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異世界の流離人~俺が死んでも世界がそれを許さない~  作者: えいりずみあ
第四章:魔の手に堕ちしダーテ王国
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111:始まるぜ俺の一人舞台

 部屋を出ると同時、警備の兵士と思われる者達が俺を取り囲んでいた。ですよねー……。

 不幸中の幸いなのは、すぐ突撃してくるような事はせず、少し離れた所からこちらの様子を窺っている事だ。

 故に俺は既に召喚してあった銃を持つ両手を広げ、まずは左右に一発ずつ。それが開戦の合図となった。


 ◆


 竜一の放った銃弾により、瞬時に二人が倒された事から兵士達は一斉に動き出す事となった。

 普通の人間達ならば恐れから引くのだろうが、さすが戦う事を生業とする者達。危険を察した相手を抑えるべく一斉に向かってくる。

 しかし、こんな屋内の廊下で武器を持った人間が押し寄せるのは悪手でしかない。竜一はとりあえず一番前に居る者達を撃つ。

 それでバランスを崩した者に後続が引っかかり場が混乱する。大公の屋敷を警備している者とは思えない練度の低さに、竜一も思わず呆れ顔。


「だが、突破させてもらう……」


 片側に銃撃を集中し次々と人の壁を崩していく。反対側から迫る者達に対しては、足元に地雷を仕掛けて踏ませ、爆破して足止め。

 一気に敵を倒すと同時に通路を崩壊させて後ろからの追撃を防ぐ。しかし、動き始めてから竜一はある事に気が付いた。


(そういや何処へ行けばいいんだ?)


 当然の事ながら、竜一がここへ来たのは初めての事。内部構造を把握している訳でもないし、この宮殿そのものに用事があった訳ではない。

 とりあえず外に出た方が良いと考えた彼は出口を目指すべく廊下を曲がったのだが、奥からローブ姿の者達が姿を現した。

 どうやら近距離で戦うのが危ないと伝わったのか、魔術による遠距離迎撃に切り替えた様子。しかし、銃は本来遠距離攻撃を主とする武器。竜一にとっては好都合でしかなかった。

 手元に新たな銃を二丁召喚し、敵の足元へ向けて滑らせる。それに気を取られてしまった敵は、再び召喚した銃で撃ち抜かれてそのまま崩れ落ちた。


(銃弾でも魔術でも同じだ。地球謹製の創作武術を見せてやる。映画の真似だがな……)


 通路の左右に陣取る敵を、左右に広げた両手に握られた銃で撃つ。放たれた炎の魔術を体をひねって回避しつつ、今魔術を放った敵ではなく次に魔術を放とうとする敵を先に撃つ。

 撃たれてしまったものは仕方がないが、理想としてはやはり撃たれる前に撃つ事。相手からの攻撃回数を極力減らす事もまた、生き残るためのコツなのだ。


(もはや死ぬ事すら作戦に組み込んでいる時点で、今更生き残るコツも何も無いんだけどな)


 身体をひねった状態から強引に敵を撃ったためか、右手を左脇にくぐらせた姿勢のまま、左手を右側へ伸ばして魔術を撃ってきた敵も落とす。

 そして、両手を左右に広げつつその間にも銃の連射を続け、他に迫る敵を落としたり、当たりはしなくても威嚇の効果を期待して豪快に弾を消費する。


 だが、敵の戦力は豊富で何十人と撃ち落としても次々と現れる。竜一は正面からの魔術を転がるようにして回避しつつ、先程投擲しておいた武器を拾って戦闘を再開する。

 銃を手元に召喚すればすぐに新たな武器を調達できるのにもかかわらず、何故こんな回りくどい事をしているのかと言えば、それは単にロマンだからである。

 一昔前に見た映画のカッコイイ主人公と同じような立ち回りをしてみたい。その動きをなぞるようにしているため、時々非効率にも思えるような動作が混じっているのだ。


(本来なら弾倉を放る所なんだけどな……。俺の能力的には効率が悪いからアレンジだ)


