王と、そして
少し長め&大変な難産でした…。
扉が開き、入室した公爵達を王は悠然と迎える。
怒りには気付いていない訳が無い。
そしてどういうことか、王太子や王太子妃候補までも、そこにいる。それだけでルナリア、アリシアの怒りは一気に膨れ上がる。
怒りを隠さず、それを殺気に変える。
容赦なくマナをぎろりと睨んで殺気を向けると、必死に聖女の力を使い中和しようとはしているようだ。
無駄なことを、と鼻で笑いゆるりと王に対して視線を移した。
「四大公爵は、何をそんなに怒っておるのか」
「…凡そ、察しはついていらっしゃるでしょう?」
静かに、怒りを湛えた声でファリトゥスが一歩前に出る。
「はて、何のことやら」
王はとぼけたように笑う。否、嗤う。
王太子はどこか悠然と勝ち誇ったような表情でここに居る、ということは、王から何かしら入れ知恵をされたのであろう。
許してやるほど、ここに居る四人は甘くも優しくもない。
「ルナリアよ!わたしの話をまずは聞くといい!」
自信満々に口を開くデイルには目もくれず、意識すら向けず、ルナリアは真っ直ぐ王だけに向き合っている。
「お、おい!」
「…我が唯一の王」
静かに、硬く冷たい声音でルナリアは王を呼ぶ。
普段とは全く異なる様子に王も居住まいを正してから手を上げ、デイルを黙らせた。
「まずは、新しき公爵の誕生をお祝いくださいませ。それから後、…我が亡き母との契約をきちんと、果たしていただきたく存じます」
亡き母との契約。
あの場で王が、王妃が悔しがっていた、ルナリアの母がまるで予言でもしていたような、あの言葉。王太子自らやらかしてしまった事。
王の手が、玉座の肘掛をきつく掴むのが見えたが、そんなものはどうでもいい。さぞかし悔しいだろうと、ルナリアは密やかに微笑んだ。
そして幼馴染の、大切な新しき公爵の背をそぉっと押した。
「ミトス卿」
頷いて、ミトスは一歩前に出て臣下の礼を執った、が。
「我が王に申し上げます。此度、我が父より証である薔薇を継承致しました。我がアストリア家、誠心誠意を以て我が王にお仕えすることをこの場に、この剣にて誓いましょう。ですが」
「…?」
「当家が仕えるのは我が王のみと、お知りおきください」
がたん!と王が勢いよく立つ。
ミトスははっきりと宣言をした。
現在の王太子を支持しないということ。つまり、王太子が一つ、後ろ盾を失ったこととなる。
「貴様!」
「おや我が王、ご不満がおありかな?」
次いで、ファリトゥスがいつの間にやら浮かべていたにこやかないつもの表情で前に出た。
「施政者としては、わたしも我が王を尊敬し、敬い、そして全力を以てお仕えしましょう。ですが、クルトスの総意もアストリアと同じとお知りおきください」
「ミッツェガルドも、同じですわ。我が愛しき王」
にこやかに、二人も告げる。
どんどんと後ろ盾を失う王太子。
「ソルフェージュも同じとお思いくださいませ」
さぁ、と顔色が真っ青になる王太子が何かを言おうと口をパクパクとさせている。
見たところ、こんな事になり得るだなんて思いもしなかったのだろう。
あの自信満々なところからすれば、もしかしたら王がルナリアとの再婚約をどうにかして取り付けようとして様々な入れ知恵をし、紡ぐ言葉まで用意していたのかもしれない。
「我ら四家、当代王への忠誠は誓いましたが、王太子殿下への忠誠などございません」
冷たく言い放つルナリアを、王は呆然と見た。
「我が王、貴方は王太子殿下への再教育を行うことで民へと色々なことを示したかったのかもしれませんが…逆効果ですわ。『軽率な行動を取る殿下を未だ王太子とするのか』『王族としての責任をどう考えているのか、公爵家はあれを王として支援するのか』と…ありとあらゆる方面より苦情を頂いております」
「親としてを優先されるのであれば、こちらも取るべき態度を変えねばなりませんでしょう」
「まさか、婚約者でもないお姉様に対して王太子殿下がお手紙を送るなど有り得ない事。…王はお止めになりましたわよね?送ったのは王太子殿下の勝手な行動により、ですわよね?」
「ソルフェージュとのあまりにも身勝手な、一方的な冤罪の数々を押しつけた杜撰な婚約破棄劇場の一件、それだけで王太子殿下が王太子でなくなる理由なのではありませんか?」
