Aランクの上にSランクとかって……あります?」

「おぉ、なかなか鋭い質問ですね。Sランクはありますよ。ただし、このランクに至った冒険者は両手の指より少し多いくらいしか居ないですね」


 曰く、国を救うレベルの活躍を何度もする必要があるくらいにはハードルが高く、本来なら一人では討伐不可能とされる程の強敵を単身で打ち倒せる程の規格外の戦闘能力が必要だとか。

 そんな凄まじいSランクの冒険者には、希少金属オリハルコンで作られたプレートが与えられるという。ル・マリオンにもオルハルコンが存在するんだな……。なら、アダマンタイトやミスリルとかもあるんだろうか。


「では、力を発現させるにあたって、軽く説明をさせて頂きますね」


 曰く、力を使うには『トランス』と呼ばれる意識を朦朧とさせる魔術を施した上で、催眠状態にして対象者の精神を誘導し、内側に眠る力を呼び起こす必要がある。

 このプロセスは万人に等しく定められたものらしく、自身の中に眠っている力を取り出すには、自身でその力を見つけ出してつかみ取らねばならない。

 ただし、自分自身で力をつかみ取る事は出来ても、力が眠っている領域へ至る事は出来ない。最初は必ず第三者による導きが必要なのだ。これは神が施したセーフティだと言われている。

 誰かの立会いの下で力の発現を行い、認知させる事で、孤立した力を作らない。ミネルヴァ様は誰にも知られぬ所で勝手に力を生み出せないようにしたんだな。


「けど、力の発現に立ち会った者を始末すれば、自身の力を秘密に出来るんじゃ……」

「悲しい事ですが、確かにそういう例もありますね。ですが、立会人を手にかけた者の目には『罪の印』が刻まれるからすぐわかります」


 それも神が施したセーフティの一つらしい。立ち会った者を殺した時点で危険人物認定されてしまうから、以降はもう日の当たる所を歩けない。

 野盗などの犯罪者を捕まえると、力を使える者達の中に『罪の印』が刻まれた者が混じっているのはよくある事らしい。

 この『罪の印』は魂そのものに刻み込まれるものであるらしく、目玉を抉り出しても、今度は抉り出した部分に刺青の如く現れるという。



 人によって資質判断を行う時期は異なるらしいが、裕福な家庭の場合は早く、もう子供の頃にやってしまうという。

 幼くして資質を知った子供達は、その後それぞれの資質にあった専門の育成学校に進む事が多い。やはり学ぶのが早い方が伸びしろもあるからだ。

 学校側も学校側で、元々資質ある子供達ばかりではなく、入学試験と称してその場で資質判断をするなど才能の発掘を試みている。


 多くの者達は資質判断とは無縁のまま大人になるそうだが、近年では一般の教育機関で資質判断を行う所もあるらしい。

 専門学校程徹底してはいないものの、若いうちに力に目覚め、使いこなせるようになれば将来の選択肢が広がるという考え方からだ。

 希望次第では資質判断を保留できる。だが、子供達のほとんどは『力』というものに憧れ、喜んで資質判断をするそうだ。


 力に目覚めないまま大人になった者達は、そのまま人生を終えるか、何らかの機関で資質判断をしてもらう。

 異邦人としていきなりいい年齢でやってきた俺もそんな大人達と同じ扱いだ。ここで言う『何らかの機関』は、俺の場合はギルドって訳だ。

 他にも資質判断をしてくれる機関はあるらしいが、冒険者登録と身分証明を兼ねて一気にできるのはここしかないからな。




「では、そこに腰を下ろして目を閉じてください。自身の中に眠る力と向き合って頂きます」


 いよいよ資質判断が始まる。座り方はどうとでも良いらしいので、あぐらをかいてみた。

 目を閉じると、アイリさんが説明通り『トランス』という魔術を唱える。その直後、何だか頭がぼんやりとしてきて……


「リューイチさん。貴方の中には力が眠っています。内に眠っている力を呼び起こすのです……」

「力、俺の中に眠っている……力」

「前へと出て戦うための力、闘気。後ろから皆を助け支えるための力、魔力。あるいは……」

「闘気……魔力……」


 気が付けば、俺は暗闇へと沈んで行っていた。

 ミネルヴァ様の白い空間とは逆に、全く何も見えない世界。

 これが自分の『内』とでも言うのだろうか。


「闘気、魔力……か。どんな力だっていい、俺にもそんな力があるのなら、応えてくれ!」


 すると、待っていましたとばかりに闇の底で大きな輝きが生まれる。

 なんとなくわかる。これが俺の力……。俺はその力のもとへたどり着くべく、無意識に沈む速度を上げていった。

 やがて輝きの眼前に降り立った俺は、両手でガッシリとその大きな輝きをつかみ取った。


 ――その瞬間、世界が真っ白になった。




「……!!」


 目を開くと、眼前には驚愕しているアイリさんが映った。


「こ、これは一体どういう事でしょう……?」

「どういう事です?」

「眠っている力があったのは事実なのですが、それが何か分からないんです」


 アイリさんは手に持っていた水晶玉のような物体を見せてくれる。


「これは目覚めた力の質によって異なる色の輝きを放つ魔術道具なのですが、こんないくつもの色が混ざり合ったような不気味な輝きは初めてで……」


 確かに不気味だな。まるでウ○トラQのタイトルロゴが表示される時のエフェクトみたいな……。


「闘気は黄色、魔力は赤色、法力は緑色が発現するのですが……むむむ。発現者が少ないとされる珍しい力なのでしょうか」

「珍しい力であっても発現する色は単色だったハズだよ。この様々な色が混ざり合ったような輝きは、おそらくだけど『原初の力』そのものじゃないかい?」


 と、そこで横から水晶玉を覗き込んでくるリチェルカーレ。


「原初の力そのもの……そんな事が?」

「力は人々の中に眠る性質に応じて発現の仕方を変えると言われている。だが、逆に変わる事無くそのまま発現する性質の者だって居るのかもしれない。まぁとにかくやってみればわかるさ」

