年越し的なやつ〜
あのキャラたち再登場
年越しっていうと色々イベントがあったりなかったり、わりと刹那的な行事。その中に、初詣というのがある。神道な日本では誰もが参加しちゃうアレだ。
そんなわけで現在、初詣が盛んな時間帯。つまるところ、年越し済みだ。あけおめ。
神社では、たくさんの人がズラリと行列を作り、投げ銭をしてがらがらと鈴を鳴らし、二礼二拍手一礼とキメたところでお願い事を思い浮かべ、甘酒を飲んだり飲まなかったりして帰っていく。
特にその流れに乗るわけでもなく、私と礼奈はゆったりお家で布団にくるまっていた。補足するが、こたつ布団ではない。
「はぁ、寒〜い」
とろけた顔で、ぽつりと礼奈が呟いた。表情同様、その声には力が抜けている。
しかし、私の体感温度はそんなでもない。布団の中なので、むしろあたたかいと言っても過言ではない。
「えー、私そんなでもないけど。大丈夫?」
ぬくい布団から手を出し、無防備な礼奈の頬に当ててやる。さわった感覚は……ぬるい。適当に撫で回しつつ、人差し指でフェイスラインをなぞり、顎をクイクイいじる。
「あっ、あけましておめでちゅーしてないね。する?しよっか!」
なんだそれ。まあ短絡的のかたまりみたいな造語だけど。
「うーん。まあせっかくだし、しとく」
寒さにやられていたとは思えないくらい、ガラリと笑顔に変わった礼奈。ずいぶんあったかそうでなによりだ。
「普通にする?ディープにする?それともぉ……ひ・め・は・じ・め?」
「あー、うん。ディープ」
礼奈と私の満足一致点はたぶんその辺りだ。行き過ぎずイかな過ぎず。なにごとも中庸が大事だよね。
言い終えた瞬間、礼奈の顔がぐんと近づいてくる。試しにおでこを突き出してみると、良い頭突きがおでこに決まった。
「んぎっ!うあ、あっ、痛え!痛えよお!」
どんな勢いでキスしようと思ったのか。唇痛めるわ。
まあそんなわけで。
「瑠美……気だるげな顔もかわいい……」
「待って礼奈、私、んっ、んん……」
触れ合い、絡み合う口腔から、既に慣れ親しんだはずの感覚がざわりと押し寄せる。はしたない音をかき鳴らしながら、なされるがままに乱されて、私の望みとは裏腹に求める気持ちが少しずつ高まっていく。
「んくぅ……ていっ!」
「痛え!」
どうにか舌の魔を離れて、頭突きをくらわした。私も痛い。
「はぁ……礼奈、頑張りすぎ」
「初めては盛り上げないとねぇ」
ねっとりと告げながら舌なめずり。彼女は今、獲物を狙う女豹だ。
「はあ。初めてねえ。……そういえば、初詣いつ行く?」
なんと自然な話題転換。我ながら賞賛を送りたいレベル。
「えっ、えーっと……ああ、もう初詣の頃合いかぁ。混むだろうし、ちょっとめんどいなぁ」
「別に三が日過ぎてからでもいいけど。義務ってわけじゃないしね」
「でもさあ、あんまし行く必要なくない?だってあたし達、毎年願い事一緒でしょ」
たしかに、毎年私が願うことなど同じようなものだけれど。
「まあそうだけど。でもさ、毎年願うことでご利益が」
「あたし達のお願い事にご利益もなにも必要ないじゃん!わかる、わかるよ〜瑠美のお願い。そのつぶらな瞳を見てるだけで伝わってくる。身体を舐めたらたぶんもっと分かる」
「や、舐めなくていいから言い当ててみてよ。正解だったら……」
「正解したらご褒美!お年玉!」
目が子供のようにキラッキラだ。さっきまで欲望をぶつけてきた女豹とは思えない豹変ぶり。人って変われるのね。
「そうだなぁ。正解したら、ひ・め・は・じ・め?」
「あたしと一生一緒に幸せラブラブに生きていくことーッ!」
「ぶっぶー。不正解!」
聞くや否や、固まったまま動かなくなった。ちょっとご褒美が豪華すぎたかもしれない。反省反省。
「正解は、私たちを取り巻く世界がずっと平和であること、だよ」
きょとんとした礼奈がねめつけてくる。イヤー怖い。そんな目で見んといてや。
「だってさ、私と礼奈が一緒なのは当たり前じゃん?それこそお願いいらないよ」
「はっ、はー!なるほど!こいつぁ一本取られた!そうと決まったら、早速初詣行こう!」
どたばたどたばた。
そんなこんなで初詣にレッツゴー。私たちがドアを開けて、外に出るとーー
「ねえねえ、美緒はどんなことお願いしたんスか?」
ちょうど初詣に行ってきたらしい、由香ちゃんの声が聞こえてきた。美緒ちゃんも一緒らしい。私たちはもちろん、耳をダンボにしてその会話へ集中。
「……由香と、一緒に」
「あ、あー……あははっ!まったくもう、美緒はクールなビジュアルして、ピュアっスねぇ」
「そう、かな?じゃあ由香はわたしと……」
その後、微妙に間が空いた。なんだか不自然な間の後ーーざざっと引きずるような足音。
「ねえ礼奈、もしかして……」
「うん。もしかして、ちゅーしてた?」
まあ憶測に過ぎないので置いておこう。
「美緒と、もーっと楽しく過ごせますように。それが私の願いっスよ。一緒なのは、当たり前田のクラッカー!」
「……ごめん」
「やーん謝らないで!その代わり今夜は……」
それきり会話はなく、二人は部屋に消えていった。
「どうやら、由香ちゃんのが一枚上手みたいだねぇ」
「ふふーん、美緒ちゃんにはあたしからみっちり教育しとかないと!」
礼奈に出来るのかなぁと不安に思うけど、口には出さず、やっと歩き出した。
「ま、なにはともあれ。今年もよろしくね」
「よろしくゥ!」