一気に畳み掛けるように告げ、四対の目が、冷たくデイルを見据える。
王太子として育てられたとはいえ、ぬくぬくと温室育ちをしてきた彼と、領地をおさめ民の幸せを常に最前線で感じている彼らとでは、経験値が違う。
己の再教育も当たり前だと感じていたのは事実だ。
だって、王妃の、第一子なのだから。
「他にも王子はおられますからねぇ…」
考えを読んだようにファリトゥスは呟き、笑みを深めた。
「我が唯一の愛しき王妃の子を、王にしたいと思う親心が分からんのか貴様ら!」
「分かりません」
アリシアはきっぱりと跳ね除けた。
「我ら貴族には有能な血を残せ、成果を残せとあれほどまでに仰いますのに、王は我が子であるからという理由で王にしようとするなど…。わたくし心底見損ないました」
アリシアは公的な場でも『あたくし』と言っていたにも関わらず、『わたくし』と言い直した。
「我ら四家、この国、そして民の幸せを願い、更なる繁栄のために全てを尽くすことを誓っておりましたが…それも今代限りとお思い下さい」
ファリトゥスが冷静に、冷たく続ける。
「王が率先して示さねばならぬ道理、義理を手放してしまわれたのであれば、我らはもはや次代からは仕える価値無しと判断せざるを得ません」
四家の力が無くなれば、この国から出てしまえば、国は簡単に滅びる。
魔導のソルフェージュ。
騎士のアストリア。
外交のミッツェガルド。
行政のクルトス。
うっかり『亡命先を探しています』など言おうものなら周辺国がありとあらゆる手段と、最高の待遇をもって迎えることなど目に見えている。
だから、手放してはならなかった。
適齢期の息子が丁度いたから、婚約もひたすら願い、請い、結ばせた。
『善き王』であろうと必死に努力したし、四家に仕えてもらえるだけの力を、指導力を示さねばならなかった。
だがたった一度、それだけ。
「息子を取ったことが…それ程までに罪深きことと申すか…!」
「貴方様は、唯一の国王陛下であらせられます。別に王太子殿下を大切になさるのであれば、それでもよろしかったのです。ただ、他にも王子が居るのに…わざわざデイル殿下でなくともよろしいではありませんか。どうして王太子殿下を、頑なに『王太子』にしておられまして?」
国王陛下には三人の側妃がいる。
だが、国王は己の王妃を、これ程ないまでにただひたすらに愛している。
王族としての義務で仕方なく、嫌々ながら側妃を娶り、褥を共にした結果、数人の王子と、姫が生まれた。
無論、彼らには性別問わず王族としての教育はされているし、王子に対しては王の後継者となるべく必要な帝王学も存分に叩き込まれている。ただ、王太子教育をされていないだけ。下準備はしっかりと出来ている。
なお、側妃の子であるからといって能力は低くない。むしろ素質は勿論充分過ぎるほどあるのだから。
だが、国王は何より王妃を愛していた。心の底から、一人の女性として、国母として、他の誰にも代えられない唯一の存在として。
「そ、れは」
「王太子殿下の交替、それだけでようございました」
静かにルナリアが告げ、殺気をようやく仕舞う。
ぜぇはぁと肩で息をし続けるマナを、デイルが支える。殺気を聖なる力で中和出来るわけがないのに、ご苦労さまでした、と心の中で嗤い、続ける。
「わたくしなりの温情でしたのよ、あの場で王太子のすげ替えを提案しなかったことは」
そう、あの場ではルナリアはデイルとマナが結ばれることしか言及していなかった。
それに漸く気付いた王は、歯を食いしばった。
「我が王妃の采配も間違っておったと申すか…!」
睨んでも、殺気を込めた気配を向けても、公爵たちは動じない。
確固たる意志の下、そこに在り続けている。
母としては正解なのかもしれないが、国を想う国母としては間違いであったと。あの断罪劇を知っている人間からすれば、そう思う。
「王が側妃様方を精神的に蔑ろにしている事など、この国の貴族ならば誰でも知っている事実にございます。だからこそ、貴方はデイル殿下をより完璧な王太子とせねばならぬ事、ご理解なさっておられませんでしたか?」