 ◆


「うわあぁぁぁぁ! ヤバイ! なんかとんでもないのが攻めてきたぞ! 地下を、地下を解放しろッ!」

「地下ですか……。しかし、そこは禁忌の領域。解放してしまえば、我々もただでは……」

「どのみちこのままでは終わりなんだ! ならば、少しでも敵を排除できそうな可能性にかける!」


 しばらく進んでいったところで、相手方の会話が耳に入ってきた。地下、禁忌の領域……明らかに何かありそうな場所だ。

 敵を排除できそうな可能性とか言っていたから、凶悪なモンスターでも閉じ込めてあるんだろうか。

 どうせ開放するつもりならばこちらから乗り込んでいってみるか。もしかしたらこの国の暗部が分かるかもしれない。



 何やら無茶をやらかしそうな雰囲気が屋内に伝播したのか、俺を塞ぐ者は居なくなっていた。

 しばらく屋内を進んで大扉を開くと広いホールへと飛び出した。その隅に鉄格子で封印されている領域があり、目の前で魔術師らしき者が何やら術を唱えていた。

 これはあれだ、禁忌の領域とやらの封印を解く呪文だろう。とりあえず魔術師を撃っておくが、何となくわかっていた。こういう時は、間に合っていない。

 何せ、倒れる瞬間にこちらを向いた魔術師の顔が壮絶な笑みを浮かべていた。俺も死ぬがお前も死ね――的な意志を感じるぞ。


『グルアァァァァァァァッ!』


 鉄格子が吹っ飛ぶと同時、中から出てきた何か巨大なものが一瞬で俺の前まで迫り、視界が闇に閉ざされた。

 と思いきや、俺は空中に浮かんでホールを上から見下ろしていた。あー、俺は今の一瞬で死んだのか。

 体長にして五メートルはあろうかという四足歩行の獣が、俺の上半身をモグモグしている。さっき飛び出してきたのはアレか。

 まるでミサイルのようだったな……。おそらく、これが地下を解放した事によって解き放たれた存在と言う訳だな。


 身体を再構築する前に、アレを倒す方法を考えようと思ったその時――俺を喰っていた獣が突然まばゆい光に包まれて爆発を起こした。

 なんだ? グルメ漫画みたいな壮大なリアクションか……? いや、本当に砕け散って死んでいるな。おかしい、俺は爆発物など持っていなかったはずだが。

 建物全体を揺らす程の轟音に刺激されたのか、先程の場所から同じ姿をした獣達がホールの中へと駆けこんできた。


『(にしても、なんだあの獣は……。改めてその姿を見ると、まるで犬や猫みたいな体型をしたワニだ。虎か何か大型の肉食獣がそのままワニに変貌したような……)』


 全身の鱗をギラギラと光らせ、大口からは涎が零れ落ちている。そのうちの一匹は、先程鉄格子を開いた魔術師を捕えて貪り食っている。

 俺にかぶりついてきた事からも察していたが、やはり人間を喰うのか。魔術師を喰えなかった他の獣達は、エサを求めて他の扉を突き破って飛び出した。

 当然、その先で阿鼻叫喚の地獄絵図が展開されたのは言うまでもないだろう……。本当に『我々もただでは済まなかった』状態になってしまったな。




 俺はこの状態のまま獣達が出てきた方向へと進んでいく。鉄格子の奥は宮殿内とは違って無骨な石壁によって形成されていた。

 所々に松明が灯ってはいるが薄暗く不気味だ。ここがダンジョンだと言われれば信じてしまうかもしれない……。

 通路の奥からはまた先程と同じ姿の獣が歩いてくる。口元が血に濡れており、足元も血で染まっていて、進む度に赤い足跡が残されていく。


『(もしかしてモンスターの巣か何かと繋げてあるのか……?)』


 さらに進むと破壊された壁の跡を発見する。俺はつい生身の時の癖で、壁をすり抜けず壁が壊れて出来た穴をわざわざくぐって中に入る。

 中には原形を留めていない血と肉の残骸が散乱している。おそらくは――食べ残しだろう。それすらも余さず食そうと言うのか、まだ数匹の獣がうろついている。

 奥に目を向けると、ひしゃげた鉄格子の小部屋がいくつも見受けられる。内側から破られたような形で壊れている事から、獣はこの中に居たのだろう。

 となると、これらは確実に野生の生物では無いな。ここで飼育されていた? いや、それならば鉄格子は内側から破れないようもっと強固にしておくはずだ。


 あるいは、元々鉄格子の強度は充分であったが、何かのイレギュラーによってパワーを増した結果、脱走を許してしまったか……だ。

 最初から鉄格子が破られる恐れがあったのならば、そもそも危険を考慮して誰も近寄らないハズだ。危険は無いと判断されたから人が居たに違いない。


『(待て、ならば何故入り口が魔術で封印されていた? 中の人はここで生活していた? 他に出入り口があるのか?)』


 まるで推理物の主人公の如く様々な思考を巡らせる俺。他の場所も色々と探索してみよう……。

 まだまだ奥へ続いていた廊下へ戻って先へ進もうとした所で、うめき声のようなものが聞こえてくる。そして、何かを引きずるような音。

 考え間もなく音の主を見てしまった俺は、唐突に答えを得る。と言うのも、それはエリーティでも見た覚えがある存在だったからだ。


『(巨大な芋虫……ちっ、そういう事か。リチェルカーレがダーテの方が進んでいるとは言っていたが……)』

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