「そう……ですね。リューイチさん、自身の内に『力』の存在を感じる事は出来ていますか?」


 アイリさんに言われて気付いた。確かに、何か滾るようなものが自分の中に満ちているのが解る。

 それは全身を流れる血液と同じように各所へ行き渡り、今まさに俺と一体化しているのだと感じられた。


「では、その力をパンチを打つつもりで拳に集めてみてください」


 右拳に目をやりつつ、意識してそこへ力を集めるように念じる。

 すると、うっすらと黄色い光が拳を覆いはじめ、ついにはオーラとなって発現した。


「……黄色い光、間違いなく闘気が発現していますね」


 俺の拳と同じように、水晶玉も黄色い輝きを放っている。


「試しに、この地面の土に拳を叩き付けてみてください」


 言う通りに、勢い良く右拳を地面に叩き付けてみる。


「ぶほっ!」


 何かを叩き付けたような音と共に、勢い良く舞った土が自身の顔面を直撃した。

 拳と共に顔も下げていたからモロにかぶってしまった……。


「な、なんだこりゃ」

「それが、闘気によって身体能力が向上した証です。普通だったら拳が怪我していた所ですよ」

「おぉそうだ。怪我と言えば……」


 リチェルカーレが俺の腕に指を走らせると、その部分が赤い筋となって裂け――


「痛ぇ!?」

「せっかくだから法力も使えるか試してみないとね。今傷を付けた場所を覆うように、傷が治るように願いながら力を集めてみてくれないか」


 裂けた箇所がヒリヒリする。これはしばらくするとミミズ腫れになるタイプの切り傷だな……。

 法力を使えばすぐにでもこんな傷が治せるというのならば、実にありがたい。

 とか思っていたら、淡い緑色の光が傷口を覆いはじめ……裂けた傷口が徐々に塞がっていく。


「……法力凄ぇ!」

「ホントに発現しましたね。手元の玉も緑色に光ってます」

「出立して早々に面白いものが見られた。リューイチに同行して良かったよ」

「では続けて魔力の発現にも挑戦してみますか?」


 もちろんだ。さっきの法力みたいな回復魔術も良いけど、やっぱ攻撃魔術こそロマンだよな。


「わかりました。でしたら、まずこのじゅも――」

「放った魔力を『現象』に変化させるようなイメージをしてみるんだ。例えば、火とか水とか」


 なるほど。魔力を放出し、それにイメージを加える事で魔術にする……と。アイリさんが何か言いかけた気がするが気にしないでおこう。

 俺の場合はまず原初のチカラとやらを魔力という形に変えて放出しなければならないのではと思ったが、使う意図によって自動的に形を変えてくれるらしい。

 そういや闘気を使った際も法力を使った際も、使う意図こそ意識したが力の質を意識した訳ではなかったな。原初のチカラ……なんて便利なんだ。

 なんて思いつつ、指先から火を放つようなイメージをしてみると、火炎放射器みたいに勢い良く火があふれ出た。


「ひゃあ! 詠唱も無しにいきなり……しかも、こんな豪快に」

「普通は小さな火の玉とかがちょろっと出るくらいなんだけど、一体どんなイメージをしたんだい」


 あぁそうか、これが俗に言う『文明が発展した世界』と『そうでない世界』における現象の認識差ってやつか。

 火を放つ際に科学的な意味で燃える原理を知っていると、より高威力の火が出せるとかいう……。

 俺の場合は科学知識云々ではなく、怪獣が火を噴く――みたいな単純にブワーッと出るようなイメージだっただけなんだが。

 どうやらル・マリオンでは、火はまず球状のものがイメージされるらしい。イメージの元は、灯りなどの用途かな?




「では、リューイチさんが力を発現させた所で、次はリチェルカーレさんですね」

「アタシも何かやるのかい?」

「端的に言えば実力試しをさせて頂きます。力量の結果如何によってはいきなりある程度高いランクから始める事も可能ですよ」


 難度の高い依頼は、当然の事ながら相応の実力者による対処が求められる。しかし、舞い込む依頼の数に反して、それをこなせるような優秀な冒険者の数はそう多くない。

 だからこそ、こういう段階で高ランクの実力者を発見したら、早々にランクを上げて難度の高い依頼を受け持ってもらうのだという。

 かつては『皆等しく平等』を謳い、どんな冒険者も優遇などはしていなかったが、近年はもはや四の五の言っていられない状況なんだとか。

 まぁ、確かにドラゴンをも倒せるような実力者にゴブリン狩りとかさせてるのは勿体ないしな……。


「先程ギルドカードをお見せしましたが、私はこう見えてBランクの冒険者ですので、遠慮は要りませんよ」

「なるほど。そういう事なら頑張らせてもらおうか。引きこもりがちだったし、戦闘なんて久々の事だよ」


 とか言いつつ、何故か格闘技でもやる前みたいに指をゴキリゴキリと鳴らすリチェルカーレ。

 とてもじゃないが魔導師のリアクションとは思えない。まさか本気で物理的に殴ろうとしてるんじゃないだろうな……。

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