ファリトゥスの言葉に、はっとなる。
「王たるもの、間違いなどあってはならぬのです」
奥歯を噛み締める。
ぎり、と口内に音が響く。
「王族からの申し出となれば、我らは否など言えるわけもございません。それをご存知の上であの婚約破棄劇場をなされた王太子殿下の責、どのように受け止められましたか」
「それ、は」
「父上は悪くないではないか!子を想う気持ちを、そなたらが否定するか!」
「否定も何も、王家が望んだ婚約を貴方様が一方的に破棄を突きつけた上、王妃となれぬ身分の女を傍に置き続け、挙げ句わたくしに対してあまりに杜撰な冤罪ばかりをかけてきた貴方をどのようにして庇うと?己の『身分』を使うしか無かったと、思い至りませんでしたか?」
冷たく言い放たれた言葉に、改めてデイルは黙る。
「マナ様も。公爵家令嬢のわたくしから婚約者を奪い取った、なんともはしたない令嬢として今や社交界で大人気でいらっしゃる事はご存知ですわよねぇ?」
「そ、…っ、」
「そんな方が、民に愛される王妃となる事が本当に可能だとお思いでして?」
刺し貫いてくる事実の刃に、二人はあの日よりも呆気なく意気消沈した。
当事者であるルナリアの言葉だから余計に鋭く突き刺さったのかもしれない。
「我が母はこうなる事を見越していたかのように王家と取り決めていた内容がございましたわね」
王に向き直り、にこやかにルナリアは続ける。
「わたくしの望みは、『現王のみに仕え、何があろうと王家には嫁がず、ソルフェージュ公爵家を存続させるために養子を取る事を容認していただく』。それと、『王太子殿下と聖女様の婚姻』ですわ」
「ふ、ふざけるな!」
「では、約束を違えた王家など見限りわたくしはこの国を出ましょう」
「な、」
「望みを叶えていただけぬ場合、わたくしはこの国を見捨てます。我が公爵領は、この国でなくともよろしい」
「待て!あの場でのそなたの願いは叶えたはずだ!デイルとそこな娘の結婚を望んだではないか!だからデイルの王太子としての教育を!!」
「まぁ……わたくしの母が、『願いは一つのみ』と申しましたの?書類にそう、記しておりましたの?違いますわよねぇ?」
「………………?!」
『悪役令嬢ルナリア』は、この国の筆頭公爵家唯一の跡取り。兄はそもそも、義妹共に陥落されてしまったので、駄目だと、跡取りではないと判断した。
ゲームでは、処刑された彼女の家のその後は語られなかった。
だが、筆頭公爵家の令嬢が亡くなればどうなるのか。それを考え、考え抜いて、ルナリアと『成った』彼女が出した一つの答え。
ソルフェージュ公爵家の存続。
王太子に愛されようとし、王家に嫁ごうとし、全てを完璧にした努力と才能の塊。ルナリア・イル・フォン・ソルフェージュ。
血のにじむ様な勉強や努力の証を、彼女の存在を、消してなどやらない。
公爵家を残し、存続させ、そして公爵領をこれまで以上に豊かに発展させる。
これからのルナリアはそうやって生きていく。
残り三家と協力して、支え合いながら、笑って、生きるのだ。
ソルフェージュ公爵領は、領民ごと全て、守りきって幸せにするのだと心に決めた。
決意を湛えた目で、真っ直ぐ王を見据える。
一歩先に居たルナリアに並ぶように三人も並んだ。
「我らも同じとお思い下さい」
「ソルフェージュ公爵家の願いが叶わぬなら、最早ここに用は無い」
「覚悟を持ち、我らはここに居りますの。さぁ、どうなさいますか?」
三人がかわるがわる紡ぐ言葉。
込められた怒りの大きさ。
「お好きになさればよろしいのです。『わたくし』を蔑ろにした報いを改めて受けていただきますわよ、王太子殿下」
ゆるりと言葉を続ける。
「わたくしは、マナ様曰く…悪役令嬢ですから。大勢の場で散々罵られました、何度も何度も『悪役令嬢』と。そんなわたくしはもう、王家の望み通りに動いてなどやりませんわ。王が人として子を愛すなら、わたくしもソルフェージュ女公爵としてではなく、一人の人間として感情のまま動く、ただそれだけ。己がそうするのですから、我らもそうして構わないこととお思い下さいませ」
悪役令嬢は微笑む。
優雅に、華麗に、冷ややかに。
何度でも言おう。
ここはゲームではなく、現実世界。
とんでもなく実力主義の、結果を残したものが勝ち残る世界。
「我が公爵家を舐めるから、全てが王家の思い通りになるなどと思い上がるから、結果として…こうなってしまいましたのよ、ねぇ……王太子殿下?」
にっこりと、悪役令嬢は嗤う。
「王太子殿下と王太子妃候補様はいつでも好きな時にご結婚されると良い。あぁ、第二王子が適齢期に育った頃合を見計らい、王太子の座を第二王子へとお譲りなさいませ」
「そうすれば、王太子教育のやり直しの名目も…まぁ、ギリギリ立つでしょう。第二王子を王太子にするまでの繋ぎとして……そうですねぇ……、やはり向いていなかった、とでも、第二王子の方が王としての才能が高かったとでも、何でも言えば宜しい」
「聖女様の王太子妃教育も無駄にはなりませんわ。だって、あれは最高峰の淑女教育なんですもの。身に付けて損はありませんし……あぁそうだ、第二王子の婚約者のご令嬢と一緒に教育を受けられてはいかが?…まぁ…第二王子の婚約者様は侯爵家令嬢ですから…聖女様が教えていただく立場になってしまうやもしれませんが…」
悪役令嬢と残り三家、ゲームでも関係性は非常に良好。
この世界でも、大変に仲が良いのはこの瞬間を以て改めて証明された。
そして、第二王子はまだ若いが、王太子としての教育はまだ間に合う。下準備はされているのだから、デイルの教育のやり直しの場に同席させて、これから育ててしまえば良い。
第三王子は、アリシアの婚約者で、アリシアよりも年下。尚且つ婿としてミッツェガルド家に行くのだから王太子教育は不要のもの。婚約者の変更など、ミッツェガルドが認めたりしない。何せ第三王子とアリシアの仲は大変良好なのだから。
『さぁ、早くこの無理を押し通せ』と公爵達は迫る。無茶苦茶だと分かってはいるけれど、デイルを王太子から外すならば無茶を通すしかない。そうしなければ四家はあっという間にこの国を見捨てる。国が、廃る。
だが、そんな事より何よりも、王が嫌がるのは。
「側妃の子を、王にする、だと…」
愛した王妃の子以外を王にするなど、反吐が出そうになるような感覚だった。
想像しただけで、である。
「ご自身の行動の結果でしょうに」
しれっと言い放ち、封を切ってすらいない手紙を懐から取り出してフワリと浮かせ、ルナリアはそれを王の足元に放り投げた。
「どのような意図で手紙を送ってきたかは存じ上げませんが、お返しします。わたくしがデイル殿下を助けるなど、そんな事ある訳ございません。奇跡でも起こらない限り」
残念でしたわね、と小さく呟いて王を見据える。
「王太子殿下がこの様な事をしなければ、わたくしもここまで非道になりませんでした…」
はぁ、とわざとらしくため息を吐いてルナリアは言葉を続けた。
「王妃殿下を敬愛しているからこそ、わたくしは義娘となるべく努力を続けておりましたわ…」
しおらしく言うと、王は言葉に詰まる。予想通りの反応だ。
「でも、叶わなかった。わたくしはデイル殿下の手を取ろうと必死でしたのに、突き放したのは殿下です」
はっきり告げれば、王の間は静まり返る。更にルナリアは儚げな様子で微笑んでみせた。
「わたくしの努力は水の泡になった、と…一度目の絶望を味わいました。それに加えて当家の恥だらけのお家騒動、二度目の絶望…。…もう、疲れ切っておりました故に、わたくしは自死を選ぼうとしましたがこうして生きております。きっと母に生かされたのだと、わたくしの『生』には何かの意味があるのだと、そう思いました。優しいルナリアは、…死にました」
言葉を続けるルナリアに、そっとアリシアが寄り添う。
ルナリアは幼い彼女へと柔らかな笑みを返し、優しくアリシアの頭を撫でた。
「そして、女公爵としてわたくしは立ちました。遅かれ早かれ、殿下は婚約を破棄するだろうと、そう思いましたからこそ、腹を括りましたのに…」
「ソルフェージュよ……愚息が…すまぬ……。改めて謝罪をさせてくれ…」
「ち、ち、うえ…」
王が、公爵家に対して頭を下げた。
どよめきが騎士の間に広がり、目を逸らす者もいたが、ミトスがぐるりと見渡し睨む。
己が仕える主君の姿を目に焼き付けろ、と。
目を離すな。
逃げるな。
この場にいる以上は、そうしてはならないと、視線だけで彼らを律した。
騎士達は歯を食いしばり、背筋を伸ばす。
「そなたらの…申す通りだ。『親』であると同時に…我は『王』なのだ」
ギリギリと、血が滲むほどにキツく拳を握る。
「公爵らに言われ、腹を括った。デイルの再教育はそのままに、明日より第二王子を…いや、第二王子にも王太子教育を受けさせよう。足りぬところは無論、補う。認めよう…我が息子は…第一王子は、『王の器』ではないと…」
絞り出すような声で、王としての責務を果たしてくれた目の前の存在に、四家当主は膝を折り、臣下としての礼をする。
体の向きも、視線も、ただ、己の『王』へと向けて。
彼らには王太子なぞ、目に入れる理由が無い。
あまりに幼稚な思考回路の持ち主を、次代の王として認める訳にはいかない。
人だから、間違いもする。
だがそれを正すのか、間違いのまま突き進み取り返しのつかない最悪を引き起こしてしまうのか。
王たるもの、私的な感情を以てして後継者を決めてはならぬと、改めて四家はこうして公の場で突き付けた。
国の頂点に近い位置で仕える彼らは、同時に『彼らに仕える貴族の声を聞く必要』があるのだから。
彼らの判断に対して血が通わぬ、と揶揄する者も少なからずいる。
だが、大貴族として生まれた以上、甘えなど許されない。そして彼らには果たさねばならない『責務』が、『責任』がある。
「王がお決めになったのであれば、貴族には我らが通達いたしましょう。王が我らの傀儡と罵られる事など無いよう、そして、民の幸福をこれ以上のものへと。我が国の更なる発展のため、四家は喜びお力になりましょう」
下位貴族、並びに上級貴族から噴出している王と王妃に対する不満…といっても、それは全て第一王子がやらかしてしまった内容に対して、なのだが。
学園に通う全ての学生は見てしまっているのだ。
第一王子が、彼の取り巻きが行った行動の全てを。
聖女という少女に溺れ、己の婚約者を蔑ろにし、公衆の面前で罵り、トドメは栄えある卒業パーティーでのあの件。
加えて王が一度だけ垣間見せてしまった、親としての感情。
民の間に広まる速度は、王家が思うより速い。
人の口に戸は立てられない。
より大きい関心事項を以て、話題の上書きを行うことで、不安や不満を払拭させる。
四家当主は立ち上がり、改めて王へと頭を下げた。
彼らが退出した後、王は深い深いため息を吐いた。
「デイルよ…そなた、何が不満であった」
静かに、座り込んでいた我が子へと問いかける。
「見たであろう。あれが、我が国の筆頭公爵家当主と、名を連ねる公爵家当主らだ」
デイルは茫然自失で、何も言えない。
「甘やかしてしまった、我の責任だ。不甲斐ない父を許せ。だが…お前の行動全てに関しては、お前の責任だ。お前はこの瞬間より、最早王太子として扱われぬと心せよ」
「……………はい」
夢を、見てしまった。
優しいルナリアが、『王が望むのなら』と、折れて、再婚約してくれるという、どこまでも都合のいい、甘い夢を。
父の言葉になら従うだろうと、タカを括っていた。
「今更反省しても…取り返しがつかぬ事、ですね…」
「そうだ、彼奴らは、そなたを支持せぬ」
「彼らの後ろ盾無くては…っ…」
「公爵家らは、あの瞬間よりそなたではなく、第二王子を推すのであろうな」
「わたしの、驕りの………結果の、積み重ね、です」
今更反省をしても遅すぎる。
優しいルナリアは、彼女の言う通り『死んだ』のだ。
王は、玉座から立ち上がる。
「さぁ、…新たな公爵の発表の準備と…これからについての会議を執り行う。改めて臣下を集めよ!」
そこに立っているのは『王』であり、既に親の顔は無かった。
王家へのざまぁと取れるような内容となりましたが、単に彼らはこの責任問題どうしてくれるんじゃボケ!とキレただけ、という認識です(作者的に)
親の力を借りまくろうとしていたデイルには、きちんと思い知ってもらう必要もあったので、こういった内容になってしまいました、悪しからず…。
四家当主は、今の王様はきちんと認めています。
だだちょっとその、親バカなところが出たら「コイツあかん」となるだけで。
残るはエピローグのみです